恍惚折檻



「ひあッ、ぁ、あぁああ…ッ!」
「……イった?」
「ッっ…ぁ、ごめ…なさ…」
「いいから。こっちおいで」
「…ひ、ぅ…ッ」
「嫌、じゃなくて。…ほら、悦?」










 両手両足に繋がれた太い鎖が、耳元でガシャガシャ音を立てる。
 朦朧とした俺の意識にそれは耳鳴りみてーに響いて、ひくん、て指先が震えるのを感じながら俺の口は何度目か知れない哀願の声を漏らした。

「ふぁ、あぁあ…っ…も、それ…や、だぁあ…ッ」

 身動き取れない状態で服の上から散々舐めたり抓ったりされた乳首を、直に弄られ始めてからもう30分は絶対経ってる。
 直、って言っても弄ってるのは指とかローターとかじゃなくて、傑が現在進行形で俺を苛めてる道具は、筆。

 どっから持ってきたのか知らねーけど、毛足の長い筆で擽られたり撫でられたりをずーっと続けられて、イクにイケない生殺しの快感に俺はもう抵抗も出来ない。

「だーからさっきから言ってンだろ?ここでイケたら止めてやる、って」
「そ、な…ッぁふ…でき、な…っッ」
「じゃ、ずーっとこのまま」



 無理だ、っていくら首を横に振っても傑は許してくれなくて、1度止まってた筆がまた動き始めた。
 形をなぞるみたいに寝かせた穂先がゆっくり乳首の周りを這って、じれったい感触にどんどん敏感になってくそこを今度は立てた筆の先でくちゅくちゅくすぐられると、甘い痺れに全身覆われて頭ン中までぼやけてくる。

「はっ、はぁあ…ぁ、んゥう…っ」

 いつものキツい責めとは違う、ずっと弱い電気でも流されてるみたいな快感じゃ気絶も出来ないから、俺は傑が飽きるまでこの温い拷問に耐えるしかない。


「ひぁ…っあぁあぁぁ…ッ、はぁぅ、ぅうン…ッっ」
「ぐちゃぐちゃになってるぜ、コッチ。この筆気に入った?」
「ぁッあぁンっ…ふぁ、はぁあ…ッっ」

 筆の動きはそのまま、体中痺れるくらい嬲られてぐしょ濡れになってるモノをくちゅ、って傑の手に握られて、久しぶりの明確な快感に体が喜んで跳ねあがった。
 でも、傑がそんな楽な逃げ道なんて許してくれる筈も無く、すぐに離れてった手は溢れた先走りで濡れた内腿とか薄く浮いた腹筋の筋とかを爪でゆっくり撫でるだけ。


「はぅうっ…ぁふ、…っすぐ、る…も、これぇ…ヤ、だぁ…ッ」
「…あァ、物足りないって?」

 真っ赤になってぷっくり膨れてる乳首を柔い筆で優しく叩きながら、傑は軽く首を傾げてさっきまで弄られてたもう片方の乳首を濡れた指で軽く弾いた。
 片方を筆で撫でられながらもう片方は濡れた指で何度も弾かれて、指先まで痺れそうな甘い甘い快感に、俺は抵抗できない体をガクガク震わせながらしゃくりあげる。


「ひっぃ…ぁんンっ、や…だァ…ひゥ、う…っ」
「…お前、これ仕置きだって解ってンの?」

 不意にす、って顔を近づけた傑に至近距離で囁かれて、吐息ごと耳元に吹き込まれた低い声にぞわって立つ、鳥肌。
 ヤバ…ッ

「俺の顔にぶちまけた代わりに言うこと聞く、っつーから苛めてやってンのに。やっぱこの程度じゃ仕置きになんねーか」
「ッ…す、ぐる…?」

 ふぅ、って溜め息吐きながら筆を手放した傑が邪魔そうに伸びてきた前髪をかき上げて、完全に据わってるその眼に思わず泣きそうになる。
 こういう眼する時の傑は本当に酷いって、俺は体と頭の両方でよーく知ってるから。

「そぉいや最近見てねーし。悦のマジ泣き」
「や、嫌…っ」
「抵抗したって鎖が増えるだけだ、って……あァ、これも忘れた?」

 普段なら背中に爪立てたって怒られないけど、”お仕置き”の時は別。少しでも抵抗したら罰として鎖とベルトが増やされて、酷い時には鎖の重みで動けなくされた上に目隠しと猿轡されて嬲られる。

 呆れたような傑の声に思い出したその”躾”に、俺は慌てて鎖を握ってた手を離した。立てた膝も鎖が鳴らないようにゆっくり伸ばしたら、それに気づいたのか傑が少しだけ笑って頭を撫でてくれる。


