「…ん?」
「あいつまたこんなの…ホントにどこまで変態なんだよ…」
「こんな耳まで…」
「…いや、可愛いけどさ…」
「……」
ふわふわのボアで出来たタンクトップと、同じ素材で出来てるやたらと短いショートパンツ。タンクトップは腹が見えるくらい短くて、袖の代わりに二の腕まであるふわふわのハンドウォーマーがついてる。
それから…これは、耳だよな、やっぱ。
「うわ、ちゃんと針金入ってるよこれ…まぁ帽子みてーになってないだけマシだけど…」
白いカチューシャについた白いボアの兎耳。ちゃんと針金が入ってて本物みてーにピンと立つようになってるそれをつけて、俺はクローゼットの傍にある姿見に映ってる自分を改めて見た。
なんつーか、うん…
「…無しだよな、やっぱ」
ガキが着るなら可愛げもあるだろうけど、20歳超えた野郎がこんなモン着てみたって勿論可愛くもなんともない。っつーか寧ろキモい。
あー…童顔の女に着せりゃあ可愛いのかもな。バニーガールの方がらしいのに、意外と可愛い趣味してんじゃねーか。
「…垂れ耳」
…あ、これちょっと可愛い。
針金曲げてぴんと立ってた耳をイイ感じに垂らしてみたら意外と可愛いかった。っつーかホントさわり心地いいなこの生地。パジャマにしたら気持ち良さそう。
「変態は俺じゃねぇか…」
…いい加減脱ご。ってかよく考えたら何してんだ俺。クローゼット漁ってたら出ていたとはいえ着る必要ねぇだろ普通。
バカみてぇって自分で苦笑しながらつけ耳に手をかけた瞬間。鏡の中に今だけはあまり見たくない影が映った気がして、俺はびしりと動きを止めた。
「ンだよ、外すの?」
「…すぐる…いつから…っ」
「ショーパン履く辺りから」
ショーパン履いたのって…順番的に…
「最初っからじゃねぇか!どこ隠れてたんだよ!」
「ずっとここに居たって。ノリノリで着替えてたせいで気付いて無かったんだろ」
「だ、誰がっ…別に俺は、…っつーかお前、どういう趣味してんだよ!」
「ゴシックに貰った。10万するダッチワイフ買ったらおまけについてきたんだってよ」
「貰って来んなよこんなの」
「嫌なら着るなよそんなの」
「……」
確かに。それは正論だ。正論過ぎて二の句が継げない。
何も言えずに唇を噛んだ俺を暫く見つめてから、傑はふっと笑うと寄りかかるようにして手を掛けてた扉を後ろ手に締めて、俺の頭の兎耳をつんと指先でつついた。
「…笑いたきゃ笑え」
「笑わねぇよ」
「……」
…嘘吐け。こんな格好、イイ見せ物だろうが。
ふわふわの感触を確かめるみたいに指先でふにふに耳を摘まむ傑をじと目で睨みつけると、傑は赤い唇の端を吊上げてヤらしく笑って、俺の頬にキスを落とした唇で、
「…笑われたくて着たわけじゃねぇだろ?」
甘く掠れた少し低い声。
こいつの喉から出る音は全部、脳から俺を犯し尽くす性質の悪い媚薬だ。
「…も、脱ぐ」
「させると思うか?」
傑の胸板を突っぱねて顔を背けた俺に薄く笑った傑の手が、引っ込めようとした俺の手首を素早く掴んで引き寄せる。そのまま抵抗できないようにぎゅぅっと抱きすくめられて、それほど力が入ってるわけでもないのにぴくりとも動かない腕の檻の中で俺はこの服を見つけた自分を呪った。
「…気持ち悪ィだろ、男がこんなの着てても」
「普通はそうかもな。でも俺は違ぇの」
最後の抵抗で冷めた事を言ってみても傑には効かない。かぷ、と無防備な本物の方の耳を甘噛みされてぴくりと体を震わせた俺の脇腹をするりと撫でながら、何度見ても見惚れる完璧な美貌を額がぶつかるくらい寄せて、あの甘い、毒を。
「丸ごと食っちまいたいくらい、可愛い」
「…へんたい」
汚れるからって脱ごうとしたショートパンツは膝の辺りで止まったまま、その所為で中途半端にしか開けない両足の膝裏は傑の手に支えられて、目の前の姿見は胡坐をかいた傑の上に座った俺の下半身を丸ごと映しだす。
