石畳と、打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた薄暗い地下室。
天井や壁からぶら下がるいくつもの拘束具の1つに両腕を囚われ、石畳の床に打ちつけられた鎖に左足を繋がれた悦は、血の滲む唇を引き結んだままで目の前の男を睨み上げた。
「同盟国に間諜送るなんざ、お前ンとこの王様は何考えてんだろうな」
悦の鋭い視線をこともなげに受け止めながら、胸に中佐の階級章をつけた男―――世環傑は、まるで友人に世間話でもするように気軽な口調で言う。
美丈夫、と言うには整い過ぎた完璧な容姿は軍人には相応しくないものだったが、戦場での目覚ましい功績と類を見ない昇進の仕方から世環、という名は有名だった。
リラからの間諜として半月前に潜り込んだ悦でさえ、情報として与えられるまでもなくその名は知っていた。同盟を結んでいるとはいえ他国の悦にさえ届いているのだ、ここ―――ゴルティガではそれ以上の名声だろう。
少なくとも、拷問吏に代わって捕虜を尋問するような立場では無いはずだ。
「でもここで同盟破棄なんて真似したら明日にでも皇国に攻め込まれる。解るだろ?お前ンとこだって立場は同じだもんな」
「…っ…」
黒革の手袋を嵌めた手がするりと悦の首に絡みつき、喉仏にひたりと親指が押し当てられる。咄嗟に軽く息を吸い込んだ悦にすっと顔を近づけて、怖いほどに綺麗な顔をした尋問官は翡翠色の目を細めた。
「だからさ、お前にこんなフザケた真似しろって命令した奴のことさっさと調べて始末して、また仲良しこよしのフリしなきゃなんねーんだよ。ある程度の希望なら叶えてやるから、さっさと吐いてくんねーかな」
「…、じゃあ殺せよ」
「あ?」
喉を押さえる手に軽く力が込められ、傑の声がワントーン落ちたのを聞いて悦は不敵に笑って見せる。拷問など怖くは無かった。11で士官学校の特別コースに編入した時から、苦痛に対する耐性は“授業”で嫌というほど付けさせられている。
「全身の骨をへし折られたって俺は何も吐かない。知らないことを聞かれたって答えられねーよ」
「直属の上官の名は?」
「知らない」
「任務の目的は?」
「知らない」
「…ふーん」
軽く細められた翡翠の瞳が服を剥がれて露わになった悦の上半身を見やり、白い肌に残る無数の傷跡を確認して納得したように頷いた。あっさりと首から手が離れ、黒革の手袋に包まれた手の中に、手品のようにジャックナイフが現れる。
「確かに、いくら痛めつけても吐きそうにねぇな」
「…無駄口はいいから早く殺せよ、“世環中佐”。あんた、俺みたいのに付き合ってるほど暇じゃねぇだろ」
「へぇ、俺のこと知ってンの?」
ジャコッ、と音を立てて開いたジャックナイフを手の中でくるりと回しながら、傑はどこか楽しそうにそう言うと軽く首を傾げた。
「ちょっと働いただけでそこまで噂が飛ぶのか。お隣同士で随分暇な国だな」
「…なに?」
楽しげ、というよりは嘲るような傑の口調に、悦は嫌な違和感を覚えて思わず眉を潜める。
軍人の中にも愛国心の薄い者は勿論いるが、傑の口調はまるで他の、どこか関係のない国に対するもののように冷淡だった。リラだけならまだしも、自分の祖国であるゴルティガにまで。
「心配しなくても、2日もかかンねぇから安心しな」
「へぇ。じゃあさっさとそのナイフで耳でも鼻でもそぎ落とせよ」
「ンな物騒なことしねーよ」
「…は?」
声を上げた悦には答えず、傑はくるりと回ったジャックナイフの切っ先を悦の軍服のベルトに引っかけた。軽く手首が捻られ、軍仕様の分厚い革のそれを、まるで紙でも裂くように刃があっさりと切り落とす。
「痛めつけても無駄だ、つったのはお前だろ?」
「……!」
思わず目を見開いた悦ににこりと笑ってそう言いながら、傑は何の躊躇いもなく悦のズボンを下着ごと膝の位置までずり下ろした。冷やりとした空気が下半身を撫で、屈辱に目の前が赤く染まる。
