いけないことを、しようか。
授業開始のチャイム音を合図に、ざわついてた廊下から人気と足音が引いていく。
出遅れたらしい誰かがパタパタ足音立てながらトイレから走っていき、自分以外の気配が無くなってからきッちり10数えて、俺はよォやく一番奥の個室ン中で殺してた息をそっと吐いた。
「は、ぁ…っ」
口元に当てた手から漏れた吐息はてめェでもイヤになるくらい熱を孕んでて、そのまま一緒に溢れそうになる声を噛み殺しながら、壁に背を預けてずるずるその場にしゃがみ込む。
体制が変わったのに合わせて中に仕込まれたものがずるりと角度を変えて、痺れた下半身に重く響く刺激に潤んだ視界がくらりと揺れた。
登校前、昨日の晩にしちまった粗相の罰として仕込まれたのは、指1本分くらいの太さのストッパー。
バイブみてェにエグい凹凸やら瘤やらがついてるわけでもなく、ローターみたいに中で好き勝手動くような仕掛けがあるわけでもなく、ゴム製の表面はつるりとしていて、電池が入るような造りにもなって無い。
だから、放課後ぐらいまでなら楽に耐えられると思ってたンだが、そんな余裕は時間が経つごとに無くなっていって、5時間目の今はもう、授業すらまともに受けられずにこうやってトイレに籠る始末だ。
すっぽり中に入り込んだストッパーは、一緒に嫌ってほど流し込まれたローションのお陰で中を自由に動き回って、少し足を動かしただけでも角度を変えて中を突き回す。
最初はそんな撫でるくらいの刺激なんでもなかったンだが、熱は慣らされた体に確実に溜まっていって、昼休みになる頃にゃァ座ってるだけで声が出そうになった。
「っ…ぁ、…ふッ…」
…だから、5時間目の今はこうやってトイレに逃げ込んでみたンだが、逃げ込んだはいいもののこれじゃあこっから出られそうにねェ。
体の奥から湧き上がる熱に耐えきれず、シャツのボタンなんざとッくに外して、指定のネクタイも首に引っ掛かってるだけになってンのに、それでも呼吸は整わない。
出来ることなら今すぐ体ン中に溜まってく一方の熱を出しちまいたいンだが、「友達にバレたら恥ずかしいだろうから」っつゥありがたい気遣いで着けてもらった貞操帯のお陰で、ストッパーを抜くどころか貞操帯の内側をぐしょぐしょにしてるてめェのモノにさえ触れねェ俺には無理な話だ。
「ん、ん…っ」
…コツ。
「……ッ」
とりあえず荒く乱れた息だけでも落ちつけようと締めたベルトに手を伸ばした瞬間、扉の向こうで小さく響いた足音に、俺は慌てて親指を噛む。
…ヤベ…まだ誰か…っ
コツ、…コツ…、
「っ…、…」
体を強張らせて息を殺してる俺が籠る一番奥の個室に、足音はゆっくりと近づいてくると、扉の目の前でぴたりと止まった。
ノックをするでもなく、声をかけるでもなく。さすがに靴までは見えねェが、気配は確かにそこに、扉の前にあるのに。
生徒なら他の空いてる個室に行く筈だし、授業はもう始まっちまってる。見回りの先生?それにしちゃ声をかけてこねェのがおかしい。
…コン、コン。
「……っ!」
不審に思ったがまさかこんな面で出てくわけにもいかず、ひたすら息を殺して見つめてた扉が、静かなノックの音と共に揺れる。
思わず出そうになった声をなんとか喉の奥に押し込めて、とりあえず返事をしようと、そっと膝立ちになって扉に手を伸ばした俺は、扉の向こうから聞こえてきた声に目を見開いた。
「具合でも悪いの?幽利」
