出来無いこと約束するほど
甲斐性無しじゃねぇよ。
「絶ッ対無理」
膝を抱えるようにして座った体を更にシーツで隠しながら、俺は目の前の傑を睨みつけた。
「痛いの嫌いだって知ってるだろ。無理」
「最初はちょっとだけな。でも少し我慢してくれたらその倍気持ちよくしてやるから」
「無理」
俺の髪を撫でながら傑が少し困ったように笑って囁くけど、今日ばっかりはその声に騙されるわけにはいかない。
自分の膝を抱える手に力を込めながら、俺は傑の手の中の細い銀の棒をちらりと一瞥した。全裸と半裸になってシーツの上にいるってのに色気の欠片も無いのは、服も脱いでいざ、って段階になって傑が取り出したその棒―――尿道バイブの所為だ。
前に医局でヤった時にカテーテルは突っ込まれたけど、あれは元々そこに突っ込むためのものだし医療器具だし何より俺は失神してた。でも今傑が持ってる尿道バイブはカテーテルより確実に1回りは太いし、しかも堅そうでどっちかっていうとピアスとか枷の質感に近い。
そんなモンをあんな所に突っ込むなんていっくら俺が淫乱でも論外だ。未知の快感に興味が無いわけじゃないけど、仕事でいいだけ鉛玉ブチ込まれてるのに更に金属を体に入れる意味が解らない。
「絶対気に入るのに」
「……」
「そんなに嫌?」
「嫌。っつーか趣味悪ィんだよお前」
「“次やる時はもっと気持ちよくしろ”っつったのは悦だろ?」
「言った、けど…だからって」
だからってそんな、冷たくて硬そうなの突っ込まれるのは嫌だ。どうせなら傑の舌で舐められたい。
「解った」
「じゃあ捨てろよそれ」
「それはダメ」
「…無理矢理突っ込む気かこの外道」
「まさか」
力で来られたらとてもじゃないけど歯が立たない。ぴくんと肩を震わせた俺に傑は軽く笑って、細いバイブをサイドスタンドに置いた。
「そんなガキっぽい真似趣味じゃねぇよ。悦から入れて、って言ってくれるまで気長に待つ」
「そんなの言うわけ…ッん、」
首筋に寄せられた唇にちゅくりとそこを啄ばまれて、足を抱える手が緩む。シーツの端から入り込んだ傑の手にされるがままに脚を開くと、膝の間に割り込んで俺をシーツに押し倒した傑が目の前でくすりと笑った。
「出来ない約束なら最初っからしてねぇよ」
カリから上だけを咥えた傑の舌が、ねっとりと敏感な粘膜を包むように絡みつく。
根元を指で扱きながら一度口を離して、先端から溢れる先走りを舐め取るみたいにそこに舌先を捻じ込まれると、慣れない柔らかい刺激に思わず腰が跳ねた。
「あぁあっ…はぁ、ぁッ…!」
「……」
疲れるって理由で滅多にしてくれないけど、元がアレだから傑は当然のようにフェラも上手い。俺が感じるポイントを的確に舌先で擽りながらじゅぷ、と音を立てて根元まで呑み込まれ、裏筋を尖らせた舌で抉りながら引き出されるのをゆっくり繰り返されて、イキそうになるのをシーツを掴んで耐えた。
「…頑張るな、今日は」
「う、るさっ…ふぁあッ?!」
簡単にイったら勿体ないような気がして、びくびく震える足でシーツを掻きながら耐える俺を上目遣いに見て笑った傑が、また尿道口に舌先を捻じ込む。抉るようなさっきまでの動きとは違って、先走りを中に押し戻すような柔らかい感触の他に、何か硬い物がそこに触れた気がした。
「な、に…ッひぁ、あっ…!」
違和感に思わず傑を見ると、舌を離した尿道口に蓋でもするみたいに押し当てた親指でそこをゆっくり擦りながら、傑がくすりと笑う。
「さぁ?何でしょう」
「やッぁあ…っゆ、指…はな、し…ッあぅううっ!」
