息が止まるまで。
「はい」
「ん。どーも」
手に持ちっぱだったグラスの中に後ろからとくとく注がれた酒を舐めながら、俺は台所から酒瓶片手に帰ってきた傑がソファに座るのを待って、軽く開いた傑の膝に背を預けて寄りかかる。
傑は床じゃ硬いからソファに座れって言うけど、ふわふわのラグのお陰でそれほど硬くも無いし、何より俺にはソファなんかよりこの背もたれが一番具合がいい。
「何見てンの?」
「んー…カウントダウン」
「こんな時間から?」
「3110秒前からカウントダウンするんだってよ」
「へぇ…」
傑はしばらく酒を瓶で飲みつつ(こいつの飲み方だとグラスじゃ追いつかない)、俺と一緒に画面を眺めてたけど、すぐに飽きたらしく膝の間に埋まってる俺の頭をぽんぽん撫でて、手遊びに髪を弄りだした。
画面の中じゃでかいストップウォッチを背景に、最近よく見るコメディアンがちょこまか動いてる。年越しも仕事とか大変だなこいつらも。俺でさえ今日明日は休みなのに。
「…あ」
「どした?」
「傑、お前明日も休みだっけ?」
「明日?…あー、確か夕方に1件入ってた。その次は休み」
「マジかよ…」
「買い物行きたかった?」
「ん。」
「昼間行くか?夕方っつっても6時くらいだし、午後から動けば間に合うぜ」
「いーよ」
宣伝に切り替わったテレビの画面から後ろにいる傑に視線を動かして、俺は髪を弄る傑の手を指を絡めて離させながら首を振った。
どこのどいつか知らねぇけど、新年くらい誰かを殺そうなんてこと考えねーで大人しくみかんでも食ってりゃいいのに。
「それじゃ色々忙しないだろ。久しぶりの休みだし…、ゆっくりしたい」
「じゃあもう寝るか?」
喋ってる途中で欠伸した俺に小さく笑いながら、傑が俺の手からグラスを抜き取って中身を空けた。確かに酒入って若干気分良くはなってるけど、年越しを寝て過ごすとかナシだろ、やっぱ。
「寝ない」
「眠いんだろ?」
「年越しに寝るとかありえねぇだろ」
「ふーん?」
タン、と音を立てて俺のグラスをローテーブルに置きながら、傑が悪戯っぽい笑みを浮かべて欠伸のせいでちょっと涙目になってる俺の顔を覗き込む。
「じゃあ…目が覚めるように、イイコトしてやろうか」
「…悪戯の間違いだろ」
髪を梳いた傑の手がするりと首を撫でるのにぞくっと背筋を震わせながら、わざと冷めた感じで憎まれ口を叩くと「よくわかったな」、冗談ぽく囁いた傑が軽く身を引いて膝を開いた。
酒のお陰で気分も良いし、誘われるまま脚の間に出来たソファのスペースに座り直したら後ろから抱きすくめられて、器用な指が片手でシャツのボタンを上からぷちぷち外していく。
「ちょ、手ぇ冷た…んぁっ」
「悦が熱過ぎンだよ。…そんなに飲んだか?」
片手で俺の腰を抱きながら、耳元で囁く傑の冷たい指先が緩く乳首を摘まんで、酒の所為で熱を持った体に響く刺激に俺は小さく体を跳ねさせた。
「っふ…まだ、さ…本、くらい…っ」
「じゃあ、まだイケるよな?」
言いながら傑はソファの下に置いていた酒瓶を持ち上げると、水みたいに透明度の高い酒を1口呷って俺の体を反転させる。
そのまま対面座位みてぇな格好にさせられて、傑の脚の上でその腰を膝で挟むように座り直した俺の口に、傑は冷たい舌と一緒に温くなった酒を流し込んだ。
「ッん、んンっ…ん…ふ、ぅ…!」
「……」
流し込まれた酒が喉を通った瞬間、液体が触れた場所が熱く燃えるような熱を感じて、思わず眉を顰めた俺を宥めるように舌を絡めた傑の指がくり、とさっきまで弄られてたのとは逆の乳首を押しつぶす。
「は、ぁふっ…傑、…んっんんッ」
「…ホント好きだな、“ココ”」
「違、…ッぁうう…!」
くにくにと指先で痛いほど嬲られながら囁かれて、咄嗟に首を振ったら小さく笑った傑に強い刺激に赤く膨れたそこをすりすりと指の背で撫でられた。
