天井から伸びてる鎖が、ギシギシ耳障りな音を立てて揺れる。
「別に、難しいことを言ってるわけじゃないでしょ?」
「ひッぃ…!」
ぱぁンっ、て背中を叩く甲高い音と静かな鬼利の声に、俺は鎖で足が床につくギリギリのトコで吊られた体を震わせた。
鬼利が持ってンのは、鞭よりもちょっと幅の広いスパンキング用のパドル。普段なら肌がひりひりするぐらいで済むンだが、もう丸2日もここで吊るされたまま、痛みと快感を交互に与えられてギリギリまで体力削られちまッてる俺には結構辛い。
「僕の目が届かない場所で、他の人間に尻尾を振るなって言ってるだけなんだけど。…そんなことも出来ない?」
「あ!…は、ぁ゛ぅう…っ」
「ねぇ、どうなの」
「ぅあ、ぁッ…!ひぅう…ッっ」
バチンッ、て鞭で傷つけられた背中を叩かれながら奥に突っ込まれたバイブのスイッチ入れられると、中を機械で抉られる快感に膝がガクガク震えて、リングで締め上げられたモノの先からも先走りがダラダラ溢れてくる。
「幽利、善がってる場合じゃないよ。聞いてるんだけど」
「ひぁ゛ッあ、あぁ!…ふ、ぁぐっぅうっッ」
「…あぁ、気持ちよすぎて喋れない?」
背中が熱いのを通り越して重苦しくなるまで散々叩いて、鬼利はまともに喋れねェ俺の顔をパドルで上げさせた。首に食い込む分厚い革が痛くて無理矢理顔を上げたら今までにねェくらい冷めた鬼利の瞳と目が合って、蔑むみてェなその視線にゾクゾクってェ背筋に震えが走る。
「ひぁ、あっ!…あぁあぅ゛っ」
「ぐしょぐしょになってるね、ココ。せっかく蓋してあげたのに…」
ふぅ、って溜め息交じりに言いながら、鬼利はゆゥっくり俺の体を迂回して反対側に回った。言葉に釣られて見てみりゃァ、不安定な俺の足元には零れた先走りで小さい水溜りが出来てて、今もぽたぽた垂れてるソレが石畳を汚してる。
「ひぁ゛あッ…!ご、め…なさ…ッぁくぅうっ…きれ、にし…ます…ぅ…ッ」
「当たり前だよ。…でも、その前に罰をあげなきゃね?幽利のいけない所に」
「あ、ぁ…ッっ」
怖いくらい綺麗に笑って、鬼利は持ってるパドルでぐしょぐしょに濡れちまってる俺の足を下からゆゥっくり撫で上げた。
もうそれだけで俺にゃァ次の罰がどこに来ンのかが解っちまって、抵抗どころか身動きもろくに取れねェ体がガクガク震える。
パァンっ!
「ひぃ゛ッっ!…あぐッ、ぅ、ぁ、あッ…!」
派手な音立ててガン勃ちしたモノに革のパドルを叩きつけられる激痛に、見開いた目の前が一瞬暗く染まった。
抱き寄せるみてェに腰抱かれてちゃァ逃げ場も無くッて、俺に出来ることと言えば与えられる熱くてキツい「快感」に、無様な悲鳴を上げることだけ。
「ん゛ぅうッ!はッ、はぁっ…あぁ゛あっ!」
「…普通、ここまでやれば大体は萎えるんだけどね」
「はぐッぅ…!ひぃあ゛ぁ…ッっ」
「これじゃちっとも罰にならない…」
スパンキングで真っ赤に腫れたモノの裏筋をパドルの角で引っ掻きながら、鬼利は傷を抉られるみてェな激痛にも萎えるどころか先走りを垂れ流してる俺のモノを見て、軽く溜息を吐いた。
「全身の性感帯にバイブつけて玩具責めと、半日イキっぱなし。…どっちがいい?」
「ッ…!」
「ほら、どっち?」
退屈そうな顔で聞き返しながら内腿にパドル叩き付けられて、優しそォな声とは正反対の痛みに、ギリギリで保ってる意識が揺れる。
ぐらァ、って足元が傾ぐよォな眩暈がするが、鎖でしっかり吊られてちゃァ倒れる事も出来ねェから、俺ァただ目の前がぐるぐる回ってンのを見てるだけ。
「ッ…ァ…おも、ちゃ…」
「そう」
荒い呼吸の中で搾り出した俺の声に鬼利は特に面白くも無さそうに頷いて、俺のをギチギチに締め上げてるコックリングを目盛り1つ分、緩めた。
言ったのと反対のことされそうだってェのはイイとして(このくらい当たり前だ)、イキっぱなしの「罰」なのに、何でリング外して貰えねェんだろ…?