シーツから背中を浮かせて傑の髪を引こうとするけど、先端を指で塞いだままカリを舌先で擽られちゃ碌に力なんて入らない。ねだるように傑の髪を乱すことしか出来ずに体を震わせる俺のサオを見せつけるように下から舐め上げながら、傑が唇の端を吊上げて意地悪く笑った。
「いいからヨがってろよ、いつもみたいに。滅多に無いぜ?俺が舐めてやるなんて」
「ふざ、けッ…!あっ、ふぁあッ…ゆ、ゆびっや…やめッ…ぁああッっ」
尖らせた舌先で裏筋をキツく抉られて溢れた先走りを、先端に先が埋まるほど押し当てられた傑の指先がぐちぐちと掻き乱す。強く苛んだ後は慰めるように優しくぬめる指にそこを上下に撫で擦られて、頭の中が白くなるような快感に俺は傑の髪をぎちりと握り締めた。
「ひぁっああぁッ…すぐっ…傑ッ…はぁあッ…い、イキた…っ!」
「いいのか?イって」
「っ…あぁああ!」
指の合間から溢れる先走りに横からちゅく、と唇を押し当てながら軽く目を細めて言う傑に一瞬反抗したくなったけど、散々弄り回されて敏感になった先端の粘膜に軽く歯を立てながらそこを強く吸われて、下半身を溶かす甘い痺れにすぐにどうでも良くなった。
「い、いいっからぁ…!舐め、て…おねがっ…!」
「…全部出せよ。飲んでやるから」
下半身に直接響く甘い声でそう囁いて、傑は散々弄られてじんじん疼く先端から指を離すのとほぼ同時に俺のモノを一気に根元まで咥え込む。
「あぁンんんッ!ひぁっ、…あ、あぁああッ!」
深いストロークと一緒に巧みに動く舌先に強くモノをしゃぶられて、背筋を焦がす愉悦に耐えきれずに俺は傑の頭を抱きしめるようにしながらその口の中に精液を吐き出した。
ごくり、と傑が喉を鳴らす音をぼんやりと聞きながら、俺は甘い余韻にぐったりとシーツに倒れ込んで、
「はぁ…っ、…ッあ、ぁあ!?」
…直後に襲って来た、そんな生温い快感なんて丸ごと吹き飛ばすような灼熱感に、シーツの上で弓なりにのけ反った。
「な、にッ…!あ、熱…っぁ、はぁあッ…!」
さっき傑に最後の一滴まで呑み干された筈のモノの、その内側が炙られるように熱い。狭い管の中に焼けた鉄の棒でも突っ込まれたようになったモノはイったばかりなのに萎える気配も無くて、散々傑の舌と指に苛められて真っ赤になった尿道口から、たらりと濁った先走りがシーツの上に溢れた。
「あッぁあ…はっはぁあッ…!ふ、ぅく…ぁあぅう…ッっ」
「ちゃんと効いたな、これ」
何が起こったか解らずに、半ばパニック状態で思わずモノに手を伸ばした俺を涼しい顔で見下ろしながら、傑はそう言って片手に持った小さな瓶を揺らして見せる。 掌にすっぽり収まるくらいのその小さな瓶の中には1ミリも無いくらいの小さな丸い粒が半分ほど入ってて、揺らされた瓶の中でざらざらと音を立てていた。
「悦、どこが熱い?」
「あッ…な、なか…ぁっ…あ、あつ…いぃ…ッ!」
「ここだけじゃなくて?」
「ひぁ゛ああぁッ!ゃ、嫌っ…あぁッあああっ!」
震える俺の手を簡単にモノから引き剥がしてここ、と言いながら傑の指が先走りを溢れさせる尿道口に触れた瞬間、腰から頭までを貫いた電気みたいな快感に、俺はシーツをぐしゃぐしゃに乱しながら身悶える。
「言えよ、悦。熱いのはここだけ?」
「ひぃいいいっ…!」
触られただけでも体が跳ねるそこを爪でくりくりと弄られて、意識が遠のきそうな中でがくがく痙攣しながら俺は首を横に振った。そこも熱いけどそこだけじゃない、もっと中の、奥の奥まで全部が熱くて堪らない。
「はぁッなか、中も…ッあぁあ…!なか、も…あつ、ぃい…ッ」