関節の凹凸とか、腹とは違う皮膚の感触に思わず脚が震えて、傑の腰を挟む膝に力が入るけど傑は涼しい顔で俯いた俺の顔をくい、と指先で持ち上げる。
「ちょっと触っただけでこんなにしといて、何が違うって?」
「っ…わかってン、なら…脱がせろよ…っ」
唇に触れた指先に緩く歯を立てながら挑発するけど、傑は薄く笑ってちゅく、と濡れた音を立てながら俺の鎖骨に吸いついた。
かりり、と薄い皮膚を挟んだ鎖骨に歯を立てられながら、さっき噛みついた指先に爪先でカリカリと乳首の先端を引っ掻かれて、むず痒いような快感に傑の上で身を捩るけど、傑は相変わらず上半身を弄るばっかりで核心には触れてくれない。
「傑、も…っは…キツ、いから…っ」
「ん?」
「さ、わって…っ」
空いてる傑の手首を掴んで、スウェットを押し上げてるモノの上に引き寄せながら囁く。たっぷり意識して掠れさせたそのおねだりを、でも傑は軽く笑っただけで聞き流して俺に手を掴ませたまま、もう一度口移しで酒を俺の唇に流し込んだ。
「ん、ん…っふぁ…傑…!」
「零すなよ、勿体ねぇな…」
受け止めきれずに端から零れた酒を追って、至近距離で囁いた傑の唇が顎をなぞって、濡れた鎖骨を辿って、はしたなく膨れた乳首の周りを舌がぬるりと舐める。
「っふ、…んぁ、あ、あ…ッ」
「なぁ、知ってたか?もうその辺の女よりよっぽど感度イイぜ、悦のココ」
「そ、んなことな…ぃ…ッひぅ…っ」
「そうじゃないならどーしてこんな風になってんだ?ほら、…見ろよ」
甘ったるく掠れた声に促されて、俺はとんとんと傑の指先がノックするみたいに叩いてる自分の胸板に視線を落とした。
傑の唾液で濡れたそこは部屋の明かりに照らされて卑猥にてらてら光って、さっきから責められてる乳首だけがはしたなく赤く膨れてて、…見た事を心の底から後悔した。
「ッ…!」
「舐めて欲しくてしょうがねぇんだろ?なぁ、悦」
「っは…ぁ、あっ…あぁあ…っ」
言いながらまた、乳首に触れるか触れないかのギリギリのところを尖らせた舌先でつぅと撫でられて、背筋が震える。さっきから触って貰えて無い乳首がじんじん熱を持って疼きだして、俺は傑の肩に縋りながら何度も頷いた。
「、て…っ舐め、て…ッ」
「……」
「はぁ…っす、ぐる…傑…!」
「いい加減覚えただろ、おねだりの仕方くらい」
俺に手首掴まれたままの手でするすると剥き出しになった脇腹を撫でながら、少し低い声で囁いた傑の唇がかぷりと耳を食む。
軟骨をくにくに噛まれて、それだけで手も満足に動かせなくなるくらい甘い痺れに犯される俺を深い藍色で笑いながら、触って欲しくてやらしく震える乳首を引っ掻く真似をして俺を煽る。
「俺、の…っち、くび…舐めて…っ」
「舐めるだけ?」
「っんん…吸って、か…噛む、のも…っ…いつも、みたいに…ッ」
我慢出来ずに傑に教え込まれたいやらしい言葉でねだった俺に、傑は軽く唇の端を吊り上げると、見せつけるみたいに伸ばした舌でべろりと乳首を舐めた。
下からゆっくり舐めるのを何度か繰り返されて、神経が剥き出しになったのかってくらい敏感になったそこにちゅう、と吸いつかれて根元を歯で挟まれる。
「はぁっあ、あ、…ッひ…ぃ、痛…!」
そのままカリ、と強く歯を立てられて、根元に走った痛みに思わず体が跳ねる。痛いのに、相変わらず噛まれたままのそこは痛みまで悦ぶみたいにじんじん疼いて、俺は荒い息を吐きながら傑の髪を掴んだ。
「すぐ、痛…痛ぃ…っ」
「噛んで欲しいんだろ?」
「あァっ…!…は、ぁ…ゃ…っ痛く、しないで…っ」
薄く歯型のついたそこにまた噛みつかれて、痛みに涙が滲むのを感じながら傑の髪を引っ張る。引き剥がしたいのに敏感な場所をしつこく責められたせいで力なんて少しも入らなくて、結局ねだるように髪をゆるく引く事しか出来なかった。
「はぁ、は…ぁ、んン…っふ、ぁ…!」
