大切なのはそう、遊び心



「…あ、これとかは?」
「あー…まぁ定番だよな」
「普段じゃまずあり得ねぇし、いいじゃんこれ」
「じゃあこれにする?」
「途中でいつも通りになるなよ。萎える」
「言うねぇ。泣きついてきたって止めねぇかンな?」
「骨折られたって泣くかよ」










 ノックすらせずに手をかけた扉はいつも通り何の抵抗も無く開き、欠伸を噛み殺しながら勝手知ったる恋人の部屋に脚を踏み入れた悦は、予想外の出迎えに瑠璃色の瞳を軽く見開いた。

「傑?…どっか出掛けンの?」
「おかえり、悦」

 悦の問いには答えずに傑はにっこりと笑い、半開きの扉によりかかる悦の蜂蜜色の髪をいつも通りの優しい手つきで髪を梳く。
 いつもと様子が違うことに少しだけ違和感を覚えながらも、悦は取り敢えず扉を閉めようと歩を進めた。傑の横を抜けるようにして部屋に入ろうとした瞬間、髪の中に差し入れられていた傑の指先に力が籠る。


「…ただい、あッ!」
「……」
「な、にす…ッ、…!」

 髪を引かれる痛みに眉を顰めながらも声を上げたが、煩いとばかりにそのまま壁に背中を強く叩きつけられた。骨が軋む程の勢いに息すら止まり咳き込むが、傑は息苦しさに体を丸めることさえ許してくれない。
 髪を引いたまま胸板を壁に縫い止めるようにして抑えつけられ動けない悦の耳元に音も無く唇を寄せて、傑はどこか錆びついた甘い声で囁く。


「どこ行ってた?」
「どこ、って…今日は仕事だってこの前、言っただろ。離せよ」

 いつもと違う様子の傑を不思議に思いながらも自由な手で傑の肩を突き離そうとするが、傑の体はぴくりともしなかった。純血種と人間の膂力の差を考えれば当然のことなのだが、例えそれが純血種にとっては毛ほども感じぬ弱い抵抗だったとしても、いつもの傑ならば退きはせずとも身を引くことくらいはしてくれる。

「傑?…なんだよ、なんか今日おかし――」

 決定的な違和感に眉を顰める悦の耳元で、傑が低く喉の奥で嗤った。
 声音はいつもと同じ傑のものだった。
 なのに。


「…嘘吐き」



 途方も無く甘ったるい睦言のようなその言葉に、悦の全身は銃口を額に当てられた時のように一斉に鳥肌を立てた。

「ッう…ぁ、く…!」
「鬼利に聞いたけど、」

 いつも通りの表情で悦の胸を押さえる手に背骨が軋むほどの力を掛けながら、傑は他愛のない世間話でもするような調子で息苦しさに喘ぐ悦に語りかける。
 筋肉と肋骨の上から肺を圧迫され、悦は苦しさに傑の手を引き剥がそうともがくが、爪を立てるほど力を込めても傑の手は相変わらずぴくりともしない。

「今日、仕事は入ってないって言ってたぜ。4日前のも」
「そ、な…ッ」
「俺に黙って、外でどんなイケナイことして来たんだ?」

 苦しげな呼吸を繰り返す悦を見下ろす傑の藍色の瞳は、その奥に底なしの闇を孕んでいるかのように暗かった。
 いつもの呑み込まれそうな藍ではない。
 目を合わせた瞬間に首を狩りとられそうな、捕食者の目をしていた。