「あぁ、ちゃんと吸収されてンのか。ならイイけど」
「ひッひぁ…ッ!ゆ、びっ…とめ、っあぅうッああぁ、あッ!」
「調教用だけあるな。えげつねぇ効き目」
頭から爪先まで、指を動かされる度に引っ切り無しに走る苦しいくらいの快感に泣きながら、傑の手を引き剥がそうと伸ばした俺の腕を簡単にシーツの上に抑えつけて、傑はどこか呆れたように言いながら小さな赤い玉の入った瓶をシーツの上に放った。
熱いのは中もだって、ちゃんと答えたのに傑は指を離してくれるどころか更に強く指先を減り込ませてきて、普通なら痛い筈のそれが今の俺には神経を炙られるような快感にすり替わる。
「いぁッあ、ぁあっ!やめ、やッ…ひッあぁあっあーッ!」
鼓動に合せてずぐんずぐんと熱く疼くそこを、糸を引く指先にトンと軽く叩かれた瞬間、暴力的な快感に白と黒に明滅する視界の中で引き千切る勢いでシーツを握り締めながら、俺は二度目の精液で傑の手を汚した。
「はッ…はひっ…ぃい…ッ!」
「…イイこと教えてやろうか、悦」
涙と唾液で顔を汚しながら、イっても収まるどころか尚更酷くなったようにさえ感じる尿道の熱さに喘ぐ俺の耳元に唇を寄せて、傑が甘い声で囁く。
「あぁっ…はぁあぅう…ッ!」
「さっきの薬、精液に反応するんだよ」
「ッあ…あぁ…っ」
耳元で言いながらモノから離れて薄く浮いた腹筋の筋をゆっくりと辿る傑の指先に、モノを貫く熱さがまたじんと増した気がした。俺の両腕をシーツに抜いとめていた手はいつの間にか離されてて、ほとんど無意識の内に俺はたらたらと先走りを零すモノに手を伸ばす。
「だからイけばイっただけ効き目は強くなる。…解ってて止められるようなモンじゃねぇだろうけどな」
「ぁあっあ…熱…あつ、い…っふ、ぁくうう…ッ」
愉しげな傑の言葉の意味もほとんど解らずに、俺はうわ言みたいに「熱い」と繰り返しながら震える指を先端に擦りつけた。燃えるような熱さがほんの少し緩んで、いくら感じやすいって言ったって異常な快感がぞわりと全身を駆け巡るけど、それを導線にして増した指の届かない奥の熱に神経を焦がされる。
「すぐ、るっ…傑…ふぁ、あ…中、なかぁ…ッ」
先端の窪みを指先で弄ろうとしても、触れただけで背中を駆け上がる電流みたいな快感に邪魔されて、じんわりした甘い痺れに犯された体はほとんど力なんて入らない。溢れる先走りを塗り広げるようにして申し訳程度に震える指を動かしながら、俺は上手く焦点の合わない瞳で傑を見上げた。
「ひっん…ッ薬、熱…あつ、の…ッたすけ、て…っ」
「確かに辛そうだな」
俺を追いこんだのは自分の癖して、傑は涼しい顔で言いながら体液でぐしょぐしょに濡れた俺のモノをゆっくり握り込む。体温の低い傑の掌は火照った体にはそれだけでもイきそうになるくらい気持ちよくて、からからに乾いた喉から熱っぽい溜息が洩れた。
「氷水でも流し込んでやろうか?こんなに漏らしてたら無駄だろうけど」
「はぁああぁ…ッも、すぐ…る…ああぁっ…おねがい…ッ」
「って言ってもな…」
わざと大きくぬちゅぬちゅ水音を立てて俺のモノをゆっくり扱きながら、傑は癒されない熱さに荒い息を吐く俺を後目に首を竦めて見せる。す、と先端に寄せられた指先にさっきの焼けるような快感を思い出して腰が震えるが、傑はさっきみたいにそこを弄ってくれずに熱くて堪らない場所の周りをくるくる撫でるだけだ。
「こんなトコさすがに指も入らねぇし」
「ひっ…ひぁあ…ッ」
「アレなら奥まで入るだろうけど、嫌なんだろ?」
…アレ?