「…気持ちイイ?」
「ん、んぅ…ッ」
「だろうな。もうぐしょぐしょなんだろ?この中も」
頷いた俺に薄く笑った傑が、スウェットを脱がされてすらいない脚の付け根をゆっくり撫でる。傑の言う通り、さっきから少しも構って貰えて無いそこは下着ン中がぐちゃぐちゃになるくらい出来あがってる。
ちょっと触って貰えればイケそうなのに、意地悪な傑の手は散々付け根を撫でて煽るだけ煽るとすっと離れて、摘まんだ乳首を指をすり合わせるみたいに嬲る。
「あ、…も、そこ…ばっかり…っひぁ!?」
「…あぁ、これか」
痛いくらい摘ままれたそこを舌で優しく撫でられた瞬間、乳首から頭まで電気みたいな快感が走って、何が何だか分からずに目を見開いた俺を上目遣いに見上げた傑が、極悪な面でにやりと笑った。
「ちょ、っと待っ…な、何し…んぁあっッ」
「やっと慣れて来たな。この調子ならこのまま乳首だけでイケんじゃねぇ?」
「ふざけっ…あぁッ!…そ、なの嫌…ふぁぅうッ!」
こんなところでイって堪るかって傑を睨む俺の内心とは正反対に、体の方は硬くしこった先端をすり潰されたり指先で引っ掻かれる度にモノを触られたみたいに跳ね上がって、体を駆け上がる快感が止まらない。
「待っ…ほ、とに…ッイき、そ…!ぁあッ…な、んで…ッ」
「淫乱なのは知ってたけど、乳首でイクほど酷いってのは俺も知らなかったな」
「う、るさっ…あ、ぁ、あッ!や、…やめッ…も、触んな…ひぅうッっ」
こりこり乳首を弄りながらからかうように囁かれて、噛みつこうとした瞬間指先でぴんと膨れたそこを弾かれて体中の力が抜けた。これはヤバい、この気持ちよさはヤバいって必死に止めようとするのに、傑は手を止めるどころかじんじん疼くそこを慰めるように熱い舌でちゅるりと先端を舐める。
嘘、だろっ…俺、こんな…っ
「変な意地張ってンじゃねぇよ。気持ちイイんだろ?」
「って、こんな…ッ…あぁあッ!そこ、ダメ、だめ、だからぁ…っ!」
「いい加減キツいだろ、ここも。…イケよ、悦」
「ゃ、やだっ…ぁ、はぁあッ…嫌、ぁ…あ、あぁああッ!」
耳元で囁かれながらぐり、と乳首を摘まんだ指を捻られた瞬間、目の前で真っ白な光が弾けた。
射精とよく似た快感が背筋を駆け上がって、でも射精とは違ってドライでイった快感は重く体の奥の方にゆったりと居座ってなかなか引かない。
「はっ……ぁ、は…ッ…!」
「よくできました」
ぐったり傑に縋りついたまま、虚ろになった目から涙零しながらはくはく浅い呼吸を繰り返す俺の頭を優しく撫でて、甘い声で囁いた傑の手がするりとスウェットの上からモノを擦る。
「ひぁ…ッ!」
「こっちもイカせてやるよ」
「だめ、今…いま、はっ…んやぁああ!」
いくらドライでイったって言っても、出してもいない体は治まらない。その上、ドライでイった時の余韻が俺の中にはまだたっぷり残ったままなのに、傑は掠れた声でそう言うなりスウェットの上から容赦なく俺のモノを扱き上げた。
ぐしょぐしょに濡れた下着が手を動かされる度にカリに引っ掛かって、濡れた布がぐちゃぐちゃ音を立てながら絡みついてくる。スウェットごしの指先に裏筋を押しつぶされて、かりかり先っぽを引っ掻かれて、頭ン中を掻き回されてるみたいな快感に、俺は悲鳴に近い声を上げながら傑の肩に爪を立てた。
「あぅううぅッ…!も、もぉ…無理、イ、いっちゃ…ッひぁ、あ、あーっ!」
ぎゅう、と下から搾り取るみたいに扱き上げられながら布ごしに尿道口を引っ掻かれて、さっきも見た真っ白なスパークを瞼の裏に見ながら、俺はやっとまともな射精を許された。
…これで少しは楽になるって、そう安心した、のに。
「っぁ…あ、…あ…っ」
「凄ぇな、スウェットにまで染みてる」
「ッゃ、…さわ、んな…っあぁあぁぁッ!」
「ん?」
