タイルの壁に背中を押し当てられて、片足を持ち上げられて。
身動き取れないのをいいことに、食われそうな濃厚なキスをトイレの隅っこでかましてくれてる俺の恋人は、今日も絶好調で変態的。
「んンっ…ちょ、ゃ、めっ…傑ッ」
「いーじゃん、誰も来ねぇって」
やっとキスから解放されたと思った途端、鎖骨に這わされた舌先にぞくぞくって背中を震わせながら傑の肩を押し返す。ただでさえ人気の無い武器庫の更に端っこのトイレなんて、そりゃあ人は来ねぇよ。俺が心配してンのはそこじゃ無い。
このまま突入したら確実に駅弁か立ちバックだろ?たまには別の体位も、って考えは解るし俺も大歓迎だけどさ、やっぱりその手の体位は体がキツいわけよ。
「…1回だけだからな」
「んー」
「ッ、傑!」
「あー、ハイハイ。善処しマス」
「はぁ、あ、ぁッ…んンっ、痛…ッ」
カリ、って乳首の根本に強く歯を立てられて一瞬だけ痛みに体が引きつるけど、調教されてそこだけでもイケるくらい敏感な俺にはその痛みも快感。
嫌になるくらい淫乱な体はあっという間に出来上がり状態で、苦しさに耐え切れずに自分からベルトのバックルに手を伸ばすと、乳首弄ってる傑がちょっと視線上げて笑いやがった。
その傑の頭の後ろに、影。
「…え?」
ここは武器庫で、しかもその隅っこのあるか無いかも解んねーようなトイレに人なんて来るわけない、って前提だった俺の頭は予想外の状況にフリーズした。
「ンだよ、覗き?」
「…俺が覗きだっつぅなら、お前等は露出狂じゃねェか」
おどけた傑の言葉に、片手にバケツを持って目元が見えねぇくらい深くキャップを被った男が首を竦める。絶対それ前見えてないだろ、って思うような格好だけど、コイツはいつもこうだ。
「…幽利?」
「はィな。お楽しみンとこすいませんねェ」
独特の訛りのある口調でヘラリと笑って、武器医療品庫管理兼雑用員の幽利は被ってたキャップを取った。その目元はバンダナで目隠しがしてあって視界を塞いでるけど、幽利は持ってるバケツを揺らしながら杖も無しにすいすい歩いてくる。
「何、掃除?」
「あァ。でも、これじゃァ掃除なんざできねェなァ」
「別に?してきゃァいいじゃん」
おいおいおい、傑サン?
冗談なのかマジなのか知らねぇけどめちゃくちゃナチュラルに勧めるから、身動き取れない俺は冷や冷やモンなわけ。盲目じゃあ見れないだろってことかもしんねーけどそういう問題じゃねぇし。
「俺ァ覗きの趣味はねェんだよ。散歩でもしてっから、終わったら呼んでくれっかい?」
俺の願いが届いたのか、幽利は首を竦めてそう言うと踵を返した。そうそう、普通はそーだよな。さすが常識人、どっかの傑とは大違いだ。
…でもその常識人は、次の瞬間俺の賞賛を見事に裏切った。
「んじゃァ、覗きじゃなくて参加はどーよ?」
「参加て…ンだァ、二輪刺しでもしよーってのかィ?」
「お前尺好きだろ?」
「そりゃぁ…ってお前、さすがにそれはそちらサンが黙ってねェだろうよ」
「偶にはこーいうシチュでヤんのも面白ぇじゃん。なァ悦、気持ちイイこと好きだろ?」
いやいやいや、待てって!
確かに気持ちイイことは好きだけどここでそれってことはつまりアレでソレなわけだろ?
