「はい、俺の勝ちー」
「……」
「…なぁ悦、もう止めねぇ?飽きたんだけど」
「っ全敗で止められるワケねーだろ!もっかい!」
「しゃーねェなぁ……じゃ、やってやるから1つ条件つけさせて」
「…どんな?」
「単純に、負けた方が勝った方の言うことを何でも聞くってのは?」
「……何でも?」
「何でも。”嫌だ”って言ったらその回数だけペナルティ」
「………。解った」
「それじゃあこれで最後な。せーの、」
「「…あ、」」
片方の肩に引っ掛かっているだけの黒いシャツと、バックルを外してだらりと下がったベルト。ボタンを外したジーンズ。裸足の足首は手錠で椅子の足に繋いで、両手も後ろ手にして背もたれの装飾を通した手枷に。
その上、目元を黒い布で覆って目隠しまでしたら、これはもう…
「…絶景」
…ヤバい。
「半端なくエロいんだけど…どういうことだよコレ」
「俺に言われても」
「拘束された傑」っていう貴重な光景をじっくり眺めながら言った俺に、目隠しされた顔を斜めに上げて傑が苦笑する。あの深い藍色が見えない代わりに声がいつも以上に深く響いて、思わず唇を舐めた。
「…で、これで終わり?」
「ンなわけねーだろ。これで終わりだったら縛った意味ねぇし」
茶化して首を傾げる傑に答えながら、椅子に縛りつけたその膝の上に座ってポケットに忍ばせてた小瓶を取り出す。
…いっつも散々好き勝手ヤられてる仕返しだ。今日は俺がメチャクチャにしてやる。
「ん?」
「薬。ちゃんと飲めよ」
コルク栓を足元に投げ捨てて、ドロリと濃い青色の液体が入った瓶を傑の唇に押し当てた。普通の薬じゃ傑には効かないけど、何倍にも薄めて使う媚薬の原液を一瓶飲ませれば少しは効果が出る。…はず。
独特の匂いで薬の中身に気付いたののか、一瞬だけニヤリと笑ったように見えた傑は、小さな瓶の口を歯で咥えると軽く顔を上げて自分で瓶の中身を飲み干した。
「…酷ぇ味だな。どこの?」
「安心と信頼のカルヴァブランド」
「げ、」
多分、傑はその辺の市販品だと思って飲んだんだろうけど、生憎この薬はカルヴァから少し前にもらった特別製だ。
空になった瓶を床に吐き捨てながら「ヤバい」って顔をした傑に小さく笑いながら、俺はいつもの傑の手つきを真似て裸のその胸板に手を這わせる。
「俺が普段どんなことされてンのか思い知らせてやる。覚悟しろよ?」
「…お手柔らかに」
うっすら浮いた汗で濡れた首筋に唇を寄せて、浮いた動脈を押しつぶすように血管に舌を這わせる。
「は、…ぁむ…」
「…ん、…っ」
できるだけぴちゃぴちゃ厭らしい水音を立てながら首筋を舐めて、空いた手で弄ってた乳首を軽く抓ると、薄く開いた傑の唇から小さな声が漏れた。
「…感じる?」
「んー…どっちかってぇと痛い」
「つまんねぇの」
あんあん鳴くとは思ってなかったけど、あんな薬飲ませてンだから少しは感じると思ってたのに。ちょっと拍子抜けしながら俺は手を滑らせて、ジーンズの上から傑のモノをぐっと押した。
「っ…」
傑がぴく、と肩を揺らして息を詰めたのに気を良くして、俺はそのままベルトもボタンも外してあったジーンズの中に手を滑り込ませる。直には触らないで、下着の上から形をなぞるように撫でたり裏筋を引っ掻いてるとだんだん硬さが増してきて、下着ごしに握った中で響いたぐち、って水音に思わず背筋がぞくりと震えた。
「…濡れてきた」
「生理現象です」
「誤魔化すなよ。…感じてるクセに」
「直に触ってもらったほうがイイんだけどなー」
「それはまだダメ」
あぁ、ヤバい。凄ぇ楽しいコレ。