傑が先走りやら精液やらで色が濃くなったグレーのスウェットを下着ごと引き下ろした途端、体中をまた駆け上がった快感に、俺は体を反らせて嬌声を上げる。
精液でべたべたになったモノの先からたらりと先走りが零れて、イッたばっかりで半勃ちだったモノがひくひく震えた。勿論、精液なんて出て無い。
「またドライでイった?」
「はっ…ぁ、あ…す、ぐる…っ、!」
2度目の空イキに力の入らなくなった体で傑に縋りながら、震える手で傑の服を握り締める。最初に空イキした時からずっと、まともにイケば治まると思ってた快感が少しも治まらなくて、それどころかもっと酷くなって神経を焼く感覚が怖くて涙が溢れる。
「な、で…?…すぐ、る…っ」
「あー、大丈夫大丈夫。変なやり方でイった所為であり得ねぇくらい敏感になってるだけ。今ならどこ触られても、」
言いながら傑の手がするりと脇腹を撫でて、いつもなら少しむず痒い程度で済む筈のその刺激が、中のイイトコロを擦られたみたいな快感になって体中を犯した。
「んぁあぁッ!?」
「―――イケるだろうな、多分」
傑に縋りついたままびくびく跳ねた俺を眺めながら、傑はそう言って笑うと息も絶え絶えな俺をソファに仰向けに押し倒した。
中途半端に脱がされたシャツが擦れるのにすら体を跳ねさせる俺からスウェットごと下着を剥ぎ取って、腰に跨ったまま自分も服を上だけ脱ぐと、ぐったりソファに沈んだまま焦点を合わせられない俺に触れるだけのキスを落とす。
「えーつ、まだ寝ンなよ」
「は、ぁ…あ…っ…?」
「お楽しみはこっからだろ?」
悪戯っぽい笑みと正反対のギラついた嗜虐的な目に、ぞわりと背筋に甘い痺れが走った。
「ゃ、やぁあっ…あ、ぁ、あぁあッあーっ!」
ずぐり、と宛がわれた熱くて硬いモノが中を押し開いて、さっきまで入れられてた指3本とは桁違いの質量に、全身にぞわっと鳥肌が立つ。
傑に抱えられて移動させられたベッドの上。解されてる最中もあり得ねぇくらい敏感になった体は指が少し前立腺に触る度に何度も何度もイって、もう指1本動かすのも気怠いくらいだったのに、奥の奥まで犯されてく快感に俺は背を反らせながら震える手でシーツを握り締めた。
「はっ…ぁっ、あ…ッ!」
「…きっつ」
カチカチ奥歯を鳴らしながら荒い息を吐く俺の耳元、力なんてもう入らない俺の脚の裏に手を差し入れて持ち上げながら、傑が小さく呟く。虚ろな視界の中で赤い舌が唇を舐めて、とんでもなくエロいその仕草にまたじわりと熱が上がる気がした。
「動くぜ、飛ぶなよ」
「ひぃ、いッぁあ、あ、あッ…!」
低く掠れた声で囁かれた、と思ったら深く腰を使われて、浅いトコまで引かれたモノにずぐ、と奥を突かれる愉悦に一瞬目の前が白く染まる。
硬い傑のモノはバイブとか指よりずっと的確に俺の性感帯を刺激して、カリが前立腺を掠める度にガチガチになった自分のモノが跳ねるのが解った。突かれるどころか動かれる度に何度もイきそうなくらいだけど、イキ過ぎて気を失わないようにって俺のモノには尿道バイブなんかより酷いモノが詰め込まれてて、精液なんて1滴も出せなようにされてる。
「すぐ、ぅ…と、てッ…これ…とってぇ…っ!」
「ん、…まだダメ」
取ったらすぐイクだろ?そう言いながら傑は俺の尿道口から垂れてる細いチェーンを持つと、先に小さいボールが付いてるそのチェーンをくん、と引いた。
「ひゃぁあぁあッ…っぱ、らな…ッは、ひ…っぃい…!」
チェーンの先に付いたボールは俺のモノの中、普段からバイブやら棒やら突っ込まれて、すっかりそこでの刺激にも慣れさせられた俺の尿道の半ばまで埋められてる。
いつも使われてるバイブより1周り大きいボールは、入れられる時こそ少し痛かったけど外側から裏筋を扱くようにして奥まで入れられてからは完全に馴染んで、今じゃ小さな違和感しか無い。