「嘘、じゃ…ほんと、に…しご、とで…ッ」
「男と抱き合って寝るのが仕事か?…男娼に戻ったんならそう言えよ」
「ちがッ…あれは…!」

「…ほら、やっぱり」

 暗い瞳をした傑が愉しげに嗤う。咄嗟に零れた言葉が取り返しのつかないものだと気付いた時には勿論、遅かった。

「…す、ぐ…っ」
「そんな顔するなよ。別に怒ってるわけじゃない」

 髪を引いていた傑の手が滑り、傍目にも解るほど血の気の引いた悦の頬を撫でる。言葉の通りに、優しい手つきで。


「悪いのはちゃんと満足させてやれなかった俺だ。壊れたらマズいと思って手加減し過ぎた。それが物足りなかったんだろ?」
「は…、ひっ…!」

 肋を砕かんばかりの力が込められていた傑の手からふっと力が抜け、咄嗟に大きく息を吸った悦の服の襟元にかかった指が、紙でも裂くように容易く黒いシャツを引き裂いた。
 破れた布の合間から鳥肌だった皮膚を撫でる手は酷く冷たい。立てられた爪が古傷の残る白い肌に赤い線を引いていくが、悦は目の前の傑から視線を外せなかった。

 貧弱な獲物に甘く囁きかける化け物は、見惚れるほどに美しいかんばせで嗤う。


「手加減無しに、壊してやるよ」










 酸欠を起こしかけた悦の意識が飛ぶ寸前で、痛いほどに絡められていた舌はようやく息継ぎの暇を与えてくれた。

「はぁ…ッ!は、ふ…ぅんンっ…ん、む…!」

 酸素を求めて喘いだ唇は一呼吸の間に再び塞がれ、息苦しさに目の前が朦朧としてくる。下肢では指先に捉えられたモノがぐちゃぐちゃと酷い音を立てて容赦も無く追い立てられていたが、快感に上がった呼吸を阻害されている悦にそれに浸る余裕など無い。

 傑は壁に叩きつけた時以来、悦に痛みを一切与えなかった。
 酷い酸欠と快感の中で立つことを強要された足は今にも崩れそうにがくがくと震え、まともに酸素を与えられない頭はぼんやりと霞みがかっていたが、与えられる快感はそれらを全て上回って悦の朧げな意識を支配している。
 まともに喘ぐことも、指先に力が入らず縋ることも出来ない中で注がれる愉悦はどんどん体内に蓄積され、かといって射精すら許されない。


「ふ、ぅう…んんぅー…ッ!」

 限界のギリギリ手前で離れた手が内腿を撫で、もう何度目か知れない絶頂を反らされた。イケない苦しさに声を上げても傑は気にも留めずに緩い愛撫を続け、そして熱が少し冷めた頃にまた遠慮なく追い上げる。
 上り詰めては下ろされ、その繰り返しをもう何度されたか解らない。時間にしてみればそれ程でも無いのだろうが、普段なら何度も達しているような快感を延々と味わっている悦にしてみれば永遠のような長さだ。


「ふぁ、ッ…い、きた…あぁあッ…!い、かせ…てぇ…ッっ」
「遠慮すンなよ。こんなに濡らして、嬉しいんだろ?」
「ひぃあぁあああッ!ぁ、あッぁあっ、あッ…ぁ、またぁ……!」

 敏感な先端を責め立てられ、びくびくと腰を震わせながら悦は射精しようとするが、ギリギリの所で傑の手は離れてしまう。
 あまりの辛さに涙を流しながら悦は頭上で一纏めに押さえられている腕をじたばたと動かすが、拘束は少しも緩まない。もがくことに意識をやったのを見計らって再び触れた傑の指にもう嫌だ、としゃくり上げても無駄なことだった。


「やっ、嫌ああぁ…!」

 首を振りながらの哀願は聞き流され、悦の体中に赤い鬱血痕を残しながら傑はぱんぱんになった袋を揉みしだき、だらだらと先走りを零す鈴口を指の腹で擦りあげる。いくら悦が暴れても、そんな抵抗は傑にとって子猫が腕の中でもがいているのと同じだ。縄や拘束具など無くとも、膝で太股を抑えつけてしまえば事足りる。

「ひぃッぁ、ンあぁぁっ…ゆる、ひ…ごめ、なさ…ぁああッ…!」
「怒ってないって」

 指先では依然として悦にイク寸前の快感を常に味あわせながら、困ったように笑って傑は悦の頬に伝う涙を舐め取った。瞳は相変わらず暗く凍てついたままだが表情や声音は際限なく愛情を注いでくれている時と一緒で、そのことが既にぐちゃぐちゃの悦の頭を混乱させる。