「あ、…はぁっ…ぁ、ん…ん、…ッ」
こんな露出狂じみた真似絶対に普通じゃない。っつーかふわふわボアの服に兎耳の時点でいろいろあり得ない。頭の中じゃそう解ってるのに、自分の指で掻き回してる中が3本の指を美味そうに咥え込んでるのを鏡ごしに見て先走りを零してる辺り、俺も後ろの変態に相当毒されてる。
「気持ちイイ?悦」
「ン、ッ…」
「どこが?」
「はぁッ…ここ、…んぁ、あ…っゆび、はいって…る、とこ…ッ」
耳朶をくちゅりと舌で嬲られながらたっぷり掠れた声で囁かれて、羞恥心なんて欠片も無しに指を出し入れして見せた俺を傑が喉の奥で笑った。
「美味そうに咥え込んでるもんな。何本入ってるんだっけ?指」
「…ッさ…んぼん…はい、ってる…っんン…!」
「自分じゃやりたがらない割には慣れてるよな。…俺が仕事の時、1人で弄ったりしてンの?」
―――今みたいに、ぐちゃぐちゃ音立てて。
吐息ごと吹き込まれたワントーン落ちた声が、鼓膜から頭ン中を直で犯してく。じわりと滲んだ先走りがサオを伝い落ちて行くのに体を震わせながら、俺は鏡の中の藍色に緩く首を振った。
「お前が、いつも…っこう、やるから…じぶん、じゃ…こんな、スるわけ…ッ」
「ふーん?」
気の無い声で頷いた傑の唇がゆるりと弧を描く。愉しげにギラつく藍色は鏡の中で指を出し入れする度に甘ったるい声を吐く俺を見て軽くそれを細めながら、散々嬲られた俺の耳元で、内緒話みたいに潜めた声を吹き込む。
「嘘吐きにはお仕置きするって、前に言ったの聞いて無かった?」
「ッ…ぅ、そじゃ…」
咄嗟に首を振った俺を鏡越しの視線で黙らせながら、傑は俺の右足から離した手でまだ頭にくっついたままの兎耳を軽く撫でた。
「尿道にバイブ突っ込んで、動けなくなるくらい空イキさせるくらいじゃ“お仕置き”には足りなかったか、やっぱ」
「す、傑…っ」
「ンな可愛い顔すんなって」
困ったように笑って、傑は鏡越しじゃなく、肩越しに振り返ってその横顔を見上げた俺の針金の入った兎耳を、くにゃりと手の中で曲げる。
「俺がこんなに可愛い兎サンを苛めるような外道に見えるか?」
それだけで骨抜きになりそうな甘い声で言いながら、傑は俺の体を片手で軽々と抱き上げると立ち上がった。急に地面を失ってそのシャツに縋りついた俺の頬に軽く音を立ててキスを落とすと、衣裳部屋の隣にある寝室のベッドの上に俺を優しく寝かせる。
「い、イジメないんだろ…っ?」
「勿論」
思わずシーツの上で後ずさった俺に飄々と頷いた傑は、口ではそんなことを言いながらベッドの下の黒い箱を床の上に引き出すと、その中からオレンジ色の円筒を取り出した。
見覚えのないシルエットに傑を見上げるけど傑は答えてくれない。得体の知れないそれをベッドに投げ出すと、同じ箱の中から黒いゴム紐と瓶を取り出して、距離を取ってた俺の体を足首を掴んで引き寄せる。
「ッ…じゃ、なんで…そんなの…!」
俺の両足を太股を膝で押さえて開かせて、怖いくらい手際よくゴム紐を俺のモノ
の根元から先端にかけて網目状に絡めながら、傑は非難の声を上げる俺に軽く首を傾げて見せた。
「ペットの躾は飼い主の仕事だろ?」
「そんな、だって…ッぁ!」
カリのすぐ下まで巻きついたゴム紐がキュウ、と引き絞られて射精を邪魔する拘束具に変る。咄嗟に伸ばした手は両手首を掴まれてシーツに押し当てられて、鎖も紐も使わずに俺の動きを止めた傑は涼しい顔で黒い瓶の栓を口で開けると、縛り上げられた俺のモノの上に垂らした。
冷たさに身を竦める暇もなくどろどろに濡らされたモノにあの円筒が押し当てられて、外見よりも狭い中に一気にモノを根元まで呑み込まれる。
「ふぁ、あッ!…っや、やだ…すぐる…ッ」