奥まで入る、って単語に傑の視線の先をふらふらと辿ると、最初に見せられた銀色の尿道バイブがくるくると傑の指先に弄ばれてるのが滲んだ視界に映った。サイドスタンドの明かりを照り返して光るそれは相変わらず硬そうだったけど、確かに傑の指より細くて、これなら、…もしかしたら。
「嫌がってるモン突っ込むのは趣味じゃねぇしな」
「あッ…!」
「ん?」
くるくると弄ばれてた尿道バイブが何気ない声と共にぽいっとシーツの外に放られて、思わず声を上げた俺をちらりと一瞥しながら、伸ばされた傑の手がくるりと一回転して落ちようとしていたそれを掴む。
「ンだよ。嫌なんだろ?」
「そ、それ…っ」
「これ?」
「も、それで…いい、からぁ…ッぁ、は…おね、が…っ」
もうこの熱さを少しでも癒してくれるならなんでも良かった。腰の奥をざわめかせる痺れの辛さに泣きながら、俺は立てた膝をはしたなく開いて傑のシャツの襟に縋りつく。
「あんなに嫌がってたクセに」
「あぅう…ッ、ごめ…ごめん、なさ…っ嫌じゃな、い…から、いれて…っそれ、それ…入れて、くださ…ぁっ」
恥も外聞も無く縋りついてお願い、お願い、と懇願する俺を、傑はしばらく呆れたように目を細めて見下ろした後、小さく溜息を吐いてくるりと手の中で回した細いバイブに赤い舌を絡めた。
「…すぐに痛いのも気持ち良くなるから、ちょっと頑張れよ?」
「んんっ…ひ、ぁあッ…!」
頬に触れるだけのキスを落とした傑が優しい声で囁いてくれるのに頷きながら、俺はひたりと熱いモノの先端に触れた冷たい感触に傑の首筋に腕を回してしがみついた。
金属の冷たさを感じたのは最初だけで、すぐに焼けつく熱さがぶり返した小さな窪みを細いバイブは慣らすようにくりくりと弄ってから、先走りで濡れそぼったそこにずぐ、と入り込む。
「あッ…は、はいって…あっぁああッ!」
狭い管の中を押し開かれる未知の感覚と共に潜りこんだバイブに、刺激を散々おあずけされてた粘膜は悦んでしゃぶりついた。イってる時みたいな目の前が白くなる快感が少しずつバイブが埋められる度に何度も何度も頭の中で弾けて、傑の背中に爪を立てながら俺はがくがくと腰を震わせる。
「ひぁッぁ、ああぁ…すご…いッ…!」
「何言ってンだよ。まだ入れただけだろ」
触って欲しくて仕方が無かった場所をつるりとしたバイブに擦られると失神しそうなくらい気持ちイイのに、どんどん奥まで入り込むバイブに押し戻されて出すことが出来なくて、甘苦しい切なさに半分意識を飛ばしながら喘ぐ俺を、傑が耳元で笑った。
「…本当に凄いのはこれからだぜ」
掠れた甘い声で囁いた傑の指先が、黒い機械の小さなつまみをぱちん、と弾く。
霞がかった意識の中でやけに高く響いたその音に重なる、ブゥン、と低く唸るようなモーター音。
「…ひ、ぁ゛ッ!?」
奥の奥まで埋められたバイブに薬に犯された狭い管の中を一斉に震わせられて、ずんと腰に響く未知の感覚に、ぐったりシーツに着けていた背中がガクンと反りかえる。
「ひぃいッい、ぁ、あぁあッ…あ、ぁーっ!」