「……き、り…?」
思わず聞き返しちまったが、他でもない鬼利の声を俺の耳が聞き間違える筈がねェ。消えそうに掠れた情けない俺の声に、扉の向こう側に立つ鬼利がくすくすと笑う。
「開けて」
慣れた命令口調に、驚きやら恐怖やら焦りやらで鈍った頭より、何より鬼利に従順に作られた体の方が先に反応した。
ぴくりと震えた指先が意志とは関係なく扉の鍵を外して、外開きの扉をそっと押すと、その隙間から入り込んだ細い指を持つ綺麗な手が残酷なくらいゆっくり扉を開く。
「青い顔して、お腹が痛いの?」
「…っ…」
「…あぁ、違うか」
俺と同じ制服の、俺とよく似た背格好と顔をした双子の兄貴は、優しげな笑みを張り付けたあかい唇でそう言いながら、タイル張りの床にへたりこんだ俺の首に引っ掛かるネクタイを掴んだ。
魅入られたようにその、冷たい橙色の瞳から目が離せない俺に口元だけで微笑みながら、鬼利は学校指定の内履きの靴裏で俺の下腹部を踏みにじる。
「痛いのはコッチだったね」
「ぃあ゛っ…!」
「サボった上に、学校のトイレでこんなところをカタくするなんて本当にお前は悪い子だね。僕が来なかったら何をするつもりだったの?」
「ぁ、……んぐッ!」
何を言ったって下手な言い訳にしかなんねェ状況に、二の句が継げない俺のネクタイを慣れた手つきで引き上げて首輪代わりにしながら、鬼利はポケットから何かを取り出した。
引っ掛かっていたのはどこかの教室のモンらしィ鍵で、女みてェに細くて綺麗なその手の中で、青いタグのついたそれがチャラリと揺れる。
「おいで。こんなに声が響く所じゃやり難い」
「…は、い」
一体何がここじゃァ“やり難い”のか、なんて。
…そんなこと、鬼利の目を見りゃァ聞くまでもなかった。
こんな関係いつからだと聞かれりゃァ、それはもう“生まれた瞬間から”と答える他無い。
俺と鬼利は所謂双子ってぇやつで、外見こそ見分けがつかねぇくらい瓜二つだが、鬼利の頭の出来は俺とは比べモンにならねェほどよかった。中学の時の学力テストでは全国1位から一度も落ちなかったし、多分この前受けた模試の成績だって1番だ。
兄貴がこんなに完璧だったせいで、弟の俺に対する家での冷遇具合はそりゃァもう笑っちまうほどだったが、正直俺にゃぁンなことはどうでもよかった。
とにかく俺は賢くて冷静で目立った欠点なんざ1つも無い兄貴が自慢で、物心ついた時からどんなに酷くされても鬼利が大好きで大好きで、それは愛だの恋だのって言葉が馬鹿馬鹿しく思えちまうほどだった。
俺にとって何よりの幸せは鬼利もそうだったってことで、お陰様で俺たちは小学校の時には舌が絡み合うようなキスを覚え、中学で触り合いっこからSEXに発展し、その気があるなんてもんじゃない、天性のサディストだった鬼利にすっかり調教された俺は今じゃァどこに出しても恥ずかしくない立派なマゾヒストで、今だってホラ。
…約束破ったお仕置きに、空き教室になッてる元・理科室に並んだ実験台の1つに仰向けで縛りつけられて、前を開いたシャツと貞操帯だけの、裸よかよッぽど危ねェ格好でご主人様の授業が終わンのを待ちながらセルフ羞恥プレイ。
誰かに声を聞かれたら。先生が通りかかったら。
そんなことを延々考えて自分を煽ってますます興奮してるようなこんな変態じみた性癖、どんな名医に行ったってサジを投げられンのはまず間違いねェ。
「んンんッ…ふ、…ぁっも、無理、…ぃッ…!」
