…欲しいよ。
もっと。まだ。いくらでも。
指先が離れた瞬間から焦がれる。
足りない。
嗚呼、いっそこのまま
溶け合ってしまえれば、なんて。
そんなことを考えるのは。
「ん…は、ぁ…」
「……」
「ッぁ…!」
バチン、と音を立てて手すりに乗っけられた太腿に絡みついた冷たい感触に、俺は付け根まで絡む深いキスに流されかけてた意識を戻した。
「ゃ…すぐ、…ッんぅ!」
はぁ、って息吐きながら出した声はすぐにまた飲み込まれて、唯一自由だった腕に絡んだベルトが手すりに回されてキュ、と締められる。
広い背もたれとやたら頑丈な造りだけが取り得、って感じのデカくて重い椅子。その太い手すりに黒革のベルトで両手両足をそれぞれ開いたまま括りつけられて、ご丁寧にも目には目隠し。
忙しくてなかなか会えなかったのと、最近なんか温いのばっかで「こういうの」がご無沙汰だった所為か、椅子に座らされてこんな恥ずかしいカッコで固定されるまでほとんど抵抗出来てない。
「ちょ…この目隠し、…んンッ」
せめてもの抵抗に目隠し取れって言おうとしたら、いきなり冷たいモノが右の乳首に触れた。冷たさに驚いてビク、と震えた足の内側を爪で撫でられながら左にも同じように冷たいのが貼り付けられて、傍で何かのスイッチ入れたみたいな、パチンて音が響く。
「な、に…っ」
「…イイコト」
それまで黙々と(大人しかったのは口だけだけど)、準備してた傑の声がいきなり鼓膜に滑り込んだ。さっきも聞いたパチン、て音がもう一度して、
「ぅ、あッ?」
低い振動音みたいな音と共に、乳首に貼り付けられた冷たいモノからビリ、と全身を走った、何か。
「ッひぁ、あッ、なに…ッん、だよ…ふぁっ…これぇ…ッ!」
「何って、お前が言ったんだろ?これ使ってみたい、って」
くすくす笑いを含んだ傑の声に囁かれて、俺は晩飯前に傑の寝室のクローゼットで見つけた真っピンクのラジオみたいな機械を思い出した。
使い方聞いてもなんとなくはぐらかされて、よく解んねぇけどとりあえず使ってみたい、とは確かに言った。そのまま忘れてるんだと思ってたのに、どうやら傑は今あの真っピンクラジオを使ってるらしい。
「ぁ、はぁあッ…!ふ、ぁ…ん、くすぐ、った…ッ」
「なんつったっけな…低周波……あー、駄目だ。思い出せねぇ」
「てい、しゅうは…?っぁ…!」
「簡単に言やァ電気責め。ここ、ピリピリするだろ?」
「は、ぅ…っゃめ…あぁあッ!?」
ここ、って言いながら乳首に貼り付けられたのをぐいっと押さえつけられて、くすぐったいのと気持ちいいのとが綯い交ぜになった刺激に身を捩った瞬間、バチンッて音と共に目の前で火花が散った。音と一緒に走った全身の激痛に一気に血の気が引くのが解る。
「な…に…今、…」
「あぁ、結構キツいの流れたな。…痛い?」
普段なら当たり前だろって噛み付くところだけど、とてもそんな口を利く気にはなれなくて、動かせない手に絡んだ傑の指先を握り締めた。苦痛には職業柄慣れてる(慣れてるだけで好きじゃない)けど、こんなのは経験したことが無い。
おまけにずっと目隠しされてっから何がどうなってるのかも、どうしたらさっきのキツい電流が流れるのか解らなくて、微妙に痺れてる体を強張らせる俺に傑は俺の頭をくしゃりと撫でながら囁いた。
