ビタァ・スウィート



 医局『過激派』の治療室。
 強制連行された俺は、椅子の上で放っといたって3日もすりゃあ治るような傷をナースにチクチク針で縫われてる。
 白衣は男のロマンとか言うけどここの連中は別だ。傷を縫い合わせる手つきは上手いけど、白衣の丈からギリギリ覗くようなミニスカートから伸びる太腿には鋭いナイフが巻きつけられてて、動こうモンならそのナイフで威嚇してくるから怖くてしょーがねぇ。
 医局が嫌われてる理由はこの看護師の完全武装にあると思う。てか絶対。

「あら。お久しぶりね、悦」
「…ども」

 傷を縫い合わせた糸をナイフで切っているナースの後ろから、女王様が顔を出す。


 医局に女王様なんて普通じゃありえないけど、コイツの外見はホントに女王様にしか見えない。張り付くよーな白衣と、その胸元から見えるレースのブラ。黒い革のスカートは激ミニで、足には網タイツ。靴は高いヒールで真っ赤。腰から下げた薔薇鞭と来れば、どう頑張ったって医者には見えない。

 こんな女が医局長だって言うんだから、ここの常識はとことん捻じ曲がってる。

「お仕事?」
「・・・まーね」

 俺はこのカルヴァって女医が苦手だ。
 確かに美人だしファンクラブなんてのもあるらしいが、何せコイツの本性は、

「だと思ったわ。傑ならもっと芸術的で、貴方の苦痛に歪む顔が浮かぶくらい陰惨かつ痛点を抉るような的確な傷をつけるだろうから」

 …にっこり笑ってこんなことをスラスラ言っちまう、超級のサド。


「それで、最近どうなのかしら?傑とは」
「別に…普通、じゃねぇの?」

 探るよーな目が居心地悪い。何だよ、また傑が変なこと吹き込んだとか?

「…残念ね」
「は?何が」
「マンネリはよくないわ。丁度いいものがあるから、ありがたく受け取りなさい」

 人の話を聞かないカルヴァが取り出したのは、黄色い紙のパッケージに包まれた薄っぺらい長方形の食い物。

「…チョコ?」
「見た目はね。媚薬なのよ、このチョコレート。これを傑に食べさせて、いつもより激しく可愛がってもらいなさいな」

 1人で勝手に楽しそうなカルヴァは、俺の手にチョコを押し付けると次の患者が来ると言って俺を廊下へ叩き出した。

「……」

 廊下にぽつんと立ちながら、強制的に握らされたチョコのパッケージを破いてみる。
 確かに、どっからどう見てもチョコだ。これなら傑でも気づかないような気が…する。

 …でも、問題が1つ。


「…どーやって食わせっかなぁ」

 傑は甘いモノが嫌いだ。










「バレンタインデーでもねぇのにチョコ?…俺甘いモン駄目なんですケド」

 頭をタオルで拭きつつシャワーから出て来た傑は、チョコ型媚薬を見てあからさまに眉を顰めた。

「限定品で、レアだから食ってみろってよ」
「ふーん」

 傑はパッケージを一度だけ見て、それをテーブルに置こうとした。当然の反応だけど、今日はそれじゃあ困る。
 チョコをテーブルに置こうとした手を掴んで止めれば、きょとんと見下ろしてくる瞳。

「…食えよ」
「はい?」
「ちゃんと食わせろって言われてンだよ。だから、今ここで、食え」
「…えー…」
「えー、じゃなくてッ」

 本気で渋る傑に、俺はその手からチョコを奪い取った。チョコを割ると、それを歯で咥えて傑のシャツの襟元を引き寄せる。

「痛ェって、何す―――」

 首を押さえて抗議する傑の唇を塞いで、舌でチョコを傑の咥内へと押し込めた。
 そのまま舌を絡めてどろどろになるまで吸って唾液絡めて飲み込みたいけど、カルヴァの媚薬なんて死んでも飲みたくないので我慢してそのまま口を離す。

「…どーよ?」
「……別に、ただクソ甘いだけのチョコだけど」
「美味くねぇ?」
「全ッ然」

 あ、そうですか…。
 まぁ、いいけどさ。そもそも俺はチョコなんてどうでもいいし。

 後味が気に入らないのか、傑は不快そうな表情でテーブルからコップを引き寄せると、俺の足元に座りながらそれを飲み干し、空になったコップをテーブルに戻す。
 何となくそれを眼で追っていた俺は、また何気なく視線を元に戻して、


 ―――押し倒された。

「ぅわっ…ちょ、…傑…ッ?」
「慣れねーモン食ったからかなぁ…なんか、こう…違和感が、さ?」
「へ?…違和感?」
「あー…何かもうイイや。取りあえず、」

 勝手に話して勝手に納得しやがった傑は、ダルそーに言うと俺のシャツの裾からするりと手を忍び込ませる。

「と、取りあえずって…!」
「ん、取りあえず抱く」

 …はぁああぁぁあっ!?

