火遊び



「あれ、旦那?どォしたんスか、こんな時間に」
「幽利…」
「はィな」
「…ちょっと体貸せ」

「……はィ?」










「え、っとォ…旦那?」
「何?」

 いやいやいや、何じゃァなくって。

 毎月の中間は、幹部サン達と登録者は顔も知らねェボスとの会合があって、鬼利は朝から次の日の昼まで部屋を空ける。で、今日はその中間の日。
 いつもは大概寝てるンだが、鬼利がいなくちゃ部屋に居てもつまンねェから今日は武器庫で半端仕事を片付けてて、一段落した頃に旦那が来た。

 で、こんな夜中に何かと思えば、体を貸せと。
 面でも手でも無く、体。しかもそう言ってる旦那はシャツの前が全開と来た。


「俺ァそっちの雑用まではちょっと…ってか傑はどォしたンで?」
「…この前、」

 直進で来る旦那にデスクの上で後ずさって距離取りながら聞いたら、旦那の足が止まった。
 …デスクの目の前で。

「あの馬鹿が、休みだからって5時間ヤったンだよ。ぶっ通しで」
「はァ…あの、そりゃァ何か特殊なプレイかなんかで…?」
「普通のセックス。でも連続でイかされたりとかして、マジで次の日腰立たなくなってさ。ムカついたから1週間セックス禁止にしてやった」
「お預け、ってェやつっスか」
「そう。だから、体貸して」

 ……えーっとォ?

「スンマセン、何がどォいう風に『だから、』なんスか?」
「今までで1番長ぇからさすがに傑も反省してくれたみたいでさ。それはイイんだけど、5日もするとやっぱ俺もキツいんだわ。昨日までは何とか誤魔化してたんだけど、なんか我慢利かなくなったからお前に相手して貰おうかな、って。ダメ?」
「いや、ダメっつゥか…」


 凄ェ切ない顔で、しかも上目遣いなんざ旦那に使われた日にゃァ「無理です」なんて言えるわけもねェ。
 でもよ、俺は旦那と同じ…いや、同じって言っちゃァ失礼かもしんねェけど、同じ受けなワケだ。

 据え膳食わずは、とか言うけど、俺ァその「据え膳」だから…


「旦那ァ…多分、俺じゃァお相手は務まらねェと思うんスけど…」
「大丈夫だって。幽利も気持ちよくなれるようにするし」
「いや、そォいう問題じゃなくッて…」
「関節キメて全身に縄かけてやるし、薬とかも…まァ、分量とかよく知らねぇけど一応あるし」
「そォいう問題じゃなくて…っつゥか分量解ンねぇのはマズいっスよ」
「気持ちイイこと好きだろ?なぁ、俺とヤっても鬼利に叱られンの?」
「いや…別に突っ込むわけじゃねェし、旦那なら『じゃれただけ』ってェので許してくれると思いますケド…」
「…じゃあ、いい?」

 馬鹿正直に答えちまった俺に、旦那はコクンって小動物みてェな仕草で首を傾げて見せた。なんつゥか、もう…可愛い。
 あの傑が惚れ込んでる旦那に誘われて、俺の節操のねェ理性が持つワケもなくて。

 ほとんど済し崩しで、俺は首を縦に振った。










「んっ…ん、む…」
「は…ん、く…旦那、…っ」

 デスクに座ったまま、旦那のご命令で自分の足抱えて開いてる俺の目の前。
 ンな事させらンねぇ俺がやります、ってェ俺の申し出をあっさり却下っつゥか無視して下さった旦那は、こともあろうにその柔らかそうな(実際凄ぇ柔らかいんだけど)唇で俺に尺をして下さってる。

 テクで言えば正直俺のがちょォっとばかし上手いかな、ってェくらいなんだが、ぺチャぺチャ濡れた音立てて舌使われて、ちょっと苦しそうな顔で根本まで咥え込まれてしゃぶられちゃァテクなんざもう関係無ェ。


「声、出せば?辛くねぇの?」
「はっぁ、…でも、んッ…あンま、無駄吠え…す、っと…煩ぇ、でしょ…?」

 あんまデカい声出すと鬼利に叱られるから、俺にはまともに頭が動いてる間は出来るだけ声を殺しちまう癖がついてる。
 それを説明すると、旦那は少し考えるような間を置いてから、

「俺は出して貰った方が好きだけど。傑が全然出さねぇからさ」
「そ、っスか…?」
「うん。幽利の声綺麗だし」
「ぁ…っ」

 にこ、って笑いながら裏筋を指先で押しつぶされて、体が跳ねる。
 とんでもねェことを天気の話でもするみてェなナチュラルさで言うもんだから、さすがに反応が遅れた。綺麗ってアンタ…