 優しい手つきに今日はそんなに酷くされねぇかも、なんて少し安心してた俺の腹ン中を見透かしたみたいに、傑は意地悪に笑いながら俺の耳元に唇を寄せて。

「足上げろ、悦。…ベルト2本増やすから」

 …甘い甘い、俺がそれだけで骨抜きになるあの声で囁いた。










「んっ…ふ、ぅ…ぁむ、ぅうゥうンっ…」

 突き出した舌を傑の指先に絡めて舐め上げながら、俺は顔上げンのも辛いくらい重い頭を捻って傑を見上げた。

 四つん這いにされた俺の体は鎖とかベルトで何重にも固定されてて、首には重たい鉄の首輪。モノと中にはローターが仕込まれててずっと震えてるけど、根本にリングをキツく嵌められてる状態じゃイクどころか感じる度に締め上げられる。
 時間が経てば経つだけ辛くなるコレが、傑の”お仕置き”の定番。


「シーツびしょびしょ。そんなに俺のしゃぶりたい?」
「ひッぅ、ぅう…!ん、はッ…あぁあぅうッっ…!」

 指舐めンのはフェラさせて欲しい、ってことだって十分解ってる癖に(そもそもそれを教えたのは傑だ)、意地悪な傑はからかうみたいに言いながら手の中のリモコンを弄った。


「ひぐっぅうう…ッぁ、あ、ぁああぁっッ!」

 振動数上げたローターにピンポイントでイイトコロ嬲られて、背筋が震えるような快感と一緒にぎちッ、て前を締め付けられる鈍い痛みが走る。
 ギリギリの所で我慢させられて焦らされる、俺が一番嫌いな感覚。

「はっ、はぁ、…傑…ッも、ぉねが…っ!」
「爪立てンなよ、手。傷付くから」

 俺の必死のお願いなんて全部無視して、傑は知らない内に思いっきり握り締めてた手を解かせた。
 巻きついてたベルトを外された手は少し痺れてンだけど、爪の痕を優しく舌先で舐められたらそんな痺れなんてすっ飛んで、残るのはじわじわ広がる甘い疼きだけ。

「あぁ、あ…ぁああ…ッ」
「イキたい?悦」
「んンっ…イき、た…ッ」


 途切れない緩い快感に下半身からドロドロに溶けていきそうで、傑の指先握り締めながら悶えてた俺に、傑はあの甘い声で優しく囁くともう片方の手を取った。

「ひッ…?」

 シーツに顔沈めてされるがままになってたらいきなり手が熱いのに触れて、咄嗟に手を引こうとするけど手首を握る傑はそれを許さずに俺の手にソレを握らせた。
 頭ン中なんてぼやけまくりだけど、自分がナニ握らされてンのかってくらいは解る。

「や…すぐ、る…ぁあっ…ほんと、に…も、イキた…ッ」
「知ってる。こんなにぐちゃぐちゃにするくらい、俺のしゃぶりてぇんだろ?」
「ッ…だ、て…傑、がぁ…ッっ」

 くすくす笑いながら言われて顔が熱くなる。
 俺はただ、ご機嫌取る時は言葉で謝るより奉仕の方がいい、っていう傑の”躾”を守ってるだけなのに、こんな、ただの淫乱みたいに…っ

「俺ばっかり気持ちよくなったら悪ィからさ。悦も自分でどーぞ」
「や、俺…は、いい、からぁ…ッ」

「駄目」

 しゃぶりながら扱くなんて絶対ぇ無理だけど、だだを捏ねた仕置きにローターの振動数を上げられたら、もう「はい」としか言えない。


「…リングあるからって手ぇ抜くなよ?解るから」
「ぁ、あ…ッ」

 くちゅ、ぬちゅ、てヤらしい音立てながら自分のモノをゆっくり握って親指でカリの辺りを撫でながら、首輪の所為で重い頭動かしてジーンズのチャック引き下ろして傑のを舌で引っ張り出す。
 歯ぁ立てないように大きく口あけて飲み込んで、舌でぺろぺろ舐めながら絶対にイケない自分のを震える手で扱き上げて。どんどん荒くなってく呼吸が苦しい。

「はぁんンっ…ん、ふぁあ…ッ」
「そんな根本より先っぽの方が好きだろ?」
「んんンっ、ふぅう…ッはぁ、あ、…ぁあンんっ」
「…ったく」

 呆れたように呟いて、傑は俺の足の間に潜り込ませた足を俺の手の上からモノに擦りつけた。
 体温の低いその感触に腰が引けるけど傑がそんな逃げを許してくれる筈も無く、器用に動く指とか爪に敏感な裏筋をごりごり押しつぶされて、甲でトロトロ先走り流してる先っぽ擦られる快感に腰がガクガク震えた。