「安心しろよ。SMの趣味はねぇから」
…絶対嘘だ。
ジー、と低いような高いような音が鼓膜から頭ン中を掻き回す。
「ひぁっ…ぁああぁあっッ…!」
イかされたばっかで敏感になってる先端に押し当てられる、丸くて冷たいモノ。円を描くようにカリの辺りを苛めてから尿道口に押し当てられた先端の小さい丸が、ゆっくり中に埋められてく。
冷たい鉄の感触がモロに解るそれは焦らすようにゆっくりと進められて、ただでさえイったばかりで細い管ン中は全部が性感帯みたいになってるのに、時々裏筋をぐりぐり押して先の球体の場所を確認しながらギリギリ奥まで突っ込むもんだから、全部入った時にはそれだけで息も絶え絶えな状態だ。
「悦。…えーつ。まだ寝ンなって。こっからが楽しいんだから」
「ふぁ、あ…っ」
乳首の電極からずっと流され続けてる弱い電気の所為で、どこも触られてなくても体の芯からじわじわ快感に犯されてる俺の頬を軽くぺちぺち叩いて、傑は半開きになった俺の唇を指先で割った。
「…喰い千切ンなよ」
くちゅ、て舌を指に弄ばれる感触に夢中になってた俺には耳元で囁かれたその言葉の意味が解らなくて、でもどういう意味だろう、なんて考えは直後に頭から吹き飛んだ。
「ひ、ィ゛ッ!?…ぁ、あ゛ぁああぁああっ!」
多分尿道に突っ込まれた電極に電気が流されたんだと思うけど、体中弄り回されて意識も虚ろな上に、目隠しまでされた俺には何が起こったかなんて解りやしない。
バチッ、て頭ン中で真っ白な火花が飛んだと思った直ぐ後に襲ってきた、散々溜めさせられた後にイったみたいな快感。いつもならすぐ引くその快感は、でも延々と引き伸ばされて終わりが無い。
「初の電気責めのご感想は?」
「ひゃ、めッ…はッ、はぁっ…あ、たま…おかひ、く…あ゛ーっ!」
ドロドロに蕩けた意識をぐちゃぐちゃに掻き回す電気責めに、椅子に絡まった縄をギシギシ鳴らして叫んだらそれまでちょっとピリピリした疼痛を含んでた電流が、弱まったのか強まったのか知らないけど丸ごと快感に摩り替わった。
尿道責めってだけでもヤバいのに、そこに神経を直接嬲るような電流まで加わって耐えられる筈が無い。体を椅子に縛り付けられてちゃ逃げることも出来なくて、強制的に与えられるいっそ暴力じみた快感に、頭の中が真っ白になる。
「あぁあッ、あ゛ぁぅッ…か、はぁ…!はぅうっッ」
「この辺が1番イイ?ちゃんと息してろよ」
「やぁあぁあッ!ぁひ、ぃッ…だめ、それっ…も、抜いてっ…ぬいてぇ…っ!」
少しだけ引っ張り出して、また元の場所まで突っ込むってのを緩やかに繰り返されて、ひっきりなしにイってるような気持ち良さに目隠しの布をぐっしょり濡らしながら必死に首を振る。
はく、はく、て情けなく荒い呼吸を繰り返す俺に傑はちょっと間を置いて、そして不意に目の前を真っ黒に染めていた布がしゅるりと引き抜かれた。
「ああ゛、ぅッ…も、もぉ…ッあ!ぁ、あ゛、ンあァあ!おねが、だからぁ…っ!」
「しゃーねぇな…そこまで言うなら抜いてやるよ」
「あぁッ!」
泣きじゃくりながら懇願したらやけにあっさりと頷いて、傑は本当に尿道に突き刺さった細い電極を抜いてくれた。途端に塞き止められてた先走りがどろり、と溢れてきて、じんわり広がる甘い痺れに俺はぐったりと体の力を抜く。
「はっ…はぁっ…」
…あれ?