「…ンじゃァ、お言葉に甘えて」
「へ?」
いきなりぐるって体を裏返されて壁に手ぇつかされて、所謂立ちバックの態勢にされて、壁と俺の体との隙間に滑り込んだ幽利に頭下げられても、正直俺は「何が?」って感じ。
まぁ、次のセリフで嫌でも解ったけどさ。
「頂きます」
「確か、千里眼とか言ったっけか。俺の眼はそーゆうモンでしてねェ。裸眼でいちゃあ見たくねェもんまで見えちまうんでこんな格好してるんだが、どっかの馬鹿が盲目だとか噂立てやがって。きっちり見えてますよ、ってんだ」
紐を解いて肩まで届く青黒い髪を下ろした幽利が、忌々しそうに呟く。
その「見たくないモン」ってのが何なのかは解らないけど、でも、
「ん、ぁッ…咥え、たまま…ぁあッしゃべ、んなァ…!」
下半身だけ剥かれた人の足の間に陣取って、モノしゃぶりながら言う話では、絶対に無い。
根本を指で扱きつつ竿に舌を這わせて喋っていた幽利は、俺の言葉に軽く首を竦めると先走りを溢れさせてる先端にかぷっと噛み付いた。
カリを甘噛みしながら先走りをじゅるじゅる音立てて吸い上げて、尿道を舌先で抉ってくるそのテクに一瞬目の前が白くなる。でも、さすが尺好きなんて関心してる余裕なんて俺にはもう無い。
「あァあっ、あ、ぁんんッ…は、ひ、ぁっ…あ!」
「イキそう?」
「んンンッ…はぁ、あ、ぅぅあぁ゛…っ」
ガクガク足震わせてる俺の腰を後ろから抱いて、俺の中に突っ込んだモノで焦らすように中の襞を掻き混ぜてくる傑に後ろから囁かれて、がくがく頭振って頷いた。
前は幽利、後ろは傑にそれぞれ容赦なく責められて与えられる快感はもう本当にスゴくて、我慢できるようなレベルじゃない。汗でずるずる滑る手で壁に縋りつきながら舌突き出して空気貪り喘ぐ俺は、もう完全にコイツ等の玩具。
「ちゃんと幽利に言えよ?イキます、って」
「ァあぁ゛あッ!は、ぁ、…あぁぅうっ…ッっ」
「は、ふぅ……んんっ…」
「あぁァッっ、吸わな…んぁ゛あッっ…ぁっ、ひっぁ、も…ムリ、ぃいィッ…!!」
尿道をぐりぐり抉りながら先走りを啜られて、後ろは傑にカリで前立腺ゴリゴリ擦られて、掠れた声で鳴きながらどくって吐き出した俺の精液を、待ってましたとばかりにでかい口開けて全部受け止める幽利。
「はひ、ぃ…っぁ、あぁぅう…」
「美味い?幽利」
「んん、最高。…ちょい薄くなっちまってンのが気にくわねーけど」
脊髄から腰下まで弱い電流が走ってるみたいな痺れに目の前がチカチカしてる俺の腰を抱いたまま、ゆるくピストンを繰り返してねちゃねちゃ厭らしい音を響かせてる傑と、最後の一滴まで搾り出すみたいに裏筋扱いてくる幽利の会話に眩暈がする。
「しゃーねぇって。5回目だし」
「違ェよ、コレで6回目だ。…あー、鬼利のしゃぶりてぇ。吐くくらい一杯にされてプラグ突っ込まれたまま放置されてェ…」
「プラグ?お前みたいなドMにはその辺のブラシで十分だって。…なァ、悦?」
「あっ、あぁ…あ、ひッぃいぃ!」
名前呼ばれながらごりりっ、て音がしそうなくらい前立腺擦り上げられて、押し出された先走りがぴゅぴゅって幽利の顔にかかる。
あ…目隠し、汚れ…
「んぅぅ…っは、あぁ…ごめ、ゆ…りぃ…っぁ、ふぁあン…ッっ」
「構わねェさぁ。なんなら顔射してくれてもいーんだぜェ?」
くすくす笑いながらモノにキスしてくる幽利の眼は目隠しで閉ざされて、その言葉がマジなのか冗談なのかは解らない。
まぁ、目隠しが無くたって眼が潤みまくってる今の俺には解らなかっただろうけど。
そんなことを考えてたら、それまで黙ってた傑がいきなりずんって深いとこまで入ってきて、一瞬呼吸が途切れる。
「リクエストだ。お答えしよーぜ、悦」
「ぁ゛うぅっ…ひ、もっ…や、やだ…ぁあッ」
深いトコに突っ込まれたまんま腰を動かされて首を振る俺に、傑は宥めるみたいに首筋にキスして緩めてた腰の動きを激しいものに変えてく。
腰を掴まれたまま腹側の壁に擦りつけるみたいに突き上げられて、中から広げるみたいに抉られて、今まで手加減されてた分いつもの腰使いに目の前が真っ白にスパークして、もう何がなんだか解らなくなる。
「は、ひぃ、イッ…はぁぅうっ、…も、もぅっイ、くっ…あ、はぁッ…イっちゃ…!」
「っん…ッ」
「ぁっ、はぅ、も…ぁ、あっ、ひぁああぁッ!」
滅多に声を出さない傑の良さそうな声に体温が一気に上がって、イキ過ぎて勢いの無くなった精液が零れるのと同時に、体の奥にぶちまけられる熱くて愛しい欲の証。
あー…幸せ、かも。
「ったァく、酷ぇよなァ。人を道具に使いやがって」
「楽しかったろ?」
「まァね。にしても無茶し過ぎじゃねェのかィ?死んだみてぇに眠っちまってるぜ、旦那」
「気持ちよかったんだろ?それだけ」
「はッ、相変わらず大した自信家だなァ。…でもま、俺としても尺よりはお前の精液ぶち込まれる方―――がッ!?」
「っ…え、悦?」
「…やんねーもん」
「はぃ?…寝ぼけてねーかお前」
「コレ、はぁ…俺ンだから…誰にもやんねーの」
「「……」」
「……まぁ、あれだ。取りあえずお疲れサン」
「も、もう二度とてめェの誘いにゃ乗らねェ…!(右ストレート直撃)」
Fin.
バカッポーのエッチに参加させられた挙句、寝ぼけた悦に鉄拳制裁まで喰らう幽利が一番損をしましたってオチ。
100216加筆修正済。