「モノ欲しそうな顔してよく言うね」
埃っぽい実験台の上に這いつくばり腰だけ上げた格好で、台の横に立つ鬼利を振り返りながら涙声で懇願するが、鬼畜な兄貴はそんな俺の声をあッさり笑い飛ばして、震える俺の手に試験管を握らせた。
「淫乱なお前の体ならあと2本は軽い筈だよ」
「無理、むり…ッ裂け、ちま…!」
「その方が嬉しいんじゃないの?お前は痛いのが大好きだから」
面白くもなさそうに言いながら、鬼利は背筋が凍りそうに冷たい目で俺を見据える。体が壊れちまいそうな恐怖と嗜虐的な目で見据えられる快感とがない交ぜになって、背筋をぞくぞく震わせる甘い痺れに俺はごくりと息を飲んだ。
授業もHRもとっくに終わってから更に1時間。窓から見える空がすっかり真っ赤に染まっちまう頃になって、鬼利はようやく戻って来てくれた。
まさか置いてかれたのかと、放課後になってからずッと息が止まりそうな焦りに駆られてた俺は、戻って来てくれたッてコトがまず泣きそォなくらいに嬉しかったンだが、鬼利はそんな俺の感動なんざ無視で貞操帯を外してくれるなり、教室の壁にずらッと並んだ棚から持ってきたらしい試験管を俺に渡した。
指よか少し細いくらいの試験管の数は5本。
―――“お前と違って、僕には学校で盛るような趣味は無くてね。欲しいなら精々頑張って、僕をその気にさせてご覧。”
ネクタイで根元をぎっちり縛りあげながらそう囁かれて、昼からずゥっと、鬼利のが欲しくて欲しくて仕方なかった俺ァ1も2も無くその命令に頷いたんだが、柔軟性なんざ欠片も無い試験管は思ったよりも質量があって、3本目から先が続かない。
何度かやってみてンだがどうしても4本目が入ってかなくて、ダメ元で泣き言吐いてみたんだが、当然のように鬼利は許しちゃくれなかった。
「はッ…はっ…ふ、ぅう…ッっ」
できるだけ締めつけねェように、なんとか荒くなる息を整えて力を抜こうとするが、薄い硝子で出来た試験管はちょッとすると割れちまいそうで、かちゃかちゃ硝子が鳴る音だけが響く。
「そんなやり方じゃいつまで経っても入らないよ」
「って…割れ、ちまう…から…っ」
「そう簡単には割れないよ。お前が馬鹿みたいに締めつけさえしなければね」
退屈そうに言いながら鬼利は俺の手の中から試験管を抜き取ると、中に入った3本の試験管の隙間を無理矢理開いて、ぎちぎち音を立てながら4本目を突き入れた。
冷たい硝子の管でギリギリまで開かれたそこにゃァもう余裕なんてねェのに、鬼利は顔色1つ変えずに今にも割れそうな音を立てる4本目の試験管を捻じ込むと、俺のモノを縛ってるネクタイを掴む。
「はぁ、あっ…ぃ、ぎッ!」
そのままネクタイを強く下に引かれて、勃ってるモノを無理矢理倒される激痛に体が強張るのと同時に、体ン中でぎしりと嫌な音が響いた。
慌てて力を抜こうとするが、鬼利はぐいぐいネクタイを引っ張りながら、俺の努力を嘲笑うよォに中に入ってる試験管をパチンと弾く。
「ぅ゛うぁ…ッ」
「そんなに力を入れると割れるよ」
「いぐっ…ひ、ひっぱら、な…ひぃ゛ッ…!」
台の上に突っ伏しながらなんとか力を抜こうとするが、痛みで強張る体は自然とそこを締めつけて、体ン中でみしみし鳴る音に怯えながら無理、無理って小さく首を横に振る。
スパンキングやら緊縛は何度かされたが、試験管は硝子だ。こんなモンが中で割れりゃァ痛ェじゃ済まない。