やっと止んだ快感に弛緩しかけた体の奥からじくじく何かが染み出してきて、膝を椅子に縛り付けられた足先がひくん、と震えた。思わず傍らを見上げるけど、傑は電極を放って俺を見たまま何も言わない。
「…っ…ふ…」
「……」
「…ぁ、あ…っああぅ…!」
「……」
頭が変になりそうな快感から解放されたのは一瞬だけで、余韻だと思ってた痺れはあっという間に酷い疼きに変わった。散々電流を流されて電極に広げられてた場所が熱くて熱くて、体中の柔いところを羽で撫でられるような感覚がじくじくと体の芯を犯してく。
「す…ぐる…っ」
「ん?」
「なんか、体…おかし…ッあぁ!」
「なんで?電極取ってやったろ?」
解ってる癖に、意地悪な傑は素知らぬ振りで軽く首を傾げると、溢れた先走りでどろどろに濡れた俺の奥に指をつぷりと埋める。
「ふぁ、あッ…そ、じゃなく、てっ…ひぁぅッ!」
「そうじゃなくて?…何?」
「はァ、あっ、あぁんンッ…だから、ぁ…っ!」
ただでさえさっきまで苛められてた所が疼いて仕方ないのに、前立腺を微妙に外して中をゆっくり解されながら、耳元であの声を流し込まれてまともに喋れるわけ無い。
「傑っ…ぁ、あッあぁ゛…っッ」
「だからなんだって聞いてンだろ、さっきから」
「ひァあッ!ぁ、あッ、あぁっッ…あぅうッ」
そっちが喋らせてくれないくせにちょっと不機嫌そうに眼を細めた傑の指が、それまでずっとギリギリで触って貰えてなかった前立腺をピンポイントで押し上げてきて、脊髄から全身に走る快感に俺はぎゅっと手すりを握り締めた。
でも、いつもならここからぐちゃぐちゃに弱い所を抉られて掻き回されて、イったって泣き喚いたって許してくれないのに、傑はすぐに指を外してまた少しずれた所を引っ掻くように抉るだけ。
「はぁあァっ…あぁ、ぅッ…んンぅう…ッ!」
いつもより温い手つきは疼いた体を余計火照らせて、ぐちゅ、ぬちゅ、てヤらしい音を立てながらとろとろになるまで解された中で指を動かされる度に、触れられてる所が溶けそうになる。
じんわりした疼きにずっと苛まれて、頭ン中にはもう、余計なこと考えられなくなるくらい気持ちよくして欲しいって、そんな煩悩塗れなことばっかり。
「は、ぁあッ…!すぐっ…も、欲し…ッ」
「上手にオネダリ出来たらな」
椅子に縛られてちゃ縋ることも出来なくて、椅子をギシギシ軋ませながら荒い息の合間に懇願した俺に、傑は笑みを含んだ甘い声で囁いた。出来るよな、って低く掠れた声で追い討ち掛けられて、理性を溶かされた俺に出来るのは壊れた人形みたいにがくがく頷くことだけ。
「んンぁっ…すぐ、る…のっ…いれ、て欲し…ッはぁ、あぅう…!おねが、も…ぐちゃぐちゃ、にし…て、ぃ…からぁ…ッっ」
「ぐちゃぐちゃに、ね」
傑の肩口に擦り寄りながら、目の前が真っ赤に染まるくらいの羞恥を堪えてなんとか言い切った俺に、傑は小さく笑ってベルトのバックルを外した。
「…まぁ、合格ってことにしといてやるよ」
「ひぃッ、ぁ、あぁ゛あぁあッ!」
ズぐ、と腰に響く重い快感に足が震える。熱い傑のモノは指じゃ届かない奥の奥まで届いて、前立腺を巻き込みながら柔肉を掻き混ぜられる快感に目の前が真っ白になった。
「あぁあぁッ!ぁ、あっ、ゃあぁッっ…も、イっちゃ…ッ」
「ん…イキそ?」
「はぁぅうッ…!ん、んッ…イキ、た…ぁあぁあッ…!」
「だろうな。凄ぇ締め付け」
ぱじゅっ、て恥ずかしい音を立てながら一気に奥まで叩き込んだ傑は、そう言いながら滲む俺の眼を覗き込むようにして前髪を優しく梳いて、
「…でも、まだダメ」
「ひィいぃいッ!?」
甘く掠れた残酷な声と同時に、一気に尿道に押し込まれたのは俺と1番相性がイイ強さで電流を流された、あの電極。