「てめぇ、何のつもり…ッ、!」
「硫酸で両手足溶かしたりすンのもいいんだけど、お前ならこっちのが簡単に歌ってくれそうだと思ってさ」
革手袋に包まれた傑の手にいきなりモノを握りこまれ、思わず息を詰めた悦にくすくすと愉しげに笑いながら、ナイフを捨てたもう片方の手が悦の前髪をつかみ上げた。
「上官の名はともかく、命より大事な任務の内容知らないわけねぇだろ?」
「知らないもんは、知らない…ッ」
「じゃあ忘れたか?それはちょっとマズいな」
乱暴に引き上げられて強制的に顔を上げさせられた悦の耳元に、赤い赤い舌がのぞく傑の唇が寄せられ、ねっとりと絡みつくような甘さを伴って低く掠れた声を注ぎこむ。
「それじゃここから逃げられても上官に殺される。…俺も手伝ってやるから、一緒に頑張って思い出そうな?」
両腕を頭上に釣り上げる鎖が擦れ、金属が軋む音が断続的に地下室の籠った空気の中に響く。
「ッぁ、あ…ぁっ!」
耳障りな鎖の悲鳴が脳を掻き回し、滲んだ視界の中でがくがくと震える自らの左足を見つめていた悦の視界が、前髪を引きずりあげられる痛みと共に強引に引き上げられた。
オレンジ色のランプの明かりが溜まった涙に滲む。上手く焦点の合わせられない悦の目の前に、彼を嬲る尋問官は革手袋に包まれた掌を差し出した。
「…は、…ぅ…ッ」
「こんなに濡らして、さっきまでの威勢はどうした?」
「ッ…」
「鏡でも持ってくりゃ良かったな」
弦弾きのように細く長い指を持つ手を包む黒革は、傑の言う通り悦の体液でべったりと濡れていた。これが血なら声など漏らさずにいられるのに、と乱された思考の中で思いながら、悦は濡れた革にゆるゆると乳首を撫でられるむず痒いような快感に、全体重を支えている左足を震わせる。
「気持よくてしょうがねぇって顔してるぜ、お前。士官学校の“センセイ”は、こっちの我慢の仕方は教えてくれなかったか?」
「黙れ…っ…あぁッ!」
「…ホント、どこもかしこも面白いくらい感じるな」
くつくつと喉の奥で低く笑いながら、傑は乳首を摘まんだ指先を軽く捻った。引き連れるような痛みに一瞬悦の体が強張るが、引っ張られ敏感になった先端を指の腹で擦られると、天井から伸びる拘束具に太ももを挟まれた右足が堪え切れないようにひくりと跳ねる。
唯一自由だった右足を高く上げるようにして拘束され、露わにされた下肢を全て晒すような格好にされてから、悦の体は傑の巧み過ぎる指先にじっくりと時間をかけて嬲りつくされ、望まない絶頂を2度も見せられていた。
まるで娼婦のように甘ったるい自分の声に吐き気がするのに、いっそ喉を切り裂いてしまいたいと思うのに。慣れない快感に精神力を削ぎ落とされた体は、先走りを零す先端を撫で回されるだけでその愉悦に溺れそうになる。
「っめろ、…ぁ、…やめろッ…!」
「ん?またイキそう?」
「ちがっ…ぅあッ!?」
ぬるぬると滑る指でカリを擽りながら、からかうように首をかしげて見せた傑の言葉を咄嗟に否定した瞬間、じわじわと快感だけを与え続けられていたモノの先端に、焼けつくような痛みが走った。
「ッ…な、…?」
散々傑に嬲られ、だらしなく先走りを垂れ流していたモノの先端に、細い棒が突き刺さっていた。20センチほどの棒のうち、中に潜り込んでいるのはほんの1センチほどだったが、棒の表面をびっしりと覆っている小さな柔らかい突起が、触れられたことなど無い粘膜を刺激して焼けるような痛みを与える。
「て、め…っ…んくぅッ」
「舌噛むなよ」
ずず、と棒を押し込めながら囁かれ、一瞬悦の脳裏に『自害』の2文字が浮かんだが、棒をぎりぎりまで奥まで埋められ、痛みで萎え掛けたモノを棒を呑み込まされたまま上から扱かれた瞬間、そんな言葉は思考から吹き飛んだ。
「ああぁあぁッ!ぃっ、あ、はぁあっッ?!」
根元からゆっくりと扱かれ、内側の粘膜が棒についた柔らかい突起にざりざりと擦られる未知の感覚が、不安定な体制で吊るされている悦の腰を甘く痺れさせる。