いつもは俺がされてることを傑にしてるってのと、あの傑が俺の下で何の抵抗も出来ずに拘束されてるってのがもう堪んなくて、俺は傑の耳朶を甘噛みしながら両手をモノに添えた。
片手で裏筋を押しつぶすように扱きあげながら、下着ごしにカリをぐりぐり擦って、先走りで濡れはじめた尿道口の布を押し当てて先端を引っ掻く。
「っ、…ん、…ぁ」
耳元で聞こえる傑のエロい声に煽られて、声が出る尿道口に指を押し当てて何度もそこばっかり弄ってると、ガシャンと音を立てて椅子に繋いだ傑の足が揺れた。
「抵抗しないって約束だろ」
「ッ…そこ、ヤバい…イキそ」
「ちょっと扱いただけで何言ってんだよ。今日は騙されねーかンな」
傑の声がぐっと低くなったのには気付かないふりで、俺は下着の布を中に押し込む勢いで尿道口に指を突き立てた。ぐりぐり抉ってるとだんだん傑の息が荒くなってきて、赤い舌がぺろりと唇を舐める。
さっきの声はちょっと本気っぽいけど、相手は傑だ。これくらいじゃまだまだ信用できない。
「は…、っ」
「これ、さっきの分のペナルティな」
「…ってぇ…!」
言いながらずる、と下着の中から引っ張り出した傑のモノにリングを嵌めた。バチン、と音を立ててカリの下辺りに巻きついたそれに、傑が小さく呻いて顔を俯かせて、素足の足先ががり、とフローリングを掻く。
「おま…勃ってるトコに締めるか普通…ッ」
「傑だって俺にしょっちゅう使ってるだろ、これ」
「俺は半勃ちン時に締めてるだろうが、…っ緩めろよ、不能になる」
「えー…」
「コレ、昨日俺が悦に使った奴だろ?…このサイズなら最大まで緩めても、…っ俺はイケねぇから、安心しろ」
なんだかそれはそれでムカつくけど、確かにリングも尋常じゃない食い込み方をしてたから、俺はしぶしぶリングの目盛を最大まで緩めた。俺ならガバガバなサイズなのに傑相手だとちゃんとリングの役目を果たしてンのがまたムカつく。
…間違っても俺が小さいわけじゃない。
「あー…死ぬかと思った」
「悪ぃ。お詫びに直で触ってやるから」
「ッ…ぅあ…、」
傑を真似た意地悪のつもりだったのに、リングで締められたモノを直で握って軽く扱いた途端、傑の唇から洩れた色っぽい声に思わず心臓が跳ねた。相変わらず俯いたままだから顔は見えないけど、なんだか体が強張ってる、ような…
「…顔、上げろよ…傑」
見たことない傑の姿に熱が上がるのを感じながら、傑の先走りで濡れた手で整い過ぎたその頬に触れた。ぐ、と少し力を入れると傑がゆっくりと顔を上げて、薄ら頬が赤く染まったその表情に目の前がくらりと揺れる。
「ンだよ、…らしくない顔、して」
「…誰のせいだよ」
傑を感じさせて俺はそれを見ててやるつもりだったのに、なんかだんだん俺の我慢まで利かなくなってきた。掠れた傑の低い声に体の奥にくすぶる熱をまた煽られて、俺は思わず自分のモノに手を伸ばす。
「な、傑…イキたい?」
「イかせてくれんの?」
「まだダメ」
「っん…イジワル」
傑の耳元に唇を寄せて囁きながら、引っ張り出した自分のモノと傑のを合わせて握りこんだ俺に、頬が触れそうな距離で傑が甘えたような声で囁いた。
素面でこんな真似するなんて我ながらイカれてるけど、こんなオイシイ状況もう2度と無い気がするし、何より傑がエロ過ぎるんだからしょうがない。
「はっ…ぁ、あっ…んん、ぅ…」
「っ、…は…」
裏筋に当たってる傑のモノが少し手を動かすだけでびくびく跳ねるのが面白くて、扱く手が止まらない。
耳元に吹き込まれる傑の声が少しだけ、それまでの溜息みたいな吐息から乱れた不規則なものに変わっていって、今まで聞いた事のない少し苦しそうなその声に、思わず手が緩みかける。