「ひ、ッ…き、り…鬼利…ッ割れ、ちゃ…!」
「だろうね。…ほら、お前には見えないだろうけどヒビが入ってる。割れるのも時間の問題かな」
「や…ゃだ、嫌…ッ」
「じゃあその、浅ましく締めつけるのを止めたら?」
俺がいくら緩めたくたッてそれをさせちゃくれねェくせに、鬼利はそう言いながら5本あった試験管のうち最後の1本を、涙目で振り返った俺に見せつけるように軽く揺らして見せる。
「それともこの最後の1本は砕いて入れてあげようか」
「ッそれ…は、それは、…だめ、…ッ」
「…駄目?」
試験管を弄ぶ手をぴたりと止めた鬼利の声が変わる。俺達の中での決定権は全部鬼利にあンのに、俺が出過ぎたことを言ったせいだってのはすぐに解ったが、俺は射抜くように鋭い鬼利の瞳にぞくぞくしながら緩く首を振った。
「ンな、ことしたら…ッ鬼利の、にも…傷ついちまう…ッ」
体ン中に硝子の破片突っ込まれるなんざ考えただけでも怖ェが、てめェが怪我することよか鬼利の体が傷ついちまう方が俺にはよっぽど怖い。
だからそれだけは許して、って首を振ると、少し黙った鬼利は持ってた試験管を台の隅に置きながら、呆れたように目を細めた。
「針山に突っ込むような趣味は僕には無いよ。お前の頭の中にはそれしか無いの?」
「っ…ごめ、…」
「…もういい。このままじゃ日が暮れる」
「んンぁッ!」
ため息混じりに言って、鬼利は試験管をまとめて引き抜くと、いきなりの刺激に背を反らした俺の根元を縛るネクタイを引く。
「ぁぐッぅう…ッ!」
折られるんじゃねェかって馬鹿な考えが浮かぶほど力任せに引かれて、あまりの痛みにネクタイ引かれるまま自然と後ずさった俺のシャツを掴んで台から引きずり降ろし、ネクタイから俺の髪に持ち代えた鬼利の手が俺の頬を台の上に押し付けた。
「…ちゃんと締めるんだよ」
「ぁ、はぁっ、…ひ、ぁあアっ!」
後頭部に宛がわれた手に力を入れながら耳元で囁かれて、ごりり、と頭を硬い台に擦りつけられて痛みが走るが、そんな微かな雑音は前触れなく奥まで突っ込まれた愛しい愛しい灼熱が与えてくれる愉悦に吹き飛んだ。
試験管4本に広げられてたそこは大分緩んじまったみてェで、いつもみたいな裂かれる勢いで捻じ込まれる圧迫感は感じられなかったが、それでも鬼利の体温が嬉しくてモノからとぷりと先走りが零れる。
「はぁッ、あ、ん、ぁあぁッ!…ぃた、ぁっ…!」
「…緩いよ、淫乱」
ガツガツと乱暴な(俺には丁度いい)抜き差しに無抵抗に揺さぶられながら、台に爪立てて手放しに喘いでた俺の、だらしなく濁った先走りを零すモノを強く握り込みながら鬼利が小さく呟いて。
咄嗟に腹に力入れてそこを締めようとしたが、鬼利の方が早かった。
「ひぎッ…!あ゛ぁ、あ、あぃ、い…ッっ」
モノを握り込んだ手にギチリと爪立てられて、ガチガチに強張ったモノを裂かれるような激痛に見開いた目から涙が伝うのが解る。
思わず伸びた手が鬼利の手首を掴むが、そのまま潰す勢いでぎちゅりと握られりゃァ力なんざ入らなくッて、冷や汗滲ませながら裏返った声で離して、ってお願いしてみたが、極限でもねェのに俺のお願いを鬼利がそう簡単に叶えてくれる筈が無い。
「痛、いた、ぃい…ゃ、め…ッ!」
「そうは見えないけどね」
「ひ、ひぐっ…ぁ、はぁっ…!」
「…それにしても緩いな。マゾなお前にはこのくらいじゃ効かないか」