強烈な振動で震えるバイブに絡みつく粘膜を容赦なく掻き乱されて、入れられた時とは比べ物にならない腰が蕩けそうな快感が断続的に背筋を駆け上がった。びりびり震えるバイブの隙間から粟立った先走りがこぷりと溢れるが、バイブが邪魔をして解放されない体は生殺しのまま、イく時の一番気持ちイイ瞬間を延々と味わわされる。
「あ゛あッぁあ、ぁああッ!と、とめっ…ひぅうう!」
「気持ちイイだろ?この中犯されるのも」
「ひッぃあぁあっ!」
強すぎる快感に朦朧とする意識の中で伸ばした震える手は傑に捕まえられて、バイブを抜く代わりに内側から振動させられてびくびく震えるモノにぐっと押し当てられた。上から押さえつけられるとそれまで粘膜の表面だけだった振動がモノ全体に広がって、掌にまで伝わって来る微かな震えにびくびく跳ねる足がシーツを掻き乱す。
「ひ、ひゃめッイイ…ッい、いからぁっ…あ、あーッあー!」
「約束は守れたな」
小刻みに何度も何度も押し寄せてくる絶頂感に泣きながら叫ぶように言うと、薄く笑ってそう呟いた傑がモノに突き刺さったバイブの頭を掴んだ。ぶるぶる震えたまま引き出されて行くそれを追って、押し込められていた熱い塊がゆっくりと迫り上がって来る。
そのじわじわイかされてるような甘い切なさだけでも俺は意識を飛ばしそうなのに、俺との約束を果たした筈の恋人はそれじゃ許してくれなかった。
「はぁあっあぁ、あッ…ぁ、嫌ぁああっ!」
半分以上抜かれてたバイブがずん、とまた奥まで突き入れられて、散々震わせられて痺れた粘膜をもう1度容赦の無い振動に苛まれる。熱が押し戻されるぎゅうっと絞られるみたいな切なさに耐えられず、シーツに頭を擦りつけながら必死でバイブを引き抜こうとするけど、俺の手を払いもしない傑に震えるバイブで小刻みに狭い粘膜を擦られて、ねだるようにその手を掴むことしか出来ない。
「ぬ、ぬい…てぇッあぅうう!ひっひいッ…ぃあぁあ…っ!」
「ここが気持ちイイって、ちゃんと体が覚えたらな」
そんなのもう嫌ってくらい教えこまれてるのに、傑はそう言って泣きじゃくる俺の目元にキスを落とすと、またバイブをゆっくりと引きずり出した。先端をほんの少し潜り込ませてぐるぐる渦を巻く精液を堰きとめたまま、円を描くようにバイブを動かして濁った先走りを溢れさせる尿道口をじっくり嬲る。
「あ゛ぁああ!そこ、だめッ…ゃ、あッまたぁ…っ!」
敏感な粘膜を余す所なくバイブに責め立てられ、全身に広がったまま消えない痺れにもう身悶えることも出来ないのに、傑は容赦なくバイブを埋めて俺に狭い尿道の奥の奥まで犯される失神しそうな快感を教え込んだ。頭の中まで掻き乱されてるような愉悦とイけない苦しさがない混ぜになって、もう何が何だか分からない。
「どうされるのが一番気持ちイイ?」
「もっ…わ、かんな…ッあぁあ…こ、ひゅら…な、でぇえ…っ!」
中の精液を掻き混ぜるようにバイブを捻りながら大きく上下させられるのに掠れた悲鳴を上げながら、俺は焦点の定まらない目を虚ろに見開いてシーツを掴むことも出来なくなった指先をひくりと震わせる。
「あ、あッぁ…ぁーっ…は、…ぁ…ッ」
「…まぁ、最初だしな」
異物を呑み込まされて膨れた裏筋を指先で撫でて、過ぎた快感に啜り泣く俺に切れ切れの悲鳴を上げさせながら、傑は恐ろしいことをぽつりと呟いてカリの上を滑らせた手でバイブの頭を掴んだ。