咄嗟に噛みしめようとした唇はすぐに解け、ただでさえ弱いカリから先端にかけてを指先で扱かれると、突起にやわやわと擦られている尿道口から半透明の先走りが滲んで棒を濡らした。
「ゃ、めッ…ふぁあっ!やめろ、…んンッ…やめ、ろ…ッ!」
「上官の名前と任務の中身。…思い出したか?」
「だから、知らな…ひぃっ!?」
「それじゃ、俺も止めてやれねーな」
まるで中身を掻きまわすように細い棒を小刻みに上下させながら、傑はそう言って軽く首を竦めて見せる。
「ひぁああぁあぁっ…!」
小刻みに奥深くを突いていた棒が先走りに濡れながらゆっくりと引きだされ、もう少しで抜ける、というギリギリのところで再びゆっくりと埋められていく。もう少しで溢れてしまいそうな精液をまたゆっくりと押し戻されるような、重苦しい愉悦に身を捩る悦の頭上で鎖ががちゃがちゃと鳴った。
「ぁあッ、も、やめ…っふあぅう…!ぬ、け…ッ」
「わかんねぇな、お前も。それともこれくらいじゃ思い出せないか?」
棒が邪魔で精液は一滴も出せないまま、普通ならそれだけでイってしまうような快感を棒を上下させられる度に味あわされ、腰でぐるぐると渦を巻く熱に耐えきれなくなったように叫んだ悦に傑はやれやれと溜息を吐くと、逃げるように腰を引いていた悦の体を鎖を引いて引き寄せた。
「ッ…ん、…!」
「今吐けばこれで終わりにしてやるけど、どうする?」
ぬるり、と濡れた指が奥の窄まりに触れ、手を濡らす体液をそこに塗りこめるようにしながら傑が尋ねる。
嗜虐の喜びなどとはかけ離れた、いっそ退屈そうな声で。
「誰、がっ…!」
「そう言うと思った」
潤んだ瞳で精一杯睨みつけ、吐き捨てるように言った悦を至近距離で見据えたまま、傑は薄く笑うとびしょびしょに濡らされた奥につぷりと指を埋めた。
内臓を直接撫でられるような言いようのない不快感と、息苦しいまでの圧迫感に息を詰める悦の瞳を覗き込んだまま、傑は機械的な動きできつく締めつける入口を解し、指を奥へ奥へと埋めていく。
「ッふ、…く、ぅ…っ」
「この面で処女かよ。リラの軍には専用の娼婦でもいンのか?」
「!…っお前、と…一緒に、するな…ッ」
「誤解すんなって。俺だって部下に手ェ出したことは無い」
「ひあぁッ!?」
まるで世間話でもするような口調で言いながらぐり、と傑が中で指を曲げた瞬間。脊髄を貫いた電流のような快感にびくりと跳ねた悦に、傑の赤い唇がゆるりと弧を描いた。
「加減間違えて壊しちまったら後が面倒だからな。…俺が玩具にするのは、お前みたいな頭の悪い捕虜だけ」
「はっ…はぁっ…んぁあッ!」
まるで恋人に睦言を囁くような距離で甘ったるく悦を嘲りながら、傑は初めての前立腺刺激で得る快感に荒い息を吐く悦に喉の奥で笑うと、探り当てた前立腺を指先で押し上げる。
「ひぁッ!あ、ふ、んぁっあッ!、っ!ひ、ゃめっ…んぁうぅッ!」
「あァ、下手に我慢しようなんて考えるなよ?無駄だから」
「ひぃいいッ…!」
性感帯を容赦なくごりごりと指で擦りあげられ、硬さを増してきたそこを揺さぶるようにして突き上げられると、あまりの快感に目の前が白く染まった。イってしまったような快感だったが一瞬では止まず、傑が指を動かす度に同じ愉悦が何度も何度も悦の理性を吹き飛ばす。
「はぁあっ、ぁ、あッ!…ひぁぅう…っ!」
「上官の名前は?」
「ぁ、し、…しらなっ…ひぁあぁあッ、あーっ、あーッっ!」
「度胸だけは一級品だな」
ピンポイントで前立腺を責め立てられながら尿道に刺さった棒まで上下に揺さぶられ、意識が飛ぶような快感に鎖を鳴らしてがくがくと痙攣する悦に小さく笑い、傑は中をいいように掻き回していた指を引き抜く。
「ッっ…は、はぁッ…ひ、ぁ……んむッ!」
「いいか、リラの犬。喘いでないでよく聞けよ?」