奥の奥まで凶悪なモノを捻じ込んだまま、鬼利は相変わらず冷静な声でそう言うと、俺のモノを握りつぶしてた手をようやく離してくれた。あんなに痛かったのに俺のモノはまだきっちり勃ったまンまで、じんじんと圧迫されてたトコが痺れるのすら緩い快感に変わる。
散々溜めさせられた節操のねェ俺のモノにはあんな乱暴な愛撫でも十分致死量で、台の角に擦りつけて慰めてェのをなんとか耐えて鬼利を振り返ると、実験台の側面についた引き出しを漁ってた鬼利が、中から何かを取り出して台の上に出した。
「ッ…そ、れ…」
鬼利が取り出したのは電気の実験で使う、2つのクリップをゴムのチューブみてェなコードが繋いだ道具だった。電圧計やらの端子を挟むクリップは挟む部分がギザギザになってて、鉄を挟む為のクリップの圧力はかなり強い。
思わず息を飲んだ俺に二コリと笑って、鬼利は俺の後ろ髪をひっつかんで上体を起こさせると、台に擦られて赤くなった乳首にクリップを近づける。
「はぁっ…ぁっ…ぃ゛うぅッ!」
「ほら、じっとして」
「あ゛ぁあッ!」
かぱ、と開いたクリップに敏感な乳首を挟まれて、潰されそうな痛みにびくりと体を跳ねさせた俺を退屈そうな声で叱りながら、鬼利はもう片方のクリップで逆の乳首も挟みこむと、左右のクリップを繋ぐコードを軽く引いた。
強く挟まれたそこを引き延ばされる痛みに自然と体が前屈みになろうとするが、髪を引かれてちゃァそれも満足に出来なくて、無意識のうちに手が胸元に伸びちまう。
「駄目だよ、外しちゃ」
「あぐッ…ひ、ぃ゛い…っ!」
指先が真っ赤なゴムに包まれたコードに触れた途端、手首を掴まれた腕を背中側に捻り上げられて、そのままもッかい台の上に上半身を叩きつけられた。
そのまま捻られた腕にぐぐ、と体重をかけられて、クリップに挟まれた乳首が鉄製のクリップごと台に擦りつけられ、挟まれた箇所を捻られる激痛に目の前が赤く染まる。
敏感な場所を引き千切られそうな痛みに体なんざガチガチに強張っちまって、だから中だってそれなりになってる筈なんだが、鬼利はこのくらいじゃ満足できないらしい。
もう1つ、今度は黄色いゴムのコードに繋がれた2つのクリップを手に取ると、歯ァ食いしばって痛みに耐える俺に見せつけるみてェにかぱ、かぱ、とそれを開いて挟む強さを確かめるようにしながら、するりと鬼利の手が内腿を撫でた。
「あんまり大声出すと誰か来るかもしれないから、我慢するんだよ」
「はっ…ぁ、あ…!」
耳元で囁かれながらネクタイに縛り上げられたモノの根元、つぅっと撫でられた会陰を強く摘ままれて、皮膚を引っ張られる痛みに体を強張らせた瞬間、そこに冷たい金属の感触が触れる。
「――っ、―――ッ!」
痛い、なんてもんじゃねェ。
走った激痛に声すら出せずに見開いた目から涙が零れるが、鬼利はンなことにゃァお構いなしで、びくんと跳ねあがった俺の体を器用に抑えつけると、もう片方のクリップでモノの裏筋を挟みこんだ。
「あ゛ッ!…ひ…ぃ、ぐ…っッ」
縛られたり踏まれたりすンのとは違う、裂かれるように鮮烈な痛みが常に背筋を駆け上がって、クリップを繋ぐコードが少し揺れる度にじくじくと増していく痛みに、身動きすらろくに取れずに台の上に爪を立てる。
「う゛ぅう…ッ!ぃ、あ゛…あぁあッ…!」
「っ…あぁ、大分マシになった」