 激しく愛されている時なら、本気で嫌だ辛いと泣けば手を緩めてくれる。何か悦が粗相をしてのお仕置きの時は謝って縋れば許してくれる。
 今の傑はどちらとも違った。悦が怒っても縋っても、泣き喚いても止めてくれない。話は聞いてくれるが全て悦の意志とは違う方向に解釈されてしまい、いつもなら必ずどこかに用意されている筈の逃げ道が一つも見当たらない。


 壊そうとしているのだ。
 …本気で。


「浮気相手はドコで選んだ?」
「ち、ちがぁ…ッぁ、あっ!」
「悪ィ、浮気相手は俺か。…で、本命はドコで選んだ?テク?」

 とぷりと先走りを零した悦のモノから離した手で、傑がベルトのバックルを外す。
 違う、違う、と首を横に振れば、何故か傑は苦笑を浮かべて手首を押さえていた手で悦の左足を抱え、右足の爪先が辛うじて着く位置まで軽々と持ち上げた。

「じゃあやっぱモノか。これはさすがにどうにもなんねぇな」
「傑…ッ違う、ちがうからっ…そんなんじゃない…ッ」
「気ィ遣うなよ、こんな時まで。俺はヨかったけど、悦は俺のじゃ物足りなかったんだよな?」
「ッひぅ…ちがっ、…ち、がう…ッ」

 どれだけ懸命に伝えようとしても今の傑には無駄だった。しゃくりあげながら首を振る悦の頬にキスを落として、傑は甘い声をその耳朶に滑り込ませながら、今日はまだ指の一本すら入れられていない悦の後腔に熱い欲をひたりと宛がう。

「さすがに、長さはどうしようもないけど、」
「…傑?…すぐる、…」
「こうすれば太さはカバーできるだろ?」
「やだ、…ッやだ、やめ、……あ゛ぁあああ!!」


 ぎちゅり、と頭の奥で嫌な音がした。
 昔はよく聞いていたけれど、傑に愛されるようになってからはずっと聞いていなかった音だった。


「はッ……ひ、は…っ!」
「ちゃんと息してろよ?動くぜ」
「ひゃ、めッ…さ、さけ…っあぐぅううッ!」
「…あぁ」

 大した潤いもなく強引に貫かれた上に慣れる暇も無く引き摺り出された所為で悦の後腔は裂け、傷から伝った血が傑のモノにも絡みついていた。悦を快感で追い詰めることはあっても痛みを与えることなどほぼ無い、ましてや血が出るような傷など絶対につけなかった傑は、廊下にぽたりと滴った血液を見てどうでもよさそうに頷く。


「裂けたな」


 薄い笑みすら湛えた唇から紡がれた声は、ぞっとするほどに無感動だった。

「…え…?」

 止めてはくれなくても、謝ってくれると思っていた。その声を聞いた途端に真っ白になった頭で思わず聞き返したが、傑は気に留めることすら無く悦を支えていた腕を下ろして血の滲む内壁を突き上げる。

 快感も、刺すような痛みも感じない。傷ついた孔を突かれる度、体が反射的に中の傑を締めつけるが、その感覚すらもう悦の脳には届いていなかった。


「…すぐる。…すぐる」
「ん?」
「すぐる…すぐ、る…」
「どうした?」
「…がぅ…ちがう、…違う…」

 されるがままに揺さぶられながら、悦はうわ言のように呟き続ける。瑠璃色の瞳はすでに焦点を結んでおらず、瞬きに溢れた涙が頬を伝った。

「しくじったんだ、…あいつが、慣れてるだろって…だから…」
「悦?」
「だって、しないと返さないって…だから、ちょっとだけ、…きづかなくて…いらいにん、も仲間だった。だから…」
「……」

 ぼんやりと開かれた目で虚空を見つめたまま、淡々と呟く悦に傑は僅かに眉を顰め、ようやく律動を止めた。
 とめどなく涙が伝う頬に手を添えて瞳を覗き込むが、焦点は結ばれないまま、乾いた唇だけが微かに動いて抑揚のない声を紡ぐ。