ぐちゅり、と音を立てた円筒の中には柔らかいシリコンの襞がびっしり敷き詰められてて、もう1年近く御無沙汰してる女の中に似た感触に腰が跳ねた。
射精できないのにオナホ着けられるなんてどう考えても拷問でしかない。首を振って懇願する俺に、傑は手を伸ばしてふにゃりと垂れてた俺の頭の兎耳をぴんと伸ばすと、俺の頬を優しく指で撫でた。
「こんなに立派な耳があるんだから、今度はちゃんと聞けよ?」
「ッ…だから、ホントに…嘘なんかじゃ…、」
…カチリ。
どぎついオレンジ色をしたオナホから響いたその小さな音を鼓膜が拾うのと同時に、嫌な機械音を響かせた円筒の(俺にとっては)拷問器具が動きだす。
「ひぁッ、ぁ、やっ…やめ、ンあぁあッ…!」
「嘘を吐くのはイケナイことだって」
もがく俺を片手と両足で簡単に押さえこみながら、傑は愉しげに言って搾り取るような襞の動きに震える俺の奥を濡れた指で撫でた。
そのままつぷりと入り込んだ傑の指は俺の指じゃ届かない深い所まで入り込んで、ただでさえ出せないまま苛まれてる俺を更に追い上げるように前立腺をこりこりと刺激する。
「あぁああっ、ぁ、あッ…!や、ゃだっ…あぅうッ」
「もう二度と忘れないように、頭だけじゃなくて体にもじっくり教え込んでやるから」
甘ったるい声でそう囁かれながら抜かれた指の代わりに宛がわれた熱いモノに、背筋が震えた。
天国みたいな地獄に叩き落とされる恐怖と、期待の、両方に。
度を越した快感にぴん、と張った俺の足を見せつけるように舐め上げながら、入口を抉っていた傑のモノがごつ、と骨まで届く勢いで突き入れられる。
「あッ!ぁ、あっ…は、ひっ…ひぁっ…!」
「っ、…悦…」
「あぁあッふぁ、あぁっ!あーッ、あぁあー…ッっ」
膝が胸につくくらい折り曲げられた俺に真上から突っ込んで熱い欲を注ぎながら、さっきまで俺の太股を這ってた傑の舌が赤い唇を舐めた。
「は、はぁッ…す、…るぅ…!も、…イき、イキた…っだ、ださ、せてぇ…!」
「出すって、何を?」
オナホを着けられたまま傑に犯され続けて、俺はもう体も中身も限界。オナホの先に開いた穴からひっきりなしに漏れる白濁混じりの先走りで体中を濡らしながら、考えられるのはもう、紐を解いて貰った後の解放だけ。
「せ、えき…ッぁ、あ、…ひ、ひも…っひも、…とってぇ…ッせぇ、し…ださせ、てぇ…っんぅう!」
モーター音を響かせながら動き続けてるオナホを力の入らない指でかりかり引っ掻きながら哀願するけど、傑は愉しげに俺を見下ろしながらさっき出したばっかりだってのに萎える気配も無いモノでぐちゃり、と中をかき混ぜた。
最低でも5回分は注がれてぐちゃぐちゃの中から溢れた精液が、持ち上げられた腰に伝う。その感触すらもう堪らなくて、俺は涙を溢れさせながら嫌々と首を振った。
「…お前のその顔見てたら何回でもイケる気がする」
「や、やだ…もう…っあぁ、くるし…ひぁああぁ…っ!」
言葉通りに再開された律動に力の入らない体を揺さ振られて、嫌ってほど擦られた前立腺をまたごりごり刺激されて、ぐねぐね蠢くニセモノの粘膜に裏筋からカリから感じる所全部を滅茶苦茶に扱かれて、目の前が真っ白になる。
このまま死ぬんじゃないかってくらいの快感が辛くて怖くて傑に縋りたいのに、気持ち快すぎて指1本動かせない体じゃ傑の動きに合わせて痙攣するくらいしか出来なくてもっと涙が溢れた。
「そんな顔で泣くなよ。…ヤリ殺したくなる」
「ひぁぅうう…ッゆ、うひて…も、…も、やらぁあ…!」
「コッチは悦んでるけどな。また嘘吐いてンのか?この淫乱兎は」
「ちが、ちがぁ…ッ」
傑に着け直されてまだ頭についたままの兎耳を咥えながら藍色の瞳を鋭く細められて、俺は泣きながら首を振る。今以上の地獄なんて俺には想像も出来ないけど、傑は知ってる。
俺を今以上に酷い地獄に叩き落して狂わせる方法を、いくつも。