あまりの痛みに意識が朦朧とするが、締まりのよくなった中を裂くように軽く引かれてたモノをまた奥まで突き入れられて、奥の奥まで突き上げられる快感と、その衝撃でコードが揺れて挟まれた箇所に走る激痛とで、頭ン中なんてもうぐちゃぐちゃだ。
痛いのか気持ちイイのかも曖昧な中、ただ鬼利に苛めて貰ってるトコが燃えちまいそうに熱くて、相変わらず強張ったまンまの体震わせながらはくはくと浅い呼吸を繰り返す。
「ン゛んッ、ぁ、あ゛ぃっ…ぅあ、ぁッ…!」
「っは、…これで萎えないんだから大した体だね」
「っ、あ゛、さわ…ちゃ、ッ…ひぎ、ィっ…!」
髪掴まれて頭を台に擦りつけられたまま、もう片方の手でクリップに性感帯を2ヶ所も挟まれてるってのに萎える気配もねェモノをゆるく扱かれて、また位置を変えたクリップに挟まれた箇所を捻りあげられる痛みにぼろぼろ涙が溢れた。
濡れた感触に血でも出ちまってンのかと、おそるおそる潤んだ視線を落として見りゃァなんのことはねェ。根元をネクタイで縛られた上、コードに繋がったクリップに会陰と裏筋を挟まれた俺のモノはきっちり勃ったまンま、先っぽからだらだら先走りを零してやがる。
こんなに痛いのにどうして、って鈍った頭がどッかで考えるが、その答えはすぐに出た。
「ひッぃ…ぃた、ぁあっ…!」
「…じゃあ、外して上げようか?」
少しだけ息の上がった鬼利がそう囁いて、ぼろぼろ泣きながら実験台に爪を立てる俺の両乳首を挟むクリップのコードに手をかける。
「あ゛ぁぁあッ…!っは…ひ、ぃぁあっ…!」
そのままコードを思いっきり引っ張られて、取れちまうンじゃねェかってくらいの痛みを残してクリップが外された。爪が掌に食い込むほど強く手を握り締めてじんじん響く痛みに耐えてたらモノを挟むクリップのコードが揺れて、俺はびくりと震えながら鬼利を振り返る。
「っ…き、っんむ…っン゛ー!ん、んンーッ!」
「…、っ…」
涙声の呼びかけは舌を絡め取られて制されて、次の瞬間、耳元で聞こえたみてェに響いたバチンってェ音と共に無理矢理クリップを外される、気の遠くなるような痛みと奥の奥に叩きつけられた灼熱の快感に、目の前が真っ白に染まった。
…生まれた瞬間から、いや、多分その前からずゥっと好きだったんだ。
「はっ…ひ、ぅ…んンぁあッ…!」
「…ちゃんと締めないと、制服が大変なことになるよ」
鬼利の精液をたっぷり注いでもらった中にストッパーをまた突っ込まれて、擦られて敏感になった中をぬるりと撫でられる快感に震えながら、台の上に仰向けに寝かされた俺は足元の鬼利を涙目で見上げた。
「きり、…きり…っ」
「なに?」
「、も…俺も、イき…た…ッ」
クリップで圧迫されたせいで真っ赤に腫れて、まだじくじくと痛む乳首を指先で優しく撫でられる快感に震えながら、俺は膝を立てた足を緩く開く。
相変わらず根元をネクタイに縛られたモノはもう先走りでびしょ濡れで、そこを縛り上げるネクタイまでぐっしょりと濡らす勢いだ。もう頭ン中にそれしか無くなっちまうくらいイキたくてイキたくて、はしたないって叱られンのを覚悟で甘ったれた声を出す。
「おねが…も、おかしくなる…!」
「…血が出てるね」
「え…?…ッぁ、あぁあっ!?」
ぐ、と内腿に手をかけられたと思ったらそのまま押し広げられて、腰が浮く不安定な姿勢に驚く暇もなく、血が出てるらしいそこに鬼利の顔が埋められて、じんじんした痛みに苛まれてた裏筋に温かいものが這う。