「すこしだけ、だからって…きらわれたくなかった、寝たけど、…でも、でも口だけ。…すぐ殺したから、…いらいにんも、殺したから、…ころした」
「…殺した?」

 静かに聞き返した傑を、涙をいっぱいに湛えた瑠璃色が見た。

「嫌われたくなかった、から…うそ、吐いた。ごめん…ごめんなさい…」
「……」
「…すぐる、傑のことおれ、うらぎって…ごめんなさい…きす、してくれたのに…」
「…悦」
「っ…ごめ、なさい…」

 俯きながら小さな声でごめんなさい、と繰り返す悦に、傑は押し黙ったまま抱き上げていた体をゆっくりと床に下ろす。ぎちぎちの内壁をいっぱいにしていたモノを抜き取り、微かに震える悦の肩に触れようと伸ばされかけた手が、空中で止まりぎちりと拳を握った。


「なんですぐ俺に…いや、違うな」
「っ…ごめ…」
「違う。悪いのは俺だ」

 床に下ろされた傑の拳から、低い声と共に小枝が折れる様な音が響く。
 あまりに強い力で握られた為に、圧力に耐え切れず骨が砕けた音だった。

「本当にごめん」
「ちが…だって、俺が先に…だから…」
「お前が苦しんでることにも気付かないで傷つけた。…最低だ」
「すぐ、る…」

 爪が皮膚を破り血が滲む傑の拳に、悦はそっと指先で触れた。ぴくり、と震えた拳が骨の軋む音を立てながら開かれ、見た事が無い程辛そうな顔をした傑が悦の肩を抱きしめる。
 肩口で囁く声は、まるで迷子になった子供のように弱々しく掠れていた。


「…どうやって償えばいい?」
「傑…」
「何でもする。何でも。…なにか、させてくれ」


 …淡々と紡がれる言葉に、悦は世界の終わりを見た気がした。

 ここで悦がそうして欲しいと願えば、傑はきっと躊躇い無く全てを終わらせる。『世界の全てを敵に回したとしても』、それは傑にとっては比喩や誇張などではなく、確実に実行できることの1つに過ぎないのだ。
 人間という生き物を絶滅に追い込めるだけの、絶対的な力を持った畏怖すべき化け物。どんな理由があったにせよ悦が彼を裏切ったのは事実だ。怒りも悲しみも当然あるだろうに、優しい怪物は悦を許すどころか悦に許しを請うている。

 世界中の人間の命と引き換えに。


「…もっと強くして」
「……」
「ごめん、傑…」
「…謝るな、頼むから」

 祈るような声音で呟かれた声に、悦は困ったように笑って傑の背中に腕を回すと心の中でもう一度、ごめんなさいと謝った。

「ごめん、悦」
「うん…」
「気遣ったりなんかしなくていい。俺は人間じゃないから、大抵の事は平気だ。何をしても、何をされても愛してる」
「……」
「だから……さっきまで嫉妬に狂ってた男の言うセリフじゃねぇな。ごめん」
「すぐる、」
 寂しそうな瞳のまま自らを嘲笑する傑の頬に、悦はそっと手を伸ばす。
 顔を上げた傑に額が触れ合いそうな距離で囁かれた声は、どの睦言よりも甘かった。


「…キス、して」










 リビングのソファの上にうつ伏せで寝転がりながら、悦は退屈そうな顔でテレビに映し出された男女がくんずほぐれつしているのを眺めていた。

「…あんなんの後で潮吹くとかどんだけだよこいつ等。血も止まってやがるし」
「男優の方が小物だからだろ」

 横になった悦の腰を服の上から掌全体を使ってマッサージしながら、傑はどうでもよさそうに答える。
 ローテーブルの上に乗っていた湿布を取ってセロファンをぺりぺりと剥がしつつ、悦はその言葉に背後の傑を肩越しに睨みつけた。


「っつーかさ、解すくらいはしろよ」
「これの真似してみたい、って言いだしたの悦だろ」
「自分のモノのこと考えろ馬鹿。使いモンにならなくなったらどうしてくれ…ぃッてぇ…!」
「悪い」
「ンの野郎…絶対今のわざとだろ!」