「ひぁああぁあッ、あ、ぁああ…!そ、こ…や、ぁあッ…っ!」
「手じゃねぇから解り難いんだよ。…ここ?」
「ひぐっぅううッ!んぁあ、ぁああぁあッっ」

 ほとんど力の入らなくなった手でジーンズに縋りつきながら首を振るけど、意地悪な傑は俺が辛いって悲鳴を上げる場所を何度も擦った。
 中途半端な愛撫に焦れてた体はぐっしょり濡れたシーツの上でモノを踏まれる度に何度もイって、逆流してくる熱が下半身にどんどん溜まってく。

「ひッぃ、あぁうぅう…ッも、やぁああっ…イき、た…んンぅ…っ!」
「あーあ、ぐちゃぐちゃ。何回空イキした?」
「はひっぃ、あぁうぅッ…も、わか、な…っふぁ、あ…おねが、イかせ…てぇ…ッ、ぁあっ」


 脊髄から体中が痺れるみたいな、イク寸前のまま出すことも熱を冷ますことも出来ないのがただ辛くて、俺は泣きながら傑を見上げた。

「…じゃあ、条件つき」

 ガタガタ体震わせながら哀願する俺に、傑は優しく囁きながら俺の首に手をかけると重たい首輪を支えてくれた。
 ふっと上げるだけで苦しかった首が軽くなって、それでも止まない陵辱に思わず甘えたような喘ぎが漏れる。

「っあ、ぁあぁあ…ッ!」
「イかせるから、俺も気持ちよくして。上手に出来たらリングとローター取ってやるから」
「はぁっ、ぁああッ…!ん、んンぅう、はぁぅうッ…っッ」

 首輪をくいっと持ち上げられて視線を合わせた傑が、ガキに言い聞かせるみたいに「出来るよな?」って聞いてくるのにがくがく頭振って頷いて、中途半端にしてた傑のに震える舌を伸ばす。

「はぁぅっ、ん、んンン…ッ!ふぐっぅ、ぅあっぁあ、ふぁ…!」
「っ…もっと奥まで、入る?」


 前は俺の先走りで濡れた足で円を描くみたいに撫でられて、後ろは時々振動を変えるローターで弄られて、軽く酸欠でぐらぐらする頭でぼろぼろ涙零しながら懸命に舌動かしてたら、頬を這った傑の手が俺の髪を軽く撫でた。

 奥、まで…?入っかな…でも、入れないと傑イってくれなさそう、だし…

「っふ、ぅう…んぐっ、ぅ、ぅうウぅ…!」
「ん、そんな感じ。歯ァ立てンなよ?」

 苦しいの我慢して出来るだけ奥まで入れて顔を動かしたら少しだけモノを嬲る足が止まって、髪を梳いてた手が少しだけ頭を撫でてくれた。
 体は傑の仕込みでマシになったけど、元々俺はテク無しでフェラなんてド下手クソだったから、よくバイブとか指しゃぶって練習させられたんだけど、

 …実践で、こんな良さそうな反応して貰ったの始めてかも。


「んんぅうぅッ、あくぅっ…!はぁっふぁあ…ッん、ぐッ!?」
「…ちゃんと飲めよ」

 奥まで入れて抜こうとした所を首輪引いて止められて、頭の上から傑のいつもより低い声が聞こえた。
 そしてそれを理解するより早く喉奥に注がれてくる、熱い熱い欲。

「んっ、んっ…はぁ、ぁああッ…ぁ…す、ぐるっ…ね、ぉね…が…も、イかせ…ッはぁあっ、おかし、なっちゃ…ッっ!」

 舌に絡みつくそれを数回に分けて飲み干して丁寧に舐めて清めながら上目遣いに傑を見上げておねだりしたら、傑は軽く笑って、

「…よく出来ました」
「ひぁッ、あッぁあ!…あーっ、あーッっ…!」

 優しい声で囁かれながらパチン、てリングが外されて、同時に中で振動数を上げたローターに敏感なトコロを抉られる快感に、俺は傑に縋りつきながら散々溜めさせられてた熱を吐き出した。










「ディープストローク、だっけ?…この前、カルヴァに教えられた」
「ふーん…どぉりで上手いワケだ」
「上手かった?さっきのフェラ」
「そりゃもう」

「……何か、あンまり嬉しそうじゃねーけど」
「ん…上達してくれンのは嬉しいんだけどさ」
「けど?」
「なんつーか…嬉しい反面、教えることが減ってちょっと寂しいなー、なんて思ったり?」
「……変態」



 Fin.



常連様、里依嬢から賜ったリクで「仕置きで射精止め」プラス「濃エロ」
素敵リクありがとうございました!!

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