アナタは王様



「さっさと起きろよ」

「あ、それ食べたい」

「コントローラー持ってる時に抱きつくなっての」

「ついでに俺のも磨いといて、ナイフ」

「ん?傑の腹の上。…お前が悪いんだろ。ソファで寝ンじゃねーよ」


 仕事仲間には驚かれるけど、日常の大抵のことの主導権は俺にあって、傑は俺のすることに文句はほとんど言わない。
 雑誌読んでる傑にはちょっかい掛けるくせに、自分が遊んでる時は邪魔すンなとか、相当ワガママだと思うけど、傑は怒らないし気にもしてない。

 誰かに王様みたいな待遇だって皮肉で言われたけど、実際そうだと思う。
 ただ1つだけ違うのは、


「ほら、“待て”だって言ったろ?…そうそう。……イイ子にできたらたっぷりご褒美やるから」


 ―――俺達の場合、玉座は交代制だってこと。










 銀色の鎖に繋がれた透明なボールに、濡れた音を立てて舌が絡む。
 ゴルフボールくらいの大きさをしたそれは一定の間隔をおいて鎖で数珠つなぎになってて、繋がれたボールは全部で1、2…5つ。

「ん…、…」

 ごろごろ手の中で転がるそれを見た瞬間、そんなの入らねぇって突っぱねた俺の目の前で、傑の赤い、赤い舌が。下から2番目のボールを濡らし終わって、鎖をぬるりと伝って上に。

 組み敷かれたままの状態じゃあ、嫌でもその最高にエロい“ショー”を見るハメになって、すっかり淫乱に作り変えられた俺の体は傑の思惑通りに盛り出すから泣きたくなる。
 見てちゃダメだと思うのに、半分伏せられた藍色を見たら最後、もう視線が外せない。透き通るようなボールの側面をれろ、と舌が這って、てらてらと光るそこに、ルージュでも引いたみたいに濡れた唇が。


「っは…ぁ、傑…ッ」
「んー?」

 ちゅぷ、と濡れた音を聞いた瞬間もう堪らなくなって、思わず掠れた声を出した俺に、傑は艶っぽく半眼に伏せられていた目を開いてニヤリと笑った。

「欲しくなった?」
「っ…ん、…」
「何回教えても“我慢”が効かねぇな、悦は。どこに欲しい?」

 …余計なお世話だ、我慢のしようが無いくらい責めンのはお前だろうが。
 なんて思っても口になんて出せるワケがなくて、俺は顔の横に両手をついて見下ろしてくる傑を横目に体をうつ伏せにすると、顔が熱くなるのを感じながら少しだけ腰を上げる。


「こ、っち…」
「自分で腰上げるほど欲しかったのかよ」

 やぁらしーの、くすくす笑いながら耳元で囁かれて、背筋にぞくぞくっと震えが走った。
 ぴと、と奥に冷たく濡れた感触が宛がわれて、詰めそうになった息をゆっくり吐いて力を抜いた俺の背骨に(多分、ご褒美のつもりで)キス落としながら、1つめのボールがぬぷりとナカに入り込む。


「はぁ、あッ…、ちょ…重…!」
「そりゃな。このボール全部シリコンだし」

 ずしりと腹に響く重さに呻いた俺に軽い調子で言いながら、傑はシリコンで出来た重たいボールを指先で少しだけ押し込んでく。
 繋がった鎖が粘膜と皮膚の境目をつつ、と撫でてくぞわぞわした快感に足が震えて、腰を上げてるせいで少しずつ重さで奥に入ってくる感覚が、堪らない。

「これで、…4個目」
「ぁあ、ッ…ふ、ぅう…ん、も、…いっぱ…っ」
「いっぱい?まだイケるだろ」
「んぁあぁッ!?ぁ、無理っ…むり、ぁあッ…もぅ…っ」

 細い鎖を鳴らしながらナカのボールをぐりぐり押し込まれて、少し柔らかいシリコンが内側を擦りながらごつごつぶつかる。
 もうこれ以上無理だって言っても傑は聞いてくれなくて、重いボールにガツガツ前立腺を殴られて先走りを滲ませる俺のモノの先をつるりと撫でながら、一瞬気が抜けて緩んだソコに最後の1個をぐいっと押し込めた。