「エロいから聞いてる俺も結構クる。…な、もっと足開いて」
「は、い…ッん、ぁ…ッっ」

 散々扱かれた裏筋を今度は舌でゆっくり撫でながら囁かれて、膝に手ェかけて割り開いたらそのままデスクの上に押し倒された。背中で書類が潰れた音がして、それに気づいた旦那が俺の内腿に這わせてた指先を止める。
 でも止まっただけでそこにある指は、不安定な体制でちょっとでも体が揺れるとするする薄い皮膚の上を滑っていって、もどかしい愛撫に背筋がゾクゾクする。

「何か潰れたけど、退かした方がいい?」
「っ、…平気、です…全部、覚えちまってるンで…」
「そ?じゃあいいや」


 ぽんっ、て感じで放り投げて書類からはそれっきり興味を失ったらしい旦那は、まだ服が絡み付いてる内腿を羽根が触ってるみてェなタッチで撫でながら、一旦モノから離した唇をぺろりと舐めて、つなぎになってる作業着のチャックを限界まで引き下ろされて剥き出しにされた俺の胸元の傷に顔を埋めた。
 尖らせた舌が薄く皮膚が張ってる鞭傷を撫でて、そこにぴりぴりした痛みが走る。
 
「凄ぇ傷…これ何?」
「っあ…それ、は…鞭、です…ッ」
「じゃ、こっちは?」
「あ、ぁ…ッ!」

 内腿にあった手がすゥっと服の中に滑り込んで、ダボついた服の合わせから剥き出しにされてるモノに絡みついた。
 先走りでぐずぐずになっちまってる先っぽを爪で軽く叩かれて、薄っすら赤くなってるカリをぐり、って擦られれば、堪えの効かねェ体はすぐ快感に溺れる。

「幽利?…なァ、ここは、何された傷?」
「ひゃぁ、ぅッ…そこ、は…ぁァっッ」
「うん?」
「紐、で…ッひぅ…!イかね、よーに…て、縛られ、て…ッ」
「あー、そっか。幽利マゾだもんな、そーいえば」

 ぽんと手を打ちそうな口調で言って、旦那は俺の髪に手を伸ばした。
 咄嗟に髪引きずり上げられンのかと思って体が強張るが、旦那はそのまま手を後頭部の方まで伸ばして、髪を纏めてた細い革紐を解いて外してく。

「苦しい方がイイ、んだっけ」
「っでも、縄は…鬼利に、叱られちまう…から…」
「解ってるって。あんま苦しくねーかもしンないけど、すぐだからちょっと我慢して」


 革紐を指に絡めながら、旦那は膝抱えてた手を離させるとデスクの上に乗り上げた。
 ボロっちぃデスクがぎしぎし悲鳴あげンのも構わず、少し足開いて正座したその膝の上に俺の両足をそれぞれ乗せて、ガン勃ちしてはしたなく濡れてる俺の根本から先に向かって紐を絡めてって、カリの辺りできゅゥっと紐を引き絞るとそのまま綺麗な蝶結びを作る。

「1回ヤってみたかったんだ、コレ」
「ンぁあッ、ぁ、ひ、ぅ…!」


 可愛い面を淫らな色に染めてうっとり呟きながら、旦那は半勃ちの自分のモノを引っ張り出すと、軽く前屈みになって丁寧に紐かけられちまった俺のに重ねた。

「あ、ぁ…っん、イイ…ッ」
「ぁッ、あぁ、あっ!、だん、な…ッひぅう!」
「はぅ…気持ち、いぃ?ゆーり…ッ」
「ンぁあぁああァっ!はぁ、…はひ、ィ…ぁあッっ」

 まとめて握られたモノを旦那のごと扱かれて、ぐちゅぐちゅ音立てながらぐりぐり動く紐に擦られる快感と、仕事場で済し崩しにこんなことしちまってる、っていう背徳感に一気に射精感が煽られる。
 でも、紐ががっちり食い込んでちゃどれだけ足掻いても射精なんざ出来るわけもねェ。ごぷっ、て溢れ出したのは粘ついた先走りだけで、熱が逆流する快感に神経が焼かれてく。