精液どころか先走りの1滴も出ないくらい、狭い管の中をいっぱいにしてるボールがチェーンに引かれて中でず、と少しだけ動いて、弱い粘膜を擦られる刺激と堰き止められた欲が少しだけ出るような感覚に、背筋を甘い電気が引っ切り無しに駆け上がる。
「気にいった?コレ」
くん、くん、とチェーンを引かれて中のボールを少しずつ引っ張り出される度、きゅうきゅう中を締めつける俺にくすくす笑いながら、傑がシーツに縋る俺の手を剥がさせて代わりに少し長いボールチェーンの端を握らせた。
「リングじゃ長い間はつけてらんねぇし、バイブとかスティックじゃ邪魔だからな」
何をするのに邪魔なのか、ってことを俺が不思議に思う前に、チェーンを手の中で滑らせた傑の指がひくひく震える俺の尿道口を指の腹で優しく撫で上げる。
「ひァあぁッ!?だ、だめっ…そこ、は…ゆるしッ…あぁああッっ」
「好きだろ?ここ弄られんの。これならずーっとイジメてやれるぜ」
1回もイケないままな、俺の耳元でそう付け足しながら、傑の指が中のボールの位置を確かめるみたいにつぅっと俺の裏筋を撫で上げて、敏感なカリのすぐ下をくりくり苛めてから、もの欲しそうにひくつく尿道口をゆっくり上下に撫で擦る。
「はひ、ぃいぃッ…!ぃやぁ…やぁああ…ッあ、あーっ!」
「嘘吐け。さっきから食いちぎりそうなくらい締めつけてるクセに」
空イキを繰り返してびくびく跳ねるモノをぴん、と弾かれて、目の前がチカチカするような快感に本当におかしくなるんじゃないかと思うのに、傑は揺するように小さく腰を使いながらまたチェーンに手を伸ばして、半ばまで来てたボールをずず、と引き上げた。
ゆっくり精液がせり上がってくる、普通じゃまずあり得ない感覚に背筋が震えて、シーツに爪を立てながら抜いて、取って、って泣きじゃくるけど、傑はそんな俺の哀願をあっさり聞き流して、先っぽから黒いその姿が見えそうなくらい上がって来てたボールを、裏筋に手を添えてまたゆっくりと奥まで押し込めてく。
「やだ、やだぁああッ…いれ、な…いれな、で…ッゃああァあ!」
ぐり、ずり、と敏感な粘膜を擦りながら金属のボールがゆっくりと奥に入り込んで、もう少しで出せそうだった精液も一緒に押し戻される。握らされたチェーンを引いて抵抗しようとするけど力の入らない手じゃ逆らえる筈も無くて、細いチェーンにすりすり尿道口を擦られながら根元近い所まで埋められた。
「ぁッあ…っはく、ぅうぅ…!…も、ィきた…っ」
「せっかく奥まで入れてやったんだからもうちょっと楽しめよ。さっきみたいに撫でられるのと、爪で浅いトコだけぐちゅぐちゅされるの、どっちがいい?」
「ひぅ…っうぅ…や、ぁ…ど、ちも…やだぁあぁ…ッ」
強すぎる快感が辛くて、俺は泣きじゃくりながら小さく首を横に振る。ずっとイキっぱなしは嫌だけど、こうやって精液だけ堰き止められて空イキばっかり繰り返されるのは、終わりが無いから余計に辛い。
「はっあぁ…あたま、へん…なる、からぁっ…出さ、せてぇ…ッ」
「じゃあ、自分で抜けよ」
朦朧としてきた意識の中、舌ったらずな声で懇願する俺に傑はあっさりそう言って、俺の手にもう1度ボールチェーンを握らせた。
「誰も抜くな、なんて言ってねぇだろ?」
「ら、って…ひくっ…かって、とったら…また…おしおき…っ」
「今日はしねぇよ。だから、嫌なら自分で抜きな」
しゃくりあげながらこれ以上お仕置きまでされるのは嫌、って微かに首を振る俺の頭をくしゃりと撫でて、傑は声だけは蕩けるように優しく言いながら俺の頬にキスを落とす。
「…まぁ、出来ればの話だけどな」
「は、ぇ?…ッあ!待っ…アぁあぁああッ、あ、あぁあっ!」
ぼそりと呟かれた言葉が聞き取れずにうっすらと目を開いた瞬間、がくんと体が揺さ振られて、それまで慣らすみたいに緩やかだったピストンが深く早くなる。
なんとかチェーンは離さずにいたけど離していないだけで、力の入らない指はチェーンを引くどころか手の中で動くそれを掴み直すことも出来ない。
