Dope



「最ッ悪…」

 タイル張りのシャワールームで、俺は低く唸りながら目の前の壁を殴りつける。

 目の前の鏡に映ってるのは、髪から滴るほど返り血を引っかぶった上に服がズタズタになった自分。手からナイフが落ちるのを感じながら、想像以上の酷ぇ姿に思わず笑えた。


 …取りあえず、傑の部屋行かない、と。










「…バカじゃねぇの?」

 ノックも無しに部屋に入った俺を見て、ソファに座って銃の手入れをしてた傑の第一声が、これだ。

「バカじゃねーし。少しは心配とかしろよ」
「心配って誰の。その血の持ち主?心配も何もお前に殺されてンじゃん」

 布で部品をキュッキュと磨きながら、傑は軽く首を竦めた。帰って来る時に擦れ違った幽利が「血まみれじゃないっスか!」なんて言ってかなり驚いてたから、傑も騙されるかと思ったんだけど…甘かった。


「…あ、そーだ。ちょっとこっち来て」
「何?」

 何かを思い出したように部品ごと布を投げ出した傑にちょいちょいと手招かれた俺は、フローリングの床に赤い足痕を残しながらソファの横まで行って、

 …押し倒された。

「マジで騙されやすいよなー、悦って。このパターン何回目よ。いいかげん気づけって」
「ちょっ、やめ、傑っ!」
「ダーメ。そんな格好で俺の部屋来て、ただで帰すわけねーじゃん」

 あっと言う間にソファに転がされてマウント取られて、俺の両腕を纏めて押さえつけて腰の上に跨った傑が憎たらしく笑う。
 その笑みがまた艶っぽいもんだから、コイツは本当に質が悪い。


「それとも、こういうのを期待して敢えて着替えもせずに来てくれたとか?…そうだとしたら相当頑張っちゃうけど、俺」
「頑張らなくていいっ!シャワー壊れたから仕方なく来たんだよッ」
「ふーん…?」
「っあ…やめろ、って…!」

 額が触れ合うほどの距離で甘く囁かれる声に、もう力が抜けてくる。しかも、掠めるように耳を舐めるオマケ付きで。
 俺が耳弱いって、お前が一番よく知ってるクセに…ッ


「卑怯、だ…ッ」
「今更。俺が血に弱いの悦だって知ってンだろ?」

 …確かに。俺が血濡れになる度に、傑は俺のことを押し倒してくる。
 誰かも解らない雑魚の血で汚れた俺を抱くのが倒錯的でイイ、らしいけど…血でベタベタな上に汗も流せないで抱かれるこっちの身にもなって欲しい。


「解った、解ったからっ…!100歩譲って抱かれてやるから、せめてシャワーくらい浴びさせて。マジで嫌なんだよ、このままでいるの」

 抵抗を止めてまっすぐに傑を見上げながら、軽く上目遣いになっておねだり。普段、素面でこんな真似滅多にしないけど、背に腹は変えられない。

「…じゃ、一緒に入るか。俺もまだだし、最近仕事重なって後処理してやれてなかったし」
「……中で、手ぇ出すなよ」
「そこまでがっついてねぇよ。普通に触るくらいならいーだろ?」
「…まぁ、そのくらいなら」

 視線を合わせた傑に少し困ったように言われて、俺は思わず頷いてしまった。

 …10分後、この行動を死ぬほど悔やむとも知らずに。










「っぁ、あ…中、では…手ぇ出さない、って…言った、くせに…ッひぁ…!」
「手は出してねーよ?ただ洗ってるだけ」

 口調こそ心外そうだけど、俺の目の前にあるデカい鏡に映ったその表情は絶対にこの状況を楽しんでる。スカしたその横っ面を張り倒してやりたいけど、座ってるのでやっとな俺には当然無理なわけで。

「ふぁっ…!ぁ、んっ…はぁ、あぁぅ…ッ」

 ボディソープを絡めた傑の指先が膨れた乳首をカリカリ引っ掻いて、ぬるぬる滑る指でそこを摘んだり撫でたり。絶対に洗ってるだけじゃないだろ、って動きだけどいつもと違って摩擦の少ない愛撫が気持ちよくて強く止められない。

「この椅子邪魔。降りて床に直接座ンな」
「あッ、…はぁ、あ…!」

 言うと同時に、座ってた椅子をがんって蹴りつけられて横に退かされて、最初に洗い流した血の痕が残るタイルの上に直接ぺたんと座り込めば、それまで背中から覆い被さるみたいだった傑が俺のすぐ後ろに座る気配。

 そのまま腰を抱かれて、あぐらをかいたその足の上に座らされる。…この状況は明らかに「体を洗う」じゃ済まないだろ。コイツとうとう言い訳まで放棄しやがった。

「悦、そこのスポンジ取って」

 視線で示されて棚の上のスポンジを渡すと、傑は数回スポンジをくしゅくしゅ揉んで、出来た泡を塗りつけるようにしてスポンジを俺の肌に滑らせた。
 円を描くみたいにに擦り付けられるスポンジの端が真っ赤になった乳首を何度もくすぐって、緩慢な愛撫にしつこいくらいそこばっかり弄られてる体が震える。

「ひぁっ、あ…っも、そこ…ばっか、り…ッ、んあぁっ…や、だ…っッ」
「じゃあどこ洗って欲しい?」
「ッ、ぁ…こ、こ…っ」

 ここで自分でねだるのを嫌がったりしたらとことん焦らされるのを知ってるから、恥ずかしいのを堪えて大きく足を開いて、スポンジ持ってる傑の手をガン勃ちしてるはしたないモノのところまで引き下ろす。