 痛む箇所を強く圧されて涙目になりながらばたばたと足を揺らして抗議するが、傑は涼しい顔で悦のシャツを背中の半ばまで捲り上げると、悦の手から湿布を抜き取る。

「はい、いきますよー」
「あ、ちょっと待っ…うぅー…!」

 やる気の無い声と共に冷たい湿布が腰にべったりと張りつけられ、悦は手の中に顔を埋めながらじたばたと暴れた。どうもこの湿布というやつは苦手なのだ。自分でやるならまだしも、他人に張ってもらうのは特に。

「つめた…っ」
「湿布だからな。どっか他に痛いところは?」
「平気。大分楽になった」

 ひらりと手を振ってそう答え、悦は伸ばしていた足を持ち上げスペースを作った。悦の体をまたいでソファに膝立ちになっていた傑がめくったシャツを直しつつそこに腰かけ、膝の上にばたんと落ちて来た悦の両足をぽんぽんと叩く。


「…で、どーだった?」
「ん?…あぁ、なんか意外と普通」

 ぱたぱたと足を動かして傑の膝を叩きながら、悦は頬杖をつきつつ相変わらずのAVを流し続けているテレビを見て溜息を吐く。
 仕事仲間から回って来たこのAVのシナリオは、仕事帰りに強姦された女が男に嫌われるのを怖がって黙っていたが、男がそれを浮気だと勘違いして逆上し乱暴に女を抱きつつ問い詰める。最終的には真相が解って仲直り、そして御約束の激しいSEX。という極めてベタなものだ。

 普段は温厚で女を誰より大切にする男が嫉妬に狂って、という所が気にいって試してみたのだが、実際にやってみると大して刺激的でも無い。


「俺の方はあり得るけど、傑があんなんなるわけねーよな」
「あー…まぁな」
「どうする?実際に俺が浮気してて、それが解ったら」
「別に何も。どれだけイイ男かにもよるけど、1ヶ月もすれば飽きて戻って来てくれるだろ?」
「…確かに」
「それならいいよ。嫉妬して欲しいならあのくらいのコトならいつでも出来るし、束縛してくれっつーなら監禁してやるし」

 こともなげに答えながら、傑は膝の上で悦の足がばたばたと暴れるのに文句も言わずに広げた自分の右手を眺めた。
 先程の“嫉妬プレイごっこ”で複雑骨折の上、歪んだまま治癒された長い指はまだ微妙に関節が曲がっていて、ぱきりぱきりと乾いた音を立てながらその歪みを戻していく。

「いててて」
「…それどーなってンの?関節ずれてるわけじゃねぇんだろ?」
「曲がったままくっついてっからもっかい折って治してる。余計なトコについた骨が砕けて刺さってくるのがちょっと痛い」
「何も骨折らなくてもよかったのに」
「あいつが壁殴って血ィ出してたから、俺は複雑骨折ぐらいしとこうかなと」
「どんな対抗意識だよ」


 けらけらと笑いながら悦はうつ伏せからゆっくりと起き上ると、酷使されて痛む腰に手をやりながら体を反転させ、傑の膝を枕にしてソファに仰向けに寝転がった。

「今度やるならもっとハードなの参考にしようぜ。温い」
「メイド服着て『おかえりなさいませぇー』なんて言うの絶対嫌だからな、俺は」
「じゃあ俺がメイド服着る?『ご主人様お帰りなさいませー』」
「ちょっ…笑わせンなよ腰痛いんだから…!」
「『ご飯とお風呂どちらになさいますか、それともわ・た・し?』」
「だからッ…そのオペラ歌手みたいな声やめろって!」

「っつーか後半の新妻だったな」
「あ、確かに」
「…メイド服がダメなら、新妻のほうで裸エプロンはダメ?」
「ンな真似させられるくらいならいっそ全裸になってやる」



 Fin.



AVのプレイに挑戦してみよう!なお話。
どうにも傑に嫉妬させるのは(諸々の設定的に)難しいので、お遊びテイストでこんなん如何でしょう。

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