嵐のような快感からようやく解放され、荒い息を吐いた悦の口に棒状の口枷を噛ませて固定しながら、寄せられた傑の唇が耳元で囁く。
「俺はお前に自由を一切与えない。拘束は緩めないし、射精もさせない。好きな時に秘密を吐いて、この拷問から逃れることも許さない」
「っ…!」
「狂うこともな。お前には最後の一瞬まで正気のまま、たっぷり苦しんでもらう」
安い脅し文句の筈だ。このくらい、何度も何度も聞いたことがある筈だった。
だが、顔が見えないまま音だけで、まるで説き伏せるように囁かれるその脅しは、今まで感じたことが無いような怖気となって悦の背筋を這いあがる。
「賢くなれよ、犬。人間のまま死なせて欲しいだろ?」
思わず息を飲んだ悦に美しい悪魔はそう囁いて、汗にしっとりと湿った悦の髪を優しくかき上げながら、退屈そうに、嗤った。
「ん、んぅッ…んーッんンんーッ!んぅうっ、ふ、ぅうぅううッっ!」
ブゥン…、と再び響いた虫の羽音のように低いモーター音に吊るされた体を強張らせる暇もなく、体内に仕掛けられた“拷問器具”の容赦のない刺激に、鎖で支えられて辛うじて立てている体ががくがくと震える。
挿れられる前に見せられたバイブはどぎついピンク色をしていて、先端から茎にかけて硬い瘤がいくつも付き、根元に近い部分の親指ほどの膨らみには、柔らかいイソギンチャクのような突起がびっしりと生えた代物だった。
食い破られそうなほど激しく動くバイブが中で首を振る度、すっかり溶かされた悦の内壁は硬い瘤にがつがつと抉られ、前立腺にぴったりと張り付いた根元の膨らみに生える突起が、ぶるぶると震えて性感帯を捏ね回す。
「んぅううううッ!んッんン!ふぅううッ、んンンー!、…ん、ふっ…」
あまりに強い刺激に気絶も許されないまま、強制的に与えられていた快感がふっと前触れもなく止み、悦はぐったりと力の抜けた体を鎖に預けた。
枷に擦られて両手首と太ももには浅くない傷が刻まれていたが、蕩けた内壁を無機質な玩具に抉られ、掻き回される快感の余韻にどっぷりと漬かる体はそんな微かな痛みなど拾わない。
「ふー…っふ…ん、んぅ…ッ」
「そろそろ思い出したか?」
焦点など大分前に定まらなくなった虚ろな瞳で、ぼんやりと足元の濡れた石畳を映していた視界が無理矢理引き上げられ、先ほどまで少し離れた場所に置かれた椅子に座っていた筈の傑が軽く首を傾げる。
「ん、んンっ…うぅうう…っ!」
瑠璃の瞳から涙を零しながら、悦はもう何度目か知れない傑の言葉にこくこくと頷いた。苦痛には特別強く造られた体だったが、過ぎた快感による未知の苦しみに、悦の心はとうの昔に折れてしまっている。
…なのに。
「んっ、んんッ…んんぅーっ…!」
「あー、解ってる解ってる。お前の話もちゃんと聞いてやるよ」
「んうぅううッ…!」
泣きながらいやいやと首を振る悦を宥めるようにそう言いながら、傑は片手に持っていたローターのスイッチを入れた。
最弱まで威力を絞られ、微弱に震える卵型のそれがつつ、と上げさせられた右足の内腿を這い、がちがちに張った会陰に押し当てられる。
「ふっぅううッ、ぅんンっ…!」
「…ほら、聞いてやるから言ってみな」
尿道の棒が邪魔で先走りすら満足に流せない中での会陰責めは、それだけで眩暈がするほどの快感だったが、傑はそれを知った上でローターを押し当てたまま、悦の口枷の留め金を外した。
「ふぁッ…な、なまえ、はっ…」
「名前?誰のだよ」
「ッ…おれ、の…上官、のっ…なま、えは、ッ…」
「うん、名前は?」
「は、ひっ…ッせ、り…んくぅうッ!」
声だけは優しげに聞きながら、傑は手元のリモコンで悦の会陰に押し当てたローターの振動数を一気に引き上げる。
ビーン、と音がするほど激しく震えるローターに敏感になった会陰と、バイブに押し広げられた奥の皮膚と粘膜の境目とを撫でるように擦られ、イク直前の甘い痺れがずっと続くような愉悦に悦の虚ろな瞳から涙が溢れた。
「ひぁあぁああッ…せ、…しょ、さ…っあぁああーッっ…!」