オナホの代わりに傑の舌で責められたら。先走りを溢れさせる尿道にバイブを突っ込まれたら。着せられたままのベストに擦られた乳首に薬を塗り込まれて指先に嬲られたら。この全部をいっぺんにされたら。
「あぁッ、ぁ、…あっ…や、…ひぃっ…、…!」
「ん、…悦?…え、――――」
勝手にした想像に傑のモノを締めつけた所為でダイレクトに来た前立腺への衝撃に、元々霞がかった意識が遠のいた。傑の声がゆっくりと遠のいて、目の前が暗く、
…ぐちゅ、ぬちゅっ、
「ッあ、……ぁあぁあッ!?」
「おかえり」
全身を苛む快感から解放されたのはほんの一瞬だけ。同じ快感で現実に引き戻された俺を、差し込んだ指で前立腺を抉りながら奥深くまで犯す傑が、やってることとは正反対に優しいキスで出迎えた。
「はッ、ひ、ひぁッ…!ぁ、あーッ、あ、ひぁあッ!」
「失神してもいい、なんて俺が一言でも言ったか?」
「あぁッ!あ!ごめ…さ…ッぁ、ゆ…ひて…ゆる、て…くらさ…ぁ…ッ!」
「嘘吐きの言葉なんて信用できねーな」
血が滲みそうな喉で必死に許しを請う俺をあっさり突き離した傑の指が、開きっぱなしの俺の口に入り込んで震える舌を絡め取る。とうとう言葉まで封じられて、俺はしゃくりあげながら虚ろな目の焦点を必死に傑に合せた。
「あ、ぁっ…しゅ、ぐ…しゅぐぅ…ッ」
「…もう、俺に嘘吐かないって誓えるか?」
滲んだ視界の中で傑が囁く。オナホの動きは最初と比べて大分弱々しくなってたけど、スタミナ切れなんかとは無縁の傑のモノに貫かれた俺の内側から、入り込んだ指が充血してるんだろう前立腺のしこりをくすぐった。
「ち、ちか…っひぁあ…ちか、ます…あぁ…っちか、ぅ…からぁ…ッ」
「信じてやるよ」
低い声で呟いた傑のモノがじゅぷりと奥深くまで突き入れられて俺の中にまた熱い精液を注ぎ込む。
「ぁ、あ、ぁあ…ッひぃん…っ」
その刺激にすら意識を飛ばしかける俺のモノからオナホをゆっくり抜き取って、ローションとか先走りとかでびちゃびちゃの先っぽを、意地悪な指先が円を描くようにゆっくり撫でた。
刺激され続けた粘膜にはそれすら電気を流されたみたいで、しゃくりあげながら悲鳴も上げられずに指先をひくつかせる俺の頬に、傑の唇が小さな音を立てて触れる。
「頑張ったな、悦。辛かった?」
「っも、…うそ、ゆわな…ぃ、からぁ…ッと、て…ひも…ッイき、た…すぐ、ぅ…ッ」
「…イイ子だ」
掠れた声で泣く俺の頭を優しく撫でて触れるだけのキスを何度もくれながら、傑の指がゆっくりゴム紐の結び目を解く。
「あッ、あっ…、ッ…!」
締めつけが緩んだ瞬間から溢れだした精液を傑は優しく最後まで扱きだしてくれて、ご褒美の甘い甘いキスを受けながら、俺はひくりと腰を震わせた。
「ん…っ…」
薄いピンク色の湯の中。中にたっぷりと注ぎ込んだ精液を慣れた手つきで掻き出す傑の腕の中で、意識を無くした悦の体が小さく身じろぐ。
「…んぅ……」
「……」
長時間快感に晒されて疲れ切った体は意識までは取り戻さない。傑の肩に頭を摺り寄せて再び動かなくなった悦の中から残りの精液をゆっくりと掻き出し、傑は最初よりもうっすらと濁ったように見える湯の中で悦を抱き直す。
くったりと寄り掛かってくる悦の腰を支えてやりながらバスタブに背中を預け、濡れた手でぐしゃりと前髪を掻き上げた純血種は、少しの空白の後濡れた手で目元を覆ったまま小さく舌打ちした。
「…尻尾忘れてンだろうが、この間抜け」
Fin.
盛り過ぎて最も(?)重要なオプションを忘れてしまった純血種。実はふわふわぽんぽんうさぎしっぽ付きバイブも完備してたのに。
オチは珍しく事後処理で。
刺激しまくるのも得意ですが一切刺激しないことも出来る傑。悦が寝てる(起こしちゃダメな)時だけ見せるテク。鬼畜も甘々も全ては注ぐ愛故に。