「ここ、をどーして欲しい?普通に洗う?それとも悦が好きな先っぽだけ擦って苛めてやろーか?」
「ひぁ、あッ、ぁっ…はぁあぅ…ッ!」

 裏筋に荒いスポンジの表面を押し当てながら纏めて握られて、ぐしゅ、って音と一緒にスポンジから溢れた泡でモノが真っ白になる。それがイッた直後みたいだって想像したら思わずぶるりって体が震えて、それを感じたらしい傑が後ろでくすくす笑った。

「ほら、どっち?」
「っぁ、も、両方…ッ、りょ…ほう、シて…!ふぁ、あっ…も、我慢、できな…ッ」
「…淫乱」

 なかなか与えて貰えないいつもの眩暈がするような快感が欲しくて、腕にすがりついてねだる俺に傑が呆れたように言うけど、しっかり抱きしめられて愛されてる俺にはそんな言葉ですら甘い。


「痛かったら言えよ?…あ、悦は痛いのも好きだから意味ねぇか」
「っそんな、こと…!っひ、ぃいぃッ、あ、あ、あぁあ!」

 からかうような傑の言葉に反論する暇も無く、モノに巻きつけられた楕円形のスポンジが無造作に上下に動かされ初めて、荒い表面にざりざり敏感な粘膜を擦られる。
 今まで経験したことのない愛撫にモノの先からは透明な先走りがとぷとぷ溢れてきて、それを拭うようにスポンジが擦りつけられるともう、ふやけた頭ン中はイきたい、ってそれだけで一杯になる。

「ぁひっぃ、いぃイッ!あッ、ぁ、ひぁ゛あァっ…!」
「悦、前見てみな」
「はひぃ、いっ…ァ、んんンッ…!」

 モノの先端をスポンジで覆われてごしゅごしゅ擦られながら、耳元に吹き込まれる甘い声に眼をぎゅっと瞑って首を横に振る。
 俺の目の前にあるのは床から天井まで届く大きな鏡。特殊加工で曇らないようになってるその鏡に何が映ってるかなんて、見たくも無い。

「嫌?…勿体ねぇな、せっかくイイ面してンのに」
「あ!あぁ゛!ひぁああぁッっ…っあ、あーッ!」

 さも残念そうに言いながら、手は容赦なくスポンジでモノをごしごし。尿道口を抉るようにスポンジを押し当てられて前後に動かされるともう耐えられなくて、びくびく震えながら白く濁った精液をスポンジにぶちまける。

「っは、はァっ…ふぁ…、ァッ、ひぃいぃッ!?」
「真っ白で精液か泡か解ンねーな、これ」
「ひぐ、ぁぅうッ…!あぁああっ、あ、そ、こっ…はひぃいッっ…あ、ぁ゛、あ!」

 イッたばっかりで敏感になってるのに、精液をたっぷり吸ったスポンジ放り投げて泡だらけの手で裏筋押しつぶすみたいに扱いたり、カリを爪で引っ掻くみたいに刺激されて、萎える暇すら与えられない。
 強制的にまた勃たされて、そのまま2度目の射精。


「ぁひぃッあぁあ、あ、ぁ…ッも、もぉ…や、ひぃッや、だ…ぁあッ…!」

 連続射精でこれ以上ないってくらい感じやすくなったモノの先っぽをくりくり弄られて、終わらない快感に泣きながら首を振ったら、それまで俺の足を開かせてたもう片方の手にいきなり顎を掴まれて、強制的に前を向かされた。

 いきなりの強行に驚いて眼を見開いた視線の先には、体中泡塗れになって傑に抱かれてる俺の、頬に濡れた髪を張り付かせた顔。

「あ、ぁ…っ」

 それがもう、なんていうか…凄く、ヨさそうな顔で、さ。顔を紅潮させて目元もほんのり赤くなってて、半開きになった唇からは熱い吐息と甘い声がひっきりなしに漏れてる。鏡を見つめたまま離せなくなった瞳もとろんて感じに蕩けてて、気持ちよすぎてまともに頭回ってねぇってのがよく解る感じ。

 顎掴まれて鏡と対面させられたまま、堪ってた涙がゆっくり零れてく所とか…うん、我ながら半端じゃねーくらいヤラシい。

「視線外すなよ?自分がどんな顔してイってンのかよく見てな」
「ひぁっ、あぁぁッ!や、やだぁッ…や、ッはぁあぅうッっ」

 首振って手を外したらとん、て背中押されて四つん這いにされて、鏡との距離が縮まって俯く俺の髪を乱暴に掴み上げてまた顔を上げさせる傑。
 自分のイき顔見るなんて絶対嫌だって思ってるのに、すっかり快感に支配された体は言う事を聞いてくれなくて、結局は傑の言いなり。


「ひあっぁッ!アッぁ、あっ、あーっ、あーっッ!」

 びゅぐ、って飛んだ精液が目の前の鏡に飛び散って、髪を掴んでた手が濡れた髪をくしゃって撫でた。
 優しく撫でられる感触にうっとりしながら鏡に顔近づけて、鏡ごしに傑に見せつけるみたいにゆっくり鏡の表面を滑り落ちてる精液を舐め取ったら、耳元で囁かれる低く掠れた声。



「…お前、最高」



 Fin.



血みどろな悦に欲情する変態傑。
悦を溺れさせたい時は髪引っ張り上げたり組み敷いたり等、ソフトSMな扱いが効果的だそうです。(情報提供・傑)

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