ど、しよ。…やっぱ、1回くらいは…
「…傑、キツい?」
「ん、ん?」
ちょっと不安になって尋ねた俺に、傑は俺の肩に乗っけてた頭をゆっくり上げると、軽く身を乗り出して俺の耳朶をぺろりと舐めた。
そして、そのままの距離で吹き込まれる、甘く掠れた低い声。
「…このままイクより、悦の中に入りたい」
「ッ、…!」
「イカせろ」と言われるとばっかり思ってた俺は、予想を軽く上回る傑の言葉に思わずモノを握る手に軽く力を込めた。それにく、と息を詰まらせて俯く傑の横顔がまた犯罪並みにエロくて、今日はこっちが苛めてるはずなのに俺のほうが辱められてる気がしてくる。
「それ、は…イけなくても、いいってこと?」
「…いいよ」
囁くような声で答えた傑のモノからまた熱いものが零れて、俺のモノと手を濡らす。今の傑と同じ状況で苛められたことなんて俺は何度もあるけど、もしかしたら傑に効いてる薬は、俺の時よりずっと強い効果を発揮してンのかもしれない。
傑のことだから俺みたいに理性飛ばしたりはしないだろうけど、本当に薬がバッチリ効いてたとしたらかなりキツいはずだ。そういうのに慣らされた俺だって、出せないまま苛められンのは辛い。
「…悦…」
「な、なに?」
どうしようかと考えてたら不意に傑が俺の名前を呼んで、荒い呼吸の合間の掠れたその声にじんと頭の奥が痺れるのを感じながら、慌てて俺は返事を返した。
特に意味もなく聞き返しただけだったんだけど、傑は別の意味にとったらしい。乱れた熱っぽい吐息を漏らす濡れた唇が、どこか自嘲するように笑う。
「はっ…いつもの仕返し、ってか?」
「え?…ぁ、や、そういうんじゃなくてっ」
確かに俺が切羽詰まって名前をいくら呼んだって、ちゃんと細かく言わないと傑は絶対許してくれないけど。今のは思いっきり素だ。傑に対して羞恥責めなんて、そんな大それたこととてもじゃないけど、
「悦、入れさせて、…お願い」
…とてもじゃないけど出来ないと思ってたのに。
初めて聞いた傑の「おねだり」の破壊力はすさまじくて、このまま鎖を解いて好き勝手させたくなるのを俺はなんとか堪えた。傑の上から一度退いて邪魔なジーンズと下着を脱ぎ捨てると、薄く開いたままの傑の唇に指先を押し当てる。
「入れたい、んだろ。…濡らせよ」
「……」
傲慢な俺の言葉にも嫌な顔一つしないで、傑は言われるがままに俺の指を口に含んだ。びっくりするくらい熱くなった舌が関節に絡みついて、ちゃぷちゃぷ卑猥な音を立てながら指が濡らされてく。
こんな状況でも傑の舌戯はいつも通り上手くて、指の股をくすぐられたり爪を甘噛みされるのは気持ちイイんだけど、なにより火傷しそうな中の粘膜の熱さと、時々かかる押し殺した吐息が、もう。
「すぐる…傑、もういい」
「ん、…」
従順に口を離した傑が濡れた唇を舐めるのにまた熱を煽られながら、俺は傑の肩にすがりつくようにして軽く前屈みになると、濡らしてもらった指を奥にゆっくり埋めた。
…傑に目隠ししといてよかった。こんな距離で見られてたら絶対にこんな真似できない。
「ん、…ぁ、あぁ…は、…んンっ…」
慣れた体は指1本をすぐに呑み込んで、俺は前立腺を緩く押しながら指を2本、3本と増やしてく。わざわざ傑の耳元で声を聞かせてンのは悪戯心だけど、普段あれだけ苛められてンだからこれくらい許されるだろう。
「はぁ、あっ…ぁああっ…ぁ、んく…ッっ」
「…は、…っ」
ずり、と体を動かした拍子に下腹で傑のモノを擦って、火傷しそうなその熱さに思わず俺は傑を見上げた。目隠しをしたまんまの傑は軽く顔を背けたままで相変わらず弱音なんて吐かねぇけど、濡れた唇から漏れる吐息は乱れるばっかりで、時々軽く息を詰める音が聞こえる。