「ひぁあぁああッ…!」
「…ほら、入った」
「は、ふ…ぁ、あ、ぁっ…んァ!」

 無理矢理捻じ込まれたせいでだらしなく半開きになった縁を撫でてた指でいきなりパチン、と少しだけ覗いたボールを弾かれて、中にぎゅうぎゅうに詰め込まれたシリコンの塊を通して奥の奥まで伝わる振動に、びくりと背中が跳ねる。

「ゃめ、弾かなっ…あぁッ!ぁっ、んぅッ、!」
「気持ちイイ?悦」

 パチン、パチン、と爪で何度もボールを弾いて俺を玩具にしながら、傑の甘い声が吐息ごと耳朶に滑り込む。
 少し低くて甘いその声は簡単に俺の頭の中まで痺れさせて、まだ触られてすらいないモノから先走りをぽたぽた零しながら俺は何度も頷いた。

「っきも、ち…ふぁッぁ、あッあ…ッ!」
「もっと気持ちよくしてやろうか?」
「は、ぁッ…?も、と、…?」




 くちゅ、と耳たぶを舐められながら囁かれて、バカ正直に聞き返した俺にヤらしく笑う暗い藍色。

「こーゆーのって、抜く時が一番イイんだぜ」
「ぬく、とき…」
「そ。特にコレとか重てぇからさ、」

 肩から腕を滑った傑の手がシーツに投げ出した俺の指にぎゅっと絡んで、押さえるようなその動きと途切れた言葉に、寒気を感じた時には遅かった。


「ッ!?、ぁ゛あッァ、あーッ、あ゛-っ!」

 奥の奥まで押し込まれてたボールを一気に引きずり出されて、熱く溶けた粘膜の性感帯全部をガツガツ叩きながら重いボールが一気に出ていく快感に、見開いた目の前で真っ白な火花が散る。

「…こーやって一気に引きずり出されるのとか、堪ンねぇだろ?」

 意地悪で甘い声で囁かれても、シーツを千切れるくらい握りしめて、ぼろぼろ涙零しながらはくはく浅い呼吸を繰り返す俺に応える余裕なんて少しも無い。
 なのに。2回も連続でイったせいでまだイキ終われて無い俺が、もう意識を保ってるだけでもギリギリなのを知ってるくせに、また宛がわれた丸い感触が、容
赦の欠片もなくぬぷりと中に埋められる。

「ひぃいいッ…!ッぁ、また…また、はいって…っッ」

 腰が情けなくガクガク震えてるような状態じゃ逃げることも出来なくて、震える指でシーツを掻く俺の耳朶を、後ろから傑がぺろりと舐める。

「も、ダメ、だめっ…ふぁあッ、あ、んくぅう…!」
「こんなに美味そうに咥えこんでるクセに」
「ぅあ゛ぁあッ…!は、ぁひっ、…も、ぬい…ッ抜い、て…っ!」

 笑みを含んだ声にからかわれながら、またずるりとボールが中に入り込んで来て、敏感になった粘膜を擦りながらごつ、ごつ、と中でぶつかり合うボールにがくがく震えながら傑を振り返った。

「…じゃあ、これが何番目か当てられたら抜いてやるよ」
「ひぅうぅううッ!」


 潤んだ目で哀願する俺にしょうがねぇなって顔で笑って、傑はそう言うと中に残りのボールを一気に埋めた。
 前立腺を押しつぶして、指じゃ届かない深い所まで抉るように入り込んでくるボールに、目の前で真っ白な火花が散る。

「はッ…か、…ぁ゛あ、ぁ…ッ!」
「今が5個全部。ちゃんと数えてろよ?」
「ぁ、まっ…やぁああッ!」

 2個抜かれて、すぐに1個戻された。
 …そんな風に考えてられたのは最初の3回だけだった。










「今はいくつでしょーか?」
「あぁあッ…は、ふぁ…ッよ、こめ…?」
「残念」
「こんな、わかんなっ…ァあぁああッ!」

 間違える度にボールを出し入れされて、いい加減色なんてなくなった精液がびしょ濡れのシーツにぽたぽた落ちてく。
 広げられたナカの性感帯をボールでごりごり擦られて、乱暴に突っ込まれたボール同士がぶつかる衝撃で奥の奥まで突きあげられて、そんなのを延々続けられてまともに数なんて数えられるわけない。