「それじゃあ、僕は仕事があるから」
「ッんぐ、んン…!」
耳元で囁かれながら乱暴にボールギャグ捻じ込まれて、後頭部で留められるベルト。いつものと違って穴の開いてねェそれはこォいう時だけ使う「お仕置き用」で、上手く呼吸が出来なくて酸欠で苦しんだ挙句ブっ飛んでは引き戻される、ってェのを俺は何度もやられた事がある。
「ちょっと怖いかもしれないけど…傑にやるって言っちゃったんだよね」
「ん、ふぅう…ぅ、んんぅッっ」
「中のバイブ、もし落としたりしたらもっと酷いことするから。ちゃんと締め付けてるんだよ?」
「う゛ぅッ…ふ、ぅぐ…んんンぅ…ッ!」
抜けかかってたバイブを深いとこまで突っ込まれてガクガク頭振って頷いた俺に微かに笑って、鬼利は弱かったバイブを音が響くくらい強めてからパドルとバイブのコントローラーをぽいっと傍のベッドの上に放って扉に手を掛けた。
「それじゃ、12時間後にね?」
「んン゛んんんっ…ふぅう゛、ンくぅ…ッ」
もう何時間続いてるか知れねェ度を超した快感に、鎖で吊られた体が時々痙攣みてェにひくん、ひくん、て震える。
どうしてリング外して貰えなかったのか、ってェ疑問は1回目にイった時にすぐ知れた。
食い込んでねェリングの所為で隙間から精液が溢れて、イク度に一瞬で済むはずの射精の快感を1分は延々味あわされる。間が空いてた頃はまだ良かったが、7時間過ぎた辺りから体がすっかり出来上がッちまって、そっからはもう、地獄。
快感を感じる神経を直接嬲られてるみてェなキツい愉悦に失神も許して貰えず、大分前から色なんて無くなッちまった精液で足元を濡らしてる。
「ふぅぅっ、んン゛ぅうッ…んっ、んッ、ン゛んんッ!」
気持ちイイなんて感覚は当に消え失せて、残ってンのは重苦しい痛みと体力の限界を超えさせられた気絶しそうな辛さだけ。
散々弄られて擦られて敏感になった中を機械で掻き回されンのがただ苦しくて、虚ろになって足元もまともに見えねェ目から涙がぼろぼろ零れてくる。
あ、ァ゛っ…も、イキたくね、のに…ッ
「ふぅう…ンぅうう゛…っ」
「…なんだ、意外と楽しそうだね」
…鬼利?
不意に響いた声に霞がかってた意識がゆっくり戻ってきて、俺はぐったり垂れてた頭を無理矢理上げて鬼利を探した。霧は見えるンだが、目隠しもしてねェのに鬼利の姿が、…
「ほら、こっちだよ」
すぐ後ろで、やけに優しい鬼利の声がそう囁いたのを聞いた瞬間。
「んンッ!?ンうぅ゛ううッ!」
急に振動数の上がったバイブを前立腺をモロに抉るように捻られて、指先すらてめェじゃァ動かせなくなッちまった体が跳ね上がった。
勿論鬼利が一瞬で許してくれる筈もねェから強弱をつけながら同じ場所をずっと責められて、リングで狭められた尿道から水に近い精液がごぷ、ごぷ、て音立てながら溢れてくる。
「僕が見えなくなるなんて相当だね。イキっぱなしの快感耐久、そんなに気持ちよかった?」
「んぅっ、ふぁ、あっ…はぁあッ、ぁ゛ああぁぁっ…!」
どこか楽しそうに言う鬼利に5分は玩具にされてようやく、バイブの振動数を下げられてギャグを外して貰ったンだが、空イキも含めて3回はイっちまった快感は収まらない。
長い間ギャグを嵌められてた所為で舌もマトモに動かねェから、終わらない快感に泣きながら虚ろンなった目で鬼利を視るくらいしか出来なくて、そんな俺を鬼利は肌に手を這わせながら目を細めて眺める。
「あぁ、まだ続いてるんだっけ。こんなになってもまだ出せるんだ?」
「ひィいッ!あぐっ、ぁ゛あ、ぁああ!」
ゆっくり前に回りこんだ鬼利にそう言いながらドロドロのモノを扱かれて、延々続く絶頂感に限界なんざ当に超えてる体と中身を嬲られる。