俺ァしょっちゅう鬼利のをしゃぶらせて貰ってるが、当然鬼利にしゃぶって貰ったことなんざ1度も無い。だから俺にゃァ慰めるように傷跡を這うその感触の正体が、鬼利の舌なんだってェことに鬼利が顔を上げてようやく気付いた。
「ひぁ…あ、…ッ」
「…帰るよ、幽利」
初めての舌の感触が好すぎて、精液なんざ一滴も出せちゃいねェのにイっちまったみてェに放心状態の俺にそう言って、鬼利は俺の前髪をひっつかむと台の上から引きずり下ろす。
「鬼利ぃ…っ」
「早く。もたもたしてると校門が閉まる」
我ながら情けねェ声で呼ぶが、鬼利はもう俺なんかにゃァ目もくれずに緩めてたネクタイを締め直すと、床に投げ出されてた鞄を拾ってブレザーの前を留め、窓のトコに暗幕を張った扉に向かって歩きだしちまう。
「まッ、て…鬼利、っ」
「…貞操帯、ちゃんと着けないとバレるよ」
床に散らばった制服をかき集めながら背中に向かって叫ぶと、首だけを巡らせて振り返った鬼利が、視線で台の端にひっかかってた貞操帯を示した。
正直今すぐにでもネクタイ取ってイカせて貰いたいんだが、お許しも貰ってねェのに勝手にンな真似できるわけもなく、俺は見よう見まねで革のそれを着け直す。
「っ…ぁ、…鬼利っ」
「……」
震える指先でボタンを留めてたら、トロくさい俺に痺れを切らしたらしく鬼利は扉を開けて出てっちまって、慌てて通したベルトのバックルを留めながら俺はブレザーの上着をひっつかんで、台に縋りながら何とか立ちあがった。
ホントなら走って追いかけてェんだがさすがにそれは無理で、がくがく力の入ンねぇ足で壁に縋って歩きながら、数メートル先を歩く鬼利を追いかける。
…俺は昔っから鬼利だけ見てきた。俺の世界には今も昔も鬼利だけで、俺を傷つけるのも癒すのも嬲るのも弄ぶのも全部鬼利だけ。
日が沈みきって、どんどん暗くなる帰り道。中に注がれた鬼利のものを零さないように力を入れると、自然と締めつけちまうストッパーからの緩い刺激に喘ぎながら、俺は涼しい顔で横を歩く鬼利を上目づかいに見上げた。
「っ…鬼利、」
「……」
「かえ、ったら…イかせ、て…くれる…ッ?」
「……」
辺りに人気はねェが、例え誰かがいたッて鬼利以外にゃァ聞こえねぇような声で囁く。
掠れ切った俺のその声に、無表情だった鬼利の橙色の瞳がちらりと動いて俺を見た。
「…気が向いたらね」
「…ん、…っ」
口元だけで微笑んだ鬼利の瞳に、このまま帰ったってまずまともにゃァイカせて貰えねェことを悟りながら、俺はこくりと頷いて見せた。
…それの名前が痛みだろうが快感だろうが関係ねェんだ。だって、鬼利がくれるモンは何だろォが俺にとっちゃァ何よりの甘露で。
例えばその手に殺されたとしても、俺が幸福と愉悦以外のモノを感じることはあり得ない。
もしも誰かが聞いたとしよう。
その関係は最良なのかと。
本当にそれで良かったのかと。
僕等は迷いなく答えるだろう。
「いいえ、まさか!」
Fin.
2周年記念パロディアンケート2位「学園」より、生徒な双子。
大変長らくお待たせいたしました。そして1位に引き続き案の定の長さ。
放課後の学校で…は王道ですが、意外と難しかった…
ピュアな学生同士の青い春なんてモンは私なんぞには書けやしないので、開き直ってこんなかんじに。
シチュエーションが何だろうがアブノーマルな双子クオリティ。
※この話はフィクションであり、よい子も悪い子も決して真似をしてはいけません。