何でも言うこと聞くんだろ?
…じゃあさ、シて見せてよ。
今、ここで。
眼から首筋、乳首、脇腹を辿って、更にその下。
ソファに座って足元にいる俺を見下ろしている傑の視線が動く度に、その辿った場所がじりじりと炙られるように熱くなって、俺はふるりと体を震わせた。
「あ、ぁ…はぁっ…!」
「……」
「…ん、んン…ふ、ぅ…ッ」
ぬちゃ、ぐちゅ、くちゅ、
傑にこんな姿を見られてるってだけでも興奮するのに、やけに静かな部屋に響く厭らしい音が更に俺を煽ってくる。手なんか溢れる先走りでベトベトで、それが手首まで伝ってきそうになるんだから、マジでこの淫乱な体には嫌気がさす。
きっかけは傑の言葉だった。
同じサド仲間同士、医局でカルヴァと俺等の上司でもある鬼利の奴隷な幽利の話をしてた傑はカルヴァから幽利の色色な話を聞いて、その見事な服従っぷりにいたく感心したらしく、こっちの気も知らずにその逸話を話して下さった。
確かに幽利が超のつくMなのは俺も知ってるし、凄ェとは思うけど、真正面から恋人にンなことを言われたらイイ気はしない。
「…んだよ、それ。俺にもそーやって言う事聞けってこと?」
「違ぇって。…てか悦じゃ無理だろ、あそこまでは」
確かに無理だ。鞭くらいなら耐えられるけどそれは後に快感が待ってるのを知ってるからの話で、幽利みたいに背中がズタズタになるくらい鞭打たれて蝋燭垂らされて蔑まれながらイクなんて荒業は出来ない。
それを自覚してるから俺は尚更意地になって、とうとう傑にこんな啖呵を切ってしまった。
「ッ…無理じゃねーよ!何でも言うこと聞きゃあイイんだろ?そんくらい俺にも」
「へぇ?」
俺が言い終わるよりも早く反応して、楽しそうに瞳を細めた傑にヤバいって気づいても、当然もう遅かった。
その結果が、これだ。
傑の足元で、手も声も出して貰えない生殺しのままの自慰。
「はぁッ、ぁ、あぁっ…!…も、傑…ッ」
「……」
「おねが…触、って…ッ」
出来るだけ厭らしく音立てて、鬼畜に入った時の傑が好きそうな言葉で哀願してみるけど、相変わらず無表情のまま俺を見下ろすだけで『ダメ』とも『黙れ』とも言ってくれない。
…正直、辛い。
「ひぁ、あッ…ぁぅ、う…ンんんっ!」
傑が何を楽しんでンのかは知らねーけど、とにかくイかないと許して貰えないと思った俺は、自分の弱いトコロを痛いくらい擦って引っ掻いて強引にイった。
「ふぁ、あ…っ」
どろり、って青臭い精液が俺の手と床を汚して、俺は涙でぼやける瞳で傑を見上げる。…早く、せめて声だけでもいいから聞きたくて。
その俺の願いが届いたのか、傑はふぅって軽く溜息を吐くと、1時間ぶりにその紅唇を開いた。
「誰が止めていいっつった?」
「…え?」
…だって、
「だ、って…も、イって…―――あァッ!」
「イったら終わり、なんて誰も言ってねーだろ」
イッたばかりで敏感になってるモノの、丁度カリのあたりを痛いくらいに踏みつけてぎりぎり体重をかけながら、傑は寒気がするくらい冷め切った瞳で俺を見下ろした。
「…続けろ」
「ひぁッ、ぁあぁ…!ぁ、あ、ぁあぅ…あぅう…ッ!」
…熱い、熱い。
もうほとんど透明に近い精液手に絡めて、動かなくなってきた指を必死に動かして自分を追い詰めながら、擦りすぎて真っ赤になってるカリにそっと爪を這わせる。
ただでさえ快感に弱いのに、何度もイって呼吸も整わない内にまた擦るからその快感も倍増しになって、意識は朦朧だし目の前だってほとんど見えない。
「ひぅう…!ッぁ、は…ふぁ、あ、あぁッ…も、も、やだ…ぁ…!」
「……」
「おね、が…あぁっ、…も、許して……っ謝る、から、ぁ…!」
常に脊髄を焼く快感に耐え切れなくなって手を離したモノに、冷たくて硬い感触。
…身構える暇も無い。
「ひッ…ひぁああッ!あ、あぁあッ、あ!」
革靴の底がモノを思いっきり踏みつけてぎりぎり踏みにじるみたいに動いて、裏の薄いゴムの凹凸が敏感になった粘膜をごりごり擦っていく快感と痛みに眼が眩む。
冷たい床に押しつぶされて与えられる乱暴な愛撫に跳ねる体はびくびく跳ねて、電流でも流されたみたいな有様。
「謝ってる暇あったら手ぇ動かせって」
「ひぅうぅうッ…!」
「返事は?」
「はぅうッ、…やぁ…も、嫌…、…あッ、んぁあ゛ぁぁあ!」
首を横に振った途端、ソファから立ち上がった傑に本格的に体重をかけて踏まれて、耐え切れずにそのジーンズの裾に縋りつく。
ぎゅうって握り締めて、死にかけみたいに早くなった呼吸を整えようと舌突き出して空気を貪るけど、傑はそんな俺を冷たく見下ろして更に体重をかけてモノを踏みにじる。
痛い、けど…
「いッ、痛ぃいッ…あぁ゛ああッ、も、やめッ…あっ、あ、あーッ!」
靴底の凹凸が先走りを零す尿道口を軽く擦った途端、元々ぼやけてた視界が真っ白にスパークした。
「…あーあ」
「っは…はぁあ…ッ…」
「踏まれてイクかぁ?普通」
「だ、って…ぇ…」
精液でべったり汚れた靴をモノの上から退けて、涙やら体液やらで汚れた俺の顔を、傑がくすくす笑いながら撫でてく。
イッたばっかりなのに容赦なく踏みにじられたモノはまだジンジン疼いてて、薬でもキメたのかってくらい。
「ったく…この淫乱」
「あ、ぅ…す…傑…っ」
目の前で片膝を付いてくしゃりと頭を撫でてくる傑に、俺は震える手を伸ばしてしがみついた。
視姦だけでもイケないことは無いし、いつもと違ってサドっ気たっぷりに責められるのも新鮮で面白い…けど。
やっぱりこの体温がないと、何も解ンなくなるよーなあの快感は得られない。
「傑…すぐる…ッ」
「はいはい。解ってるって」
しがみつく俺の背中をぽんぽんて優しく叩いて、傑の手がするりと俺の肌を滑る。
「焦らした分、ちゃんと満足させてやっから。な?」
「ん…」
…やっぱり、俺には幽利みたいな完全服従は無理だ。
だってほら、
ちょっとお預けされただけで、もう欲しくて堪らない。
Fin.
リクエスト。
庵様素敵リクありがとうございました!