バイブの強弱を操作されながらぎゅう、て押しつぶすみてェに裏筋から扱かれてまともに出させて貰えない精液を搾り出されると尿道口が熱くなって、その辛さに飲み下す余裕のねェ唾液と溢れてくる涙がぽたぽた足元に落ちてく。
「ァ゛あひ、ぃ…ッひぅ゛うッ、ぁあ゛ぅう゛ぅぅうっッ」
「半日責めてもまだ快感が欲しいの?…浅ましい体」
「あ、ぁッ!はぁあぁッ…ぁ、鬼利ぃ…ッっ」
「……」
手を止めて欲しくて泣きながら名前を呼んだ俺を、鬼利の冷たい眼が睨んだ。
いつもの半分も働かねェ頭じゃ何が気に食わなかったのかも、どんな粗相をしちまったのかも解ンなくて、何も言わない鬼利の冷たい瞳の怖さにひくっ、て喉が鳴る。
「そんなに酷いことされたいの…?」
「ひッ…!違…っごめ、なさ…ッ」
「ほら、また口先ばっかり。ただ謝ったって許してあげないよ、僕は」
一言ずつ、刻み込むように言いながら鬼利は薄っすら笑って、俺の唇を指先で撫でた。視線で命じられるまま、震えながらそろりと出した舌はすぐにその指先に絡め取られて引っ張り出されて、少し長い鬼利の爪が貫通するんじゃねェかってくらい強く押し当てられる。
「ひァ゛っ…ぁ、あ゛、あぁ…!」
「粗相ばかりするこの舌は要らないね。…いっそ切り落としてあげようか?そうすれば意味の無い”ごめんなさい”も、はしたない声で僕の名前を呼ぶことも出来なくなる」
柔い舌にぎち、って立てられた爪を動かされて、針でも刺されたみてェな痛みに泣きながら俺は微かに首を横に振った。
鬼利が怒るのも当然だ。声を抑えもせずに鳴いてるだけでも耳障りだってェのに、そんな声の合間に名前を呼んじまったンだから当然の罰なんだが、今にも落ちそうな意識を暴力じみた快感でようやく留めてる俺にはそんなことも解らなくッて、鬼利に睨まれる怖さにガクガク膝が震える。
「っふ、くぅ…ッごめ、なさ…ごめんなさい…ッも、も…しな、からァ…ッ」
「…解ればいいよ。こんなに泣いて…痛かった?」
「ぁふ…っふぁ、あ…!」
舌を離して貰うのと同時に震える声で謝った俺を宥めるように囁きながら、鬼利は爪痕が残る俺の舌を絡めとって優しく舐めてくれた。全身に震えが来るようなその気持ち良さに一瞬だけは苦しさも辛さも全部吹っ飛んじまッて、とろんて目を潤ませながら俺は鬼利の甘いキスを受けて、
その一瞬後、潤ませてた瞳を大きく見開くハメになった。
「んン゛ぅッ!ん、んッー!んンーッっ!」
最強まで目盛りを捻られたバイブをぐじゅっ、て音がするほど激しくピストンされて、前立腺にモロに叩き込まれる刺激に吊られた体がガクン、て跳ねた。一瞬意識が吹っ飛ぶが、それもトロトロになった襞を嬲るみてェにゆっくりバイブを引き出されて、俺がそれだけでイクほど感じる場所を狙って捻りながらまたゆゥっくり突っ込まれる快感に、すぐに現実に引き戻される。
吊られた上に体力なんて欠片も残って無い体じゃァ、出来る抵抗なんざ高が知れてる。酸欠で目の前が真っ赤に染まるまでキスからも解放して貰えず、ようやく離して貰った後も巧みに動く舌先に首筋を犯されて快感を引き出された。
「ひぁッあぁあ!ぁッ、あ゛っ…あぁーッっ!」
「気持ちイイ?ほら、幽利の中もうぐちゃぐちゃになってるよ」
「ひぃいぃッ…!ひッぅああぁッっ…ふぁッぁ、も、やぁ…やだぁあぁ…ッっ!」
「嫌?…何が嫌なの?」
「はぁンっぅ゛う…!ひゃ、ぁあっ!ぃきたく、な…ッも、ゆぅしてェ…ッぁ、ひぅう!」
ぐじゅ、くちゅ、て頭ン中に響く恥ずかしい水音と辛くて苦しい快感に泣きじゃくりながら、マジで限界の時にしか怖くて言えねェ哀願の言葉を必死で紡ぐ。
イキたく無い、なんて言っちまッたら何日射精禁止にされっか解ったモンじゃねェが、そんな後のことになんざ頭が回らない。ただバイブを動かす手を止めて欲しくて。この拷問じみたお仕置きを、早く終わらせて欲しくて。