「幽利、今…イった?…すげ、ヤラし…ほら、ぐちゃぐちゃになって…」
「ひぁあぁああぁッ!はぁう、あぁあぅッ…さ、触らな…ひぃいィ!」
「ほら、また…イった」

 はぁっ、と熱を含んだ吐息を漏らしながらも責め手を一向に緩めてくれねェ旦那は、こぽっ、こぽっ、て音まで立てそうな勢いで溢れてくる先走りを絡めて、俺の悲鳴が酷くなるカリのすぐ下を紐を動かして何度も抉った。
 真っ赤に充血した一番敏感な肉を嬲られる度にイかされて、ひょっとすると半端な鞭打ちなんかよりキツいンじゃねぇかってくらいの快感地獄。


「あっ、はぁ…気持ちイイ?…幽利」
「はっはぁひ、ィ…ッっ、気持ち、い…れすぅ、う…!ぁあッっ」
「っん、はァんンっ…ッっ」

 びくびく震えながら答えた俺に旦那は微かに笑って、指が白くなるくらいに俺の作業着の襟を握った。
 旦那のとまとめて握られてるモノの先端がぐり、って指で強く擦られて、何度目か知れねェ空イキに一瞬飛んだ意識を、どろりと腹とモノにかかった暖かい感触に引き戻される。

 実際、イったのは旦那で俺は精液なんざ一滴も出せちゃいねェんだが、俺に縋ってヨさそうに震えてる旦那の横顔と腹に零れた精液の感触で、十分てめェもイケた気になってンだからつくづく俺の体は酷ェ造りをしてる。


「はっ…はぁ…お前、…っエロ、過ぎ…」
「あ、ぁあ…っは、ァぁあ…だん、なぁ…ッ」
「ん…ちょっと、待って」

 生理的に滲んだ涙を舐め取られて、感極まって思わず呼んじまった俺の言葉を催促と受け取ったらしく、旦那は嫌な顔1つしねェでギチギチに紐が食い込んだ俺のモノに手を伸ばすと、そこの蝶結びを素早く解いて、

「ふ、ぁ…ッ?!」

 紐が解かれるのと同時にぱくっと先を咥えられて、俺は体を仰け反らせた。
 咄嗟に下腹に力入れてこらえようとするが、散々溜めさせられた上に、根本を扱かれながら尿道口に舌突っ込まれて先走りを啜られりゃァ、そんな理性も吹っ飛んじまって旦那の頭に力の入ンねぇ手かけて退かそうとすンのが精一杯。

「だめ、ダメ、ですッ…口、はなしっ…ひぐっ、ぅ、あぁあああ!」

 黙れ、って言うのの代わりにぐりって舌先が尿道に捻じ込まれて、俺は目の前が真っ白になるような快感と一緒に旦那の口ン中にぶちまけて、

「ぁ、あ、…ッ」
「……」

 …ごくん。










「だからぁ…別に平気だから、そんなに気にしてくンなくていーって」
「どこが平気なんスか…つか俺の、何で飲んで…」
「だってそのつもりでフェラしたし。鬼利にしてもらったことねーの?」
「俺の汚ェのを鬼利に飲ませられるわきゃねェでしょう!…俺ァ飲むの専門なんス」
「嫌な専門…」

「……。所で、旦那。体の方はもう大丈夫なんスか?」
「あー、それね。なんか酷くなった」
「…はィ?」
「幽利見ててちょっと傑の気持ち解ったけど、やっぱり苛めてもらう方がイイし楽。傑帰って来たらヤってもらう」
「はァ…さいですか」










「……」
「……なんか、こういうAV見たことあンだけど」
「恋人の浮気現場を鑑賞しての第一声がソレなんだね、お前は」
「俺、”中出し以外はセックスと認めない派”だから。あんなの浮気じゃねーよ」
「寛大な派閥だね」
「じゃぁお前の第一声は?弟を目の前で喰われちゃった鬼利サン」
「”お仕置きは吊るして快感耐久にしてあげようかな?”」
「へぇ、何時間?」

「半日。目隠しと猿轡とイケる程度のコックリング付きで」
「緩く締めてじわじわイかせる、ってやつ?一番キツイじゃねーか、それ」
「中身が空になるまでゆっくり延々イくわけだからね。幽利じゃなかったら気が触れると思うよ」

「うっわー、ドS」
「世界を誇る鬼畜代表に言われたくないね」
「変態」
「犯罪者」
「ブラコン」
「バカップル」
「外道」
「…それはお互い様でしょ?」
「…まァな」



  Fin.



「100,000hit&第一回キャラアンケート集計結果合同記念SS!」(長い)
新たな試みとして、アンケでダントツ1位だった悦と、2位の幽利を絡ませてみました。
3、4位の攻め2人も一応

100,000hit&アンケ御協力ありがとうございました!

Anniversary