「あァ?聞こえねぇな、誰だって?」
「あぁあッ!ひぅっぁ、いやぁあぁあっ!」
会陰から離れたローターがびしょぬれになった裏筋に押し当てられ、久しぶりにそこに与えられた強い刺激に上げさせられた足がびくんと跳ねる。外側からの刺激に尿道内の粘膜が強く棒を喰い締めてしまい、内と外から同時にくる強烈な快感に、悦は白い喉を反らして悲鳴に近い嬌声を上げた。
「早く言えって。思い出したんだろ?」
「はひ、ぃいぃ…ッ!」
ローターを持ったままの手に突き刺さる棒をゆっくりと上下させられ、棒の柔らかい突起に敏感になった狭い管の中の粘膜を擦られ、一番敏感な尿道口をごつごつと叩かれて、まともな言葉を奪われる。
―――あぁ、また…また、言わせてもらえない…っ
喋れない状態で散々嬲ってから思い出せたかと聞き、口枷を外して解放をちらつかせる癖に、傑は決して悦が秘密を吐いて楽になることを許してくれない。
意識が飛びそうな快感の中で必死に言葉を紡ごうとする悦を嘲笑うように、話が核心に迫る度に喋れなくなるほど刺激を強くして、そしてわざとらしく呆れたように笑いながら、こう言うのだ。
「バカだな。喋れば楽になれるのに」
「ッんぅ!…んンーッ…!」
外されていた枷を噛まされ、後頭部で留め金がパチンと嵌められる絶望的な音に、悦はぽろぽろと涙を零しながら傑を見つめて哀願するが、美しい拷問吏はにこりと笑って微弱に震えるローターを尿道の棒に押し当てた。
「ふぅッ!んぅうッううぅうッっ…んーッんぅ――ッっ!」
狭い尿道の中にみっちりと詰められた棒が細かく震え、長時間快感に晒されて敏感になった粘膜の奥の奥までを犯していく。甘い痺れが下半身を覆い尽くし、精液は出せないままに何度も何度も連続でイかされる狂いそうな快感に、悦は声にならない嬌声を上げながら身悶えた。
「キツいだろ?これ。もうとろっとろだもんな、お前の中」
「んンふっ…ふぅうっんぅううッ」
ローターの電源を落とし、代わりに奥から僅かにのぞいたバイブの台座をぐちゅぐちゅと揺さぶりながら、傑はもう過ぎた快感に暴れるだけの力も無くして、時折ひくんと体を震わせるだけになった悦の顔を上げさせる。
整った顔を涙と唾液で汚したその瑠璃色の瞳はすっかり快感に溺れ、最初にあった勝気な光などもう欠片も見えなかった。この様子ならきっと、口枷を外した瞬間に全てを吐くだろう。
「んぐぅうううぅッ、んー!んンーッっ…!」
深くまで差し込んだまま揺さぶるようにして瘤で溶けた内壁をかき混ぜ、半ばまで引き抜いたバイブをぐりぐりと回しながら捻じ込み、半分ほど引き抜いたカリで感度の上がった前立腺をごりりと抉ると、強すぎる快感に意識を飛ばしかけた悦の声が弱弱しく細まった。
「おっと、」
「ふぅうっ…んぅ、ふぅううッ…!」
出口も救いも見えない快感地獄の中、気絶は唯一悦がこの苦しみから逃れる術だったが、傑は悦が意識を失うギリギリで責め手を緩めてしまう。
甘く苦しい現実に引き戻され、切なげにか細い声を上げる悦の中にまたゆっくりとバイブが埋められていき、熟れきった粘膜を無機質なバイブで捏ねまわされる快感に細い脚ががくがくと震えた。
…ゆるして、たすけて、おねがい、なんでも、なんでもはなすから。
掠れた喉で弱々しく喘ぎながら、悦は涙に潤み熱に揺れる視界に映るおぼろげな傑の姿を見つめて、辛うじて残った意識の中で何度も懇願した。
この枷を外して「吐け」と、そう言ってくれればどんなことでも喋るのに。もうこんな苦しみには耐えられない。このままじゃ壊されてしまう。士官学校の講師も、上官も、誰もこんな拷問への耐え方は教えてくれなかった。重苦しい愉悦がどんどん溜めこまれて、あぁ、あぁっ…!
「…助けて欲しい?」
壊れることも、正気を保つことも許されず、ギリギリの綱渡りを強制されていた悦の意識に、その声はまるで毒のような甘さを持って滑り込んだ。
「大事な