「傑、…も、入れる、から」
「っ、…どーぞ」
は、は、と短く吐きだしていた呼吸を一息で整えた傑に掠れた声のお許しをもらって、俺は軽く浮かせた腰をいつもより硬くて熱く感じる傑のモノの上にゆっくり下ろした。
下手くそな俺の手で解したソコはいつもよりキツくて、傑の肩にしがみ付きながら無理矢理腰を下ろしてカリを埋める。そのままサオを全部入れようと少し息を吸った瞬間、傑の背後からバキンとSEX中にはまずあり得ねぇ音が聞こえた。
「ちょ、…っんだよ、どした?」
「…あぁ…椅子、壊れたかも」
「は?壊れたってお前…大丈夫かよ、怪我とか、」
「大丈夫。…だいじょうぶだから、悦」
「え、…?」
「頼むから、ハンパにすんな。…狂いそう」
その声を聞いた瞬間、俺の中でも何かが弾け飛んだ。
「ッ!…ぁ、く…っ」
「ひぁッ…!ぁ、あぁあぁッ…っッ」
何の前触れもなく一気に腰落として、奥の奥まで熱くて硬いモノに突き上げられて痺れる頭ン中を無視して腰を動かす。
「は、ぁッ、あ、あッ、ぁあ!」
「んンッ…!」
あ、唇…っ
好き勝手に動きながら見上げたら俯いた傑の歯が唇を噛みしめていて、今にも食い破られそうなそれが勿体なくて、俺は咄嗟に傑の唇に舌を絡めた。驚いたように軽く身をこわばらせた傑に構わず舌を突っ込んで、熱い熱い舌先に自分のそれを絡める。
「ん、ふっ…ふぁ、あ、ぁあッ…ん、ぁっ?」
「ッは…はぁっ…っ」
腰を緩く動かしながら角度を変えようとしたら強い力で舌を押し返されて、離れた唇が寂しくてまた顔を寄せた俺から逃げるように顔を背けた傑が、半ば吐き捨てるように荒い息を吐く。
「ッぁ、すぐる…っ?」
「ッ、今は…ダメ。…舌、喰い千切る」
薄らと頬に汗を滲ませながら、は、は、と切るように呼吸を繰り返す傑の声は間違いなく辛そうなのに、その声音にはまだ痺れるような甘さが含まれてて、俺は咄嗟に傑の目隠しに手を伸ばした。
声も顔も信用できない。声帯の使い方も表情の作り方も知り尽くしてる傑は、それこそ死にかけてる時だってなんでもないふりで笑えるんだから。
だから、俺が信用できるのはあの深く透き通った、呑み込まれそうな藍だけ。
「んッ…っ、…ぁ」
するりと目隠しをとった瞬間、眩しそうに軽く細められた藍色は、間違いなく今まで俺が見たことのない色をしてた。
いつもの、あの射抜くように鋭い視線が嘘みたいに濡れた藍色は深さをぐっと増して、欲情しきったケダモノみたいなその色に煽られて咄嗟に中のモノを締めつけた途端、ぼんやりと俺を捉えてた瞳がほんの一瞬焦点を失う。
理性を戻そうと軽く潜められた眉とか、時々ヨさそうに息を詰める音だとか、その全部がどうしようもなく卑猥で綺麗で、思わず俺は息を飲んだ。
「す、ぐる…っ」
「ぁ、…っン、く…!」
耐えられずに半分くらい抜いたモノを一気に飲み込んだ途端、快感を堪えるように深く俯いた傑の顎からぽた、と汗が零れる。
「んぁ、あッ…ぁあっ、すぐる、傑っ…!」
「っ…は、…はぁ…ッ」
…本当はもっと焦らして焦らして、傑にイキたくてもイケない辛さを嫌ってくらい分からせてやりたかったんだけど、もう無理だ。
俺の肩に額を押し当てて押し殺した息を吐くときに漏れる声だとか、搾り取るようなナカの動きに耐える為にぎちりと歯を食いしばる、見たこともない横顔だとか、もう全部が目に毒過ぎて俺のほうの我慢が効かない。
「傑、…っは…イき、たい…?」
「ッ…イかせて、くれんの…?」
「ん、…ちゃんと、声…聞かせろよ」