「いいのかよ、抜かないで。いつまでもイケないぜ、そのままだと」
「こ、なっ…あッ、あ…む、り…っ!うご、かな…ッ、ふぁあぁッ」
「散々生殺しで放置しといてこれ以上待てってか?…冗談だろ」
熱を孕んで掠れた声で呟くなり噛みつくようなキスで唇を塞がれて、根元から絡め取られた舌を強く吸われると、元からぼやけてた頭の芯に更に霞がかかった。焦点の合わない視界がじわりとぼやけて、体の中と同じように舌をぐちゃぐちゃに愛撫される気持ちよさに、傑に抱えられた脚がびくびく跳ねる。
「ぁふっ…ぅん、んーっ…んぅうぅーッっ」
「、…ん…」
「んーっ!…っは、ふぁッ…ぁ、ああぁ!」
「…悪ィ悦、もたねぇわ」
傑にされるがまま揺さぶられながら、至近距離で低く囁かれたその言葉に夢中で頷いて。あんだけ締めつけてたのにここまで持つこと自体がまず化け物じみてるって思ったけど、そんなこと言う余裕なんて勿論無くて、俺の肩近くのシーツに突かれてた傑の手に震える指を這わせた。
もう俺が腕も動かせないと思ってたのか(確かにこれ以上は動かないけど)、傑が軽く目を見開いてから薄く笑って、恭しくすら感じる手つきで掬い上げられた手を指を絡めてきゅっと握られる。
「ッあ、すぐる、すぐるっ…ひぁ、んンんッ!」
「ッ…は…、」
絡んだ指にぎゅ、と力が籠って、体の奥に熱いものが注がれるのを感じながら、俺は気も失えないくらい強い快感に握られた指をひくりと震わせた。揺さ振られるうちにチェーンから手は離れてて、許容範囲を超えてるのに出せないままの欲が内側で暴れまわる感覚にかちかち鳴る歯を噛みしめる。
「…ンだよ、結局抜いてねぇの?」
「ひ、ぁ…はくっぅ…す、すぐ…ッ」
浅い呼吸を忙しなく繰り返しながら、もういい加減この快感地獄から救い出して欲しくて絡んだままの手を弱々しく握り返すと、ずるりと俺の中から出て行った傑がちゅくりと鎖骨を吸った。
乳首を掠めて、腹筋の筋をちろりと舐めた唇は更に下に降りて、臍のすぐ下あたりに垂れてたボールチェーンを舌で救い上げると、歯で挟んだそれをゆっくり引き上げて行く。
「はぁ、あ、ぁあぁッ…す、ぐ…んァぁああッっ!」
ちゅぽん、と濡れた音を立ててボールが抜けた瞬間、散々溜めこまされてた精液が半透明な先走りと一緒になってどろりと溢れ出てきて、勢いが無い代わりに長いその射精がじわりと頭を痺れさせる。
「ぁ…、……はぁ…っ…」
「……」
死にそうなくらいの気持ちよさで放心状態の俺の手に指を絡めたまま、傑は濡れたボール付きのチェーンをシーツの上に落とすと、まだたらたらと残滓を零す俺のモノにちゅるりと舌を這わせて、中に残った分を吸いだしてくれた。
「…マジで寝正月になりそうだな」
「は…ぁあ…っ」
顔を上げて、濡れた唇を親指で拭った傑がサイドスタンドの時計を見ながら小さく苦笑する。
それに誰の所為だよって内心で悪態をつきながら、俺は触れるだけのキスを落としてきた傑の唇をちろりと舐めてやった。
離れようとしてた唇がそれに応えてもう1度落とされて、少し苦い舌が絡みつく。ちゅぷ、ちゅく、っていう濡れた音をどこか遠くに聞きながら、俺は傑の手にそっと頭を撫でられる心地よさに目を閉じた。
「…今年もよろしく、悦」
Fin.
新年企画限定小説バカップルひめ始め。
メールにてパスを請求して頂いた限定小説の公開版になります。
請求メールを下さったのに定員の関係でパスをお送りできなかった方、大変お待たせいたしました!
さて新年早々ひめ始めどころか鬼畜プレイで煩悩まみれのバカップルは今日も元気です。
なんだか久しぶりにこういうの書いた気がする…おかしいな、こっちが本職(?)の筈なのに…
ではでは、今年もどうぞよろしくお願い致します。
この2010年が皆様にとって幸多き年でありますように。