「イキたく無いの?でもほら、もう空っぽになっちゃって何も出てないよ」
「ひぅう゛うぅッ…ゃぁ、やぁああっ…!ぁ、ばい…ぶ…がぁ…ッっ」
「バイブがどうかした?…あぁ、もっと奥まで欲しい?」
「違っちが…ッ!ンぁああぁあっ!あァ゛っ、あッ…たすけ…てッ」
解ってる癖に、意地悪な鬼利に深い所までバイブを押し込まれて、鎖がギシギシ言う音を聞きながら泣きすぎて掠れた声で叫んだ俺の言葉に、鬼利がちらりと俺を見上げた。
「助けっ…ぁあッ!…たすけ、てぇ…ッ!きり、鬼利っ…おねが…ッ」
「助けるも何も…僕がやってるんだけどね。見えてないのかな?」
「あぁ゛あッ…ちゃ、と…いう、こと聞く…からァっ…!おねが、たぅけ…てぇ…っ」
「もう舌も回らなくなっちゃったか。…幽利、許して欲しい?」
「んンっ…ゆぅし、て欲し…!」
鬼利が喋ってる意味もよく解らないまま掠れた声で必死に頷いた俺に、鬼利は柔らかく笑って俺を吊るしてる鎖を枷から外した。
ガクン、て倒れこみそうになる俺を鬼利は優しく受け止めてくれて、膝が震えてまともに立てなくなった体を傍らのベッドに寝かせてくれる。
「ぁっ…や、ゃだぁ…ッ…さわ、らな…っッ」
「でも、触らないと抜いてあげられないよ?…すぐ終わるから、ちょっとだけ我慢して」
「ひくっ…ぅ、うぅう…ッ」
ガキをあやすような言葉で囁きながら中で止まってるバイブにそっと触られて、俺はシーツの上で体を丸めながらしゃくりあげた。
抜いてくれる、ってェのは解るんだけど色々と振り切れちまってる今の俺には何より怖さが先に立って、また奥まで突っ込まれたらと思うと体が震える。
「ほら、泣かないの。すぐ終わるから力抜いて」
「ん、んッ…ふぁ、はぁあぁッ…!」
「いい子だね、幽利。…はい、終わり」
「は、ァ…っ」
ずる、っと生々しい感触を残しながらバイブが抜かれて、ようやく薄らいできた快感に俺はぐったりシーツの上に体を投げ出した。
微かに金属が擦れる音と、長い間あげてた所為で冷たくなった指先に絡む暖かさに伏せかけてた目を開けたら指先を包んで暖めてくれてる鬼利と目が合って、さっきまでとは違う優しい眼にじわって体ン中が暖かくなる。
「き…り…、…鬼利…」
「何?…いいよ、もう寝ても」
「ん…鬼利、も…」
緊張を解いた途端幕でも下りたみてェに暗くなってく意識の中、俺は甘ったるい声で添い寝をねだりながら鬼利の袖口を掴んで、
そこで、ふっつり意識が途切れた。
♪~~♪…♪♪~…
「…はい」
『俺だけど。死んでる?』
「傑…どうしたのいきなり。何かあった?」
『別に大した事じゃねーんだけどさァ…ってかお前どこにいンだよ、部屋?もう12時間経ってねぇ?』
「仕置きはもう終わったよ。薬でも盛ったみたいに横でぐっすり寝てる」
『は、添い寝?お前が?気持ち悪』
「…相変わらず真正面から失礼だねお前は。袖つかんだまま離してくれないんだからしょうがないでしょ」
『あー、そーいうこと。ならしゃーねェな』
「で、何?」
『軍警のカッコしたお客さんが100人弱いらっしゃってるんだとよ。”最高責任者と話がしたい”らしいけど、どーする?』
「…傑、そう言えば今日暇だったね」
『……いえ、とっても忙しいデス』
「それは良かった。殲滅よろしくね」
『うーわー…マジかよ…報酬は?』
「この前リアルタイムで見せてあげたでしょ?あの監視カメラの映像」
『……マジですか』
「マジだよ。それじゃあよろしく。お休み」
『お休みって…おい、き―――』
「……」
Fin
200,000hit記念御礼小説!
アンケ2位だった鬼×幽で『「助けて」と言わせ隊』で御座います。