煩い自分の声を無理矢理抑え込んで、ギリギリまで抜いて腰を下ろす前に傑のモノに手を伸ばしてリングを外す。カラン、とびしょぬれになった銀色の環が床に転がって、俺の肩に額を押し当てたまま傑が長く息を吐いた。
「っぁ…あぁあぁあッ…!」
「ッ…あ、ぁ…!」
傑の呼吸が整わないうちに引いてた腰を一気に奥まで叩きつけた瞬間、軽く上ずったような傑のあえぎ声が聞こえて。
いつもよりずっと強く、熱い熱い欲が奥に叩きつけられたのを感じて傑の肩にしがみ付きながら、傑の腹に精液をぶちまけた。
目の前が白くなるような快感と、まだナカで存在を主張してる傑のモノにぞくぞく背筋震わせながら首に腕を絡ませた俺の耳元で、低く掠れた声が。
快感をやり過ごすような吐息に、余裕なく軽く腰を揺らしながら囁かれたその言葉に、全部をもってかれた。
「悦、…もっと」
半ばまで引きちぎられた分厚い革を手首から外して、握りしめた木の破片から指を引き剥がす。
「…どんな力で握ったらこんな風になるんだよ」
傑を縛りつけてた椅子は、俺から見えない背もたれの部分がそれはもう酷いことになってた。
手枷を固定してた背もたれの部分は鎖が食い込んだ上、傑が加減無しに握りしめたお陰で熊にでも掴まれたように木の部分がひしゃげてる。当然枷のほうだって無事には済んでなくて、ある中でも一番頑丈そうだった鎖は引き延ばされていびつに歪んでた。
「もう使えねーな、この椅子」
「…あぁ、…そーね」
「なんでそんなテンション低いんだよ。疲れた?」
「…つかれた」
足の鎖を外してやりながら聞いた俺にぐったり頷きながら、傑はさっきまで枷に擦れて手首から血を流してた右手を額にやって、そのまま深いため息を吐く。
「変に我慢するからキツいんだって。傑が俺に言ったんじゃねぇか、ちゃんと声出さないと辛いって」
「あれ以上鳴けってか?…冗談じゃねぇ…」
疲れ切った声でそう呟いて、傑は椅子からふらりと立ち上がった。足首にまとわりつく鎖を引きずりながら歩く傑の足は心なしかふらついてて、床に座り込んでそれを眺めながら、俺は肩に引っ掛かっていた傑のシャツを軽く引っ張る。
どこ行くんだよ、ってちょっと止めるだけのつもりだったんだけど、…俺の予想に反して、傑はそのままがくんと膝を折って俺の横に座り込んだ。
「す、傑?」
「あー…平気、腰痺れて下半身使いモンになってねぇだけ」
腰に全然力の入ってないその崩れ方に、思わず不安になって表情を窺った俺にひらりと手を振って、傑はだらりと投げ出された自分の長い脚を見て深く溜息を吐く。
「うぁ…自己嫌悪で死ねるこれ…」
「どんだけ後悔してんだよ。俺は結構楽しかったけど?」
「勘弁しろよ…」
ぐったり床を見つめながら力なく呟く傑がなんか面白くて、笑いながら言った俺をぐいっと引きよせて床に押し倒しながら、(こんな時でも俺が後頭部打たないように手が回るんだから凄いと思う)傑は低い声で唸った。
「…なぁ、次はギャグ使ってみてーんだけど」
「ふざけンな、二度目なんてねぇよ」
おどけて言った俺の頬にキスを落としながら、もう二度と負けねぇって低く言った傑がおかしくて、その気になれば簡単に俺をバラバラにできる腕に優しく抱きしめられながら、俺は声を出して笑った。
Fin.
偶には傑を鳴かせ隊。(隊長・悦)
傑が疲れ切っているのは、強すぎる薬でちょっと本気で気が狂いそうになってるのを堪える+悦の誘惑に耐えてたから。
まさか全部は飲ませないだろうと効き目を強くし過ぎた女王の珍しい誤算。
何が嫌って傑にとって、自分の耳触りな喘ぎ声でせっかくのエロい悦の吐息やら声やらがかき消えるのが一番鬱なのです。