「ふぁあっ…や、やだ…やだぁあ…ッ!」
「そんなイイ声で啼くなって。抜きたくなくなるだろ」
また滅茶苦茶にされると思って泣きながら首を振る俺に苦笑しながら、宥めるように俺の目尻から溢れる涙を舐め取った傑の手が、ぱちりと乱れたシーツの合間に隠れたバイブのスイッチを切った。
ずっと尿道の中を苛んでいた振動がぴたりと止まって、ずるりと引き出されるバイブに合せて焼けつくような熱の塊が駆け上がる。
「あッぁあぁ…あ、あぁっ、あぁーッっ!」
何度も何度も波を押し戻したバイブはそのまま呆気ないくらいあっさりと引き抜かれて、散々溜めこまされた熱が目の前も頭の中も真っ白に染めながらどぷりと溢れ出す。
長く我慢させられた分射精の快感は長く尾を引いて、……しかも最悪なことにそれだけじゃ済まなかった。
「あっ…ぁ、な…なん…あぁあっ…!」
「ん?」
絶頂の甘い余韻に混じって腰の奥を疼かせた感覚に慌てて止めようとするけど、散々嬲られてまだ何か入ってるように痺れたモノは言う事を聞いてくれずに、薄くなった白濁の後にさらりとしたものが混じる。
咄嗟に抑えつけようと手を伸ばしたけど、堰をきったそれはもう止まってはくれなかった。
「う、そっ…こ、んな、ぁ…あ…ッ」
「悦?」
「ッや、…み、見な…ぁ、あ、や…やだ…あ、ぁッ」
体のだるさも忘れて慌てて体を丸めるけど、しょろしょろと溢れ出てくる薄黄色のそれは指の間から次々と溢れてシーツを汚していって、気が遠くなるような羞恥心に目が眩む。
どうして、なんで、なんでこんな。
「あ…ぁ、…っ」
「悦、」
「ッ……!」
胎児みたいに体を丸めたまま、どうしていいか解らずにかたかたと震える肩をとんと傑の手に叩かれて、俺はびくりと体を竦ませながらシーツに押し付けていた顔をのろのろと上げた。
傑には今までかなりの痴態を見られて来たけど、さすがにこれは酷過ぎる。この歳になって、子供、みたいに、こんな、…漏らしたり、して。
「…なんて顔してんだよ」
「あ、ぇ…っ?」
呆れられると解っててもその表情を覗わずにはいられずに、恐る恐る見上げた傑の表情は、俺が想像していたどれとも違っていた。
ちゅ、と目尻でなった音が信じられずに目を見開く俺に小さく笑って、傑はボタンを外して羽織っていただけの自分のシャツを脱ぎ捨てると、滑らかなそれを体を丸めたままの俺に掛けてくれる。
「ちょっと薬が効きすぎたな。おもらしするくらい気持ちよかった?」
「ぁ…あ、…ぅ…っ」
「だから言ったろ。絶対気に入るって」
頭がついて行かずに無意味な声を漏らす俺に、傑はそう言っていつも通りヤらしく笑った。呑み込まれそうな藍色は反らしもせずに真っ直ぐ俺を見下ろして、普段どおりに優しい手つきで髪をかき上げられた額に触れるだけのキスが落とされる。
「す、…すぐる…」
「ん?」
「……っ」
「……それにしても」
名前を呼んでみたものの何を言っていいのか解らずに視線を彷徨わせた俺にふっと笑って、傑は俺の首筋に顔を埋めながら小さく息を吐いた。
「な、に…っ」
「…煽り過ぎ」
「…は、?」
何を言われるのかと心臓を跳ね上げながら顔色を覗ったのに、またもや予想の斜め上を行く言葉に俺は思わず目を見開く。
煽る?