「あぁ゛ぅうッ、ぁ!あぁっ!あぁーっッ」
「はッ…すっげ…」
「はぁひぃいッ!…ゃぁッ、も、ゃだぁあぁ!すぐ、傑っ…んあぁぁあ!」
細い管の中で暴れまわる電極が精液と先走りを混ぜるみたいにビリビリ振動して、前後の性感帯にモロに響く快感に何度も空イキを繰り返しながら必死で哀願するけど、傑はゆっくり腰を使いながら頬に触れるだけのキスを落として薄く笑う。
「ぐちゃぐちゃにして欲しいんだろ?…望みどおりにしてやるよ」
「あぁあーッ!ゃッ、やだ、傑っ…許し、ゆるしてぇ…ッ!はぅうぅっ!」
泣きじゃくりながら必死でした哀願はあっさり無視されて、ギリギリまで引き抜かれてたモノで奥まで一気に貫かれる快感と衝撃に息が止まった。
椅子の手すりを握り締めてやり過ごそうとするけど、とてもそんなモンで受け流せるようなレベルじゃない。尿道の中を掻き混ぜる電極の隙間からこぷ、と溢れた精液が伝うだけで気が遠くなりそうで、イってる最中に中を掻き回されて無理矢理イかされてるみたいな快感に泣きながら、「ゆるして、おねがい」って言葉を壊れたように繰り返した。
「ひィあ、ぁッ、ッ!すぐ、ッはぁ…傑、ッんン…すぐる…ッ!」
「ん?」
いくら哀願してもわざと甘ったれた「やぁだね」の一言で無視する傑に縋りたくて、縛られた腕を無理に動かして暴れながら何度も名前を呼んでたら、手つきだけは優しく片手で俺の腕を抑えた傑が、覗き込むように首を傾げる。
進行形で俺を嬲ってンのは傑だけど、俺を助けてくれんのも傑しかいない。舌ったらずな声で何度も名前を呼んでたら、傑は小さく笑って俺の腕の縄を解いた。
「マジ、反則だってその声」
「はひっぃ…ッ!すぐ、すぐるっ…あぁぅ!ぁ、あッも、へん、変にっ、んン゛ッ…へん、なっちゃ…っからぁ…ッ!」
「へぇ?そんなに気持ちイイ?」
「ふぁあぁッ…っ、もち…きもち、ぃ、ッ…ぁンんっッ!」
苦しいくらいの快感なら傑に苛められて何度も経験してるけど、こんなのは初めてで。ひっきりなしに頭から爪先までじんわり犯す電流と、それの所為で半分痺れた中を掻き回されンのが気持ちよすぎてもう何が何だかわからない。
傑が何て言ってンのかもほとんど解らないまま、ひたすらその言葉を反復してたら、ちょっと動きを止めた傑がそっと俺の中に突き刺さった電極に手をかけた。
「ゃッ、嫌…ぁあ゛ァああッ!」
「ッ…悦っ、」
意地悪な傑のことだから、また電極をピストンしたり、奥まで突っ込んで掻き回したりされると思った俺は、ずるるっと引き抜かれた電極に思いっきり中を引っかかれる快感に咄嗟に傑の襟元に縋りついた。
自分でも解るくらい締めつけられた傑が軽く息を詰めて、それから直ぐにちょっと焦ったように俺の名前を呼ぶのが聞こえて、
バツンっ。
「弱ぇつっても電気だろ?下手に暴れると危ねぇから、いきなり激しく動いた時に動き止める為に、ちょっと強めの電流が流れるよーになってンの」
「…ちょっと強め?」
まだ鈍く痛む後頭部に傑が持ってきた氷水入りの袋を押し当てながら、俺は枕から顔を上げて、傑を横目に睨み上げた。
「野郎1人の意識ふっ飛ばす電流のどこが”ちょっと”なんだよ!この鬼畜外道!」
叫びながら全力でぶん投げた枕を傑はひょいと体を反らして避けて、しかもムカつくことに顔の横を飛んだ枕を片手で無造作に捕まえると、何でもなかったかのようにパンパンと枕を叩いて膨らましてからベッドの隅に置きながら首を軽く竦める。
「だからあんだけ念入りに縛ったンだよ」
「じゃあ何で解くんだよ、縛っとけばいいだろ!」
「悦が俺に抱きつきたがってたから」
コイツは、またっ…真顔でそーゆーことを…!