 数えようとナカに集中するとどうしてもそこを締め付けるし、締め付けると今まで以上にダイレクトに響く快感に頭の中なんてぐちゃぐちゃで、適当に言う答えは全部外れてまた突っ込まれて、永遠につづくんじゃないかって悪循環に、苦しいくらい気持ちイイってこと以外何も解らなくなる。

「ひぁあぁああっ…!も、ゃめ…嫌、いやぁあぁッ…!」
「じゃ、今はいくつ?」
「わかんな、ひぅっ…わか、ないぃ…ッっ」
「取り敢えず言ってみろよ。当たるかもしんねーから」
「ッ…ふた、つ…?」

 甘い声に促されて、傑の顔を伺いながらおそるおそる適当な数字を答えた俺に、傑はにこりと笑って俺の頭を撫でてくれた。

「あ、ぁあ゛ッ!?…ッぁあああぁ…!」


 当たったのかも、なんて甘ったれた予感に思わず気を抜いた瞬間、2つのボールを一気に捻じ込まれて、飲み下す余裕なんてない唾液と、焦点の定まらなくなった眼から溢れた涙がシーツを濡らしてく。

 出すものなんて無くなったモノはほとんどイキっぱなしに近くて、激しく出し入れされるせいで慣れられない圧迫感が、締めようとする入り口を容赦の欠片も無く押し開いて熱く溶けたナカを抉るボールの重さが、下半身を痺れさせて意識をぐちゃぐちゃに掻き混ぜる。

「ゆる、し…ッふぁああ、…傑、すぐる…ッも、ゆうし、て…ッっ」
「当てたらな」
「も、無理っ…ホントにむり、だからぁっ…!ぁ、あッ!」

 必死に頼んでも傑は許してくれずに、また何個かのボールを出したか入れたかされて、俺は甘い痺れがひっきりなしに走る背中をびくびくのけ反らせた。


「ゃめ、やだ、…ひぅ、うッ…!っぁ、ナカ、ごろごろす、のヤだぁあ…ッっ」

 終わらない快感がただ辛くて、しゃくり上げながら力なんて入らなくなった指を傑の手に絡ませる。泣きながら嫌、わかんない、と繰り返す俺に傑は少し苦笑して、しょーがねぇなと呟くと残りのボールを全部、ゆっくりナカに埋めた。

「ひ、ぁッ…はぁあ、あッ…あー、ぁっ…!」
「これならわかるだろ、いくらなんでも。…ほら、いくつ?」

 頬を撫でながら甘い声で聞かれて、まともになんて動かなくなった頭を必死で回転させる。
 全部、ぜんぶ入ってる、から、…ぜんぶは、たしか、

「…、こ…?」
「ん?」
「…っ…ご、こ…」

 これで外れたらずっとこのままかも、って思うと怖くて怖くて、震えながら頭の片隅に残ってた数字を答えた俺の頭を、傑の手がくしゃりと撫でる。

「よく出来ました。抜いてやっから力抜いてな」
「ん、んっ…は、ぁッ、あっ…!」


 がくがく頭振って頷いた俺に小さく笑いながら、傑は約束通りナカに入り込んだボールをゆっくり引き抜いてくれて、やっと圧迫感が無くなってぐったりシーツに投げ出した体を、ごろんと仰向けにされた。

「パール系初めてでコレはキツかったな。もう寝る?」
「は、ぁあぁ…ッ」

 よしよし、って感じで頭を撫でながら囁かれる声とは正反対に、肌を滑った手が力の入らなくなった足を開いて、ひくついてる奥を掠めるように撫でてくる。
 こんな風にされて「寝る」なんて言えるほど、俺は節操のある体じゃない。


「ん、ふ…っまだ、イケる…から、早く、」
「…さすが」

 情けなく震える腕を首に絡めて腰を押しつけると、ベルトのバックルを片手で外しながら、傑は見惚れるほど男前な顔で笑った。

「煽ったからには責任とって付き合えよ?朝まで」
「ん、ぅん、ッ…ぁっ、あ、ぁあぁあッ…!」

 重たく痺れる腰は無視して、捻じ込まれた熱に喉を反らしながら何度も何度も頷いた。
 こんな風に言ったって、ちゃんと手加減してくれることを俺は知ってる。


 濡れ乱れた狭い狭いシーツが領土の王様は、俺だけに甘い。



 Fin.



バカップルの主導権は交代制。
傑は振り回すのも尽くすのもお手の物なので、不公平にならないように調整しています。

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