…な、何が?
「くっそ…無茶させるから今日は我慢するつもりだったんだけどな…」
「な、何が…」
「悦、悪ィけどもうちょっとだけ無理させてイイ?」
「は?…ぁ、ちょッ…っ…!」
両足の間に仕舞い込んだ腕を不意にぐいっと強い力で引き抜かれて、まだ濡れた感触が残ったままのそれに焦って声を上げかけた俺を、熱を孕んでギラついた藍色が射抜く。
完全に射竦められて動きを止めた俺を見つめたまま、傑は汚れた俺の手を自分の方に少し強引に引き寄せて、ジーンズの前に押し当てた。
「な、…ッ」
ごつ、と掌に当たった、ジーンズの厚い生地越しにも嫌ってほど伝わる熱さと、硬さ。
思わず手を引っ込めながら信じられない思いで見上げた俺に、傑は獲物を見つけた肉食獣そのものの目で俺を見下ろしながら赤い舌でゆっくりと唇を舐めた。
「っおま……なに、ど…して…!」
「俺におもらし見られて恥ずかしくて死にそう、って顔してる悦がエロ過ぎるのが悪い」
さっきまでの俺のどこに盛るような要素があったんだ、と絶句する俺に色気がダダ漏れの薄い笑みを浮かべて見せながら、傑はさらりとそう言ってのけると甘えるように顔を寄せて俺の首筋をちろりと舐める。
「手でイイから抜いて。……もうガチガチ」
「ッ…!」
熱っぽく掠れた声で囁かれて、さっきまで散々体中を犯してた快感がぶり返すような感覚を俺は慌てて打ち消した。
俺の漏らしたものでベッドはシーツどころかその下のマットレスまでぐっしょり汚れてるし、身をよじれば独特の匂いが鼻を突くのに、幻滅こそすれこんな状況で盛るなんて、そんなの有り得ない。
…有り得ない筈なのに。
「…っ…」
そっと手を伸ばして布の上から撫でた傑のモノは確かに本人の言う通りな状態で、傑が本当に、気遣いでも何でもなく俺の痴態を見て盛ったってことを証明する何よりの証拠に、かっと顔が熱くなった。
こっちが本当に恥ずかしくて情けなくて、とにかく色々と死にそうな思いをしてたのにこいつは何を考えてたんだと思うと腹立たしくて、憎たらしくて。それなのに、ほんの少しでもそれにホッとした俺が、きっと一番おかしい。
「し、シャワー浴びてから…とか…」
「……」
「…だめ?」
「……」
「っ…この、変態…」
せめて場所を変えようとしてるのに無言の圧力で促してくる傑に、俺は熱を持ったままの顔を傑の胸元に擦りつけながら最後の抵抗に小さく吐き捨てるけど、傑は気にした風も無く喉の奥で小さく笑う。
「今更だろ」
…それもそうだ。
Fin.
お久しぶりの18禁なお話。
ちょっぴり長くなってしまいました。お、お漏らしする悦と変態な傑が書きたかったんだ…!
スカトロは苦手な方も多いと思うので直接的な表現を出来るだけ避け、あっさりとした描写にしてみました。
お好きな方には温いことこの上ないと思いますが、まずはお試しということで。
ちなみにじんわり『錯乱シェイク』と繋がっているような気配です。