しれっとして答える傑に「自惚れンな」って叫んでやりたかったけど、外見だけはバカみたいにいいコイツにそんなこと言っても意味無いし、何より俺も全力で否定できなかったから、せめてもの反抗に反対側を向いてやった。
「もういい。結局イケなかったし」
「フェラしてやったのに」
「ッ…煩い!」
そういえば妙にすっきりはしてるけど、そういう問題じゃない。そりゃもう怖いくらい気持ちよかったけど、俺はその真っ最中に気絶させられてるんだし、しかも、…その、フェラの時もシャワーの時も傑は起こしてくれなかった、し。
「悦ー?俺も寝ていいっスか?」
「床で寝ろ、お前なんか」
「……」
そっぽ向いたままで吐き捨てるように言ったら、傑はちょっと黙り込んで、それから軽く溜息を吐いた。振り返りそうになるのを我慢してそのままでいたら、ベッドに腰掛けてた傑が立ち上がった気配がして、床に何かを置くようなガチャンて音が大きく響く。
「ちょっと銃借りるぜ、悦」
「え?」
いきなり枕の下の銃をするりと抜き取られて、思わず傑を振り返った俺は、しまったと思う前に目を見開くハメになった。
「ちょッ…何してんだよ!」
「何って…廃棄処分」
当然のように答えた傑の銃口はぴたりと床の上、俺を散々苛め抜いたあのピンク色の旧型ラジオみたいな、低周波なんとかっていう機械に向いている。
廃棄処分って…!
「悦以外に使う予定なんかねぇし、悦が嫌ならこんなモン邪魔なだけだから、いっそぶっ壊しちまおうと思って」
「…べ、つに…壊さなくても…」
「何で?気に入らねぇんだろ?」
真顔のままで、また悦に痛い思いさせたくねぇし、なんて歯の浮くような台詞を吐いた傑の瞳は俺を見て微かに笑ってて、俺は奥歯をギリっと噛み締めた。
「あんな何も解ンなくなるような電気責め、悦は嫌いなんだろ?なら要らねぇよ」
わざと「電気責め」の辺りをヤらしい声音で言った傑が、微妙に不完全燃焼な俺の淫乱な体に火をつけようとしてるのは嫌ってほど解る。
…解る、けど。
パンッ。
「…悦?」
「……」
弾丸が打ち抜く寸前でピンクのラジオを横から攫って、傑から守るみたいに膝の内側に抱え込んだ俺に、傑が銃を下ろしながらわざとらしく首を傾げた。
「壊さなくていーのかよ、悦?」
「煩い」
その嫌味なくらい綺麗な顔を睨みつけながらその襟を引きずり下ろしてベッドに膝をつかせて、ピンクのラジオをベッドの下に滑り込ませながらシーツに寝転がったら、わざわざ俺の顔の両脇に手をついた傑が上から笑いながら見下ろしてきた。
悪戯に成功したガキみたいに嬉しそうな顔、しやがって…ホントにこいつは。
「お前、マジで性格悪ぃ」
「何がだよ」
「…そういう所」
横目で睨み上げながら低音で言ってやっても傑は怯むどころか楽しそうに笑って、覆い被さるように耳元に近づいた唇が、俺にしか聞こえないような甘く掠れた声で「クセになった…?」なんて囁いてくるもんだから、ホントに殺してやろうかと思った。
「なるか、バカ!…もういい寝る」
「…じゃ、俺も」
俺の裏拳をひょいと避けた傑はくすくす笑いながらそう言って、俺のすぐ後ろ、体は触れないけど体温は届くっていう微妙な距離を取って寝転がる。多分、俺からすり寄るのを待ってるんだろうけど、そう何度も思い通りになって堪るか。
傑がかけてくれたシーツを顔の半分近くまで引っかぶりながら、俺は絶対に振り返らないと自分に誓って眼を閉じた。
「…月1以上の頻度で使いやがったら速攻で別れてやるから」
「……了解」
Fin.
Millllllllion!!
…ということで20万もオーバーしてしまいましたが、100万打本当にありがとうございます!!