「な、ななな何…何で…ッ?」
「いーじゃん、別に。いつものことだろ?」
「傑ッ!」

 最後の抵抗で叫んでみるけど、腰の上に乗られちゃ身動きなんて取れないわけで。

 それを知っている傑は、ボタンを外すのも面倒なのか半ば引きちぎるように自分の襟元を開けると、着ていた黒いシャツを頭から脱いで床に叩きつける。

 行動にいつもより余裕が無いってか…荒々しいって言うか…。


「多分俺、手加減できねーから。よろしく」
「……ッ!」

 媚薬の効果をチョコの所為だと思い込んでやがる傑も大概バカだが、この展開は絶対にヤベぇって思いながら、いつもより眼をギラつかせた傑の甘く掠れた声に勃たせてる当たり、俺も相当アホだと思った。










「ひあぁァ゛あッ、ぁ、もっ、もぅ…抜い、っ…あぁ゛ぁッ!」
「っは…気持ち悪ィ…な、ったく…何時まで勃ってンだよこれ…ッ」

 俺と傑の精液やら体液やらでべとべとになったソファの上。
 数えるのも面倒なくらい突き上げられてイかされて腰が立たなくなった俺は、対面座位でガクガク揺さぶられてる真っ最中。

 薬の効果で勃ちっぱなしのデカイ傑のモノに擦り切れるんじゃねーかってくらい突き上げられて、中出しされたまんまの精液が腹の中でぐぷぐぷ言ってるのが聞こえる。挿れられるのにも抜かれるのにも感じまくって、もうどこをどうされてるのかも何が気持ちイイのかも解んねーの。

 ただ、抜かずにもう5回も中に注がれてるもんだから、腹がマジで苦しい。


「すぐっ…ひ、ひぁっお、お願…はァッ…くる、しっ…ひィ、いッ」
「ん…じゃ、腹に力入れて自分で出せ、よ…ほら、」
「んぁあ゛あッ…ぁ、あひ、ぃっ…は、ふぅう…ッ」

 縛られた腕を傑の首にかけて縋りつきながらお願いすれば、突かれたまま入り口に指を引っ掛けられて、緩んだそこを横に広げられる。
 だらしなく広がったソコから傑の精液がどろって垂れてきて、腹ン中から溶かされてるみてーな快感に、広げられた穴がキュゥキュゥ傑を締め付けてンのが自分でも解った。


 あ…傑の、また、デカく…ッ


「あ゛ー、クソッ…いつから俺は絶倫になったんだよ…っ」
「んぁっ…?ぁ、ひ、すぐっ、ま…まだッ…ヒぃんンンッ!」

 助けて…ッ!










 意識なんかぶっ飛ぶくらい突かれて舐められてイってイカせてしゃぶって啼いて、本気で死ぬかも、なんて思った頃にようやく傑の薬は抜けた。

「へぇ、これが…ねぇ」

 冷静になった傑に問い詰められて、俺はついチョコの正体を説明しちまった。黙ってよーとか思ってたけど、さすがに傑もこれだけ出しゃあお仕置きなんてしねーだろ。

 …なんて考えていたバカな俺は、傑が生粋のサディストだっつー事実を完璧に忘れてた。



 パキン、ってチョコを割る音に嫌な予感がして顔を上げたら、そこには鬼畜モードに入った傑の底冷えのする冷たい瞳。


 怖ッ…!てか、そのチョコ…


「犬のクセに、飼い主に隠し事たァいい度胸じゃねーの、悦?」
「す、傑っ…あの、ごめ…ひぁッ!?」

 逃げよーとしたところを足首掴まれて引き戻されて、羽織ってた傑のシャツを剥ぎ取られて足を開かされると、そのまま奥に突っ込まれる硬い感触。

「俺にもキクんだから、粘膜から直で吸収したらさぞかし辛いんだろーなァ?」
「や、やめッ…ふぁあッ、ぁ、んぅっっ」


 突っ込まれたチョコが傑の手でぐちゃぐちゃされる度に体温で溶け出して、甘ったるい匂いと一緒に、モノから先走りの蜜が溢れて腹を濡らし始める。

 体力の限界を超えて欲情させられる体に、辛くて瞳を潤ませる俺をそれはそれは楽しそーに見下ろして、御主人様はにっこりと笑った。


「薬が抜けるまで、フルコースで遊んでやるよ」
「ふぁ、アぁあ゛あッ!?…ひっ、ひぁあああぁ…ッ!」



 …もう、いっそ殺せ。 



 Fin.



季節外れのチョコネタ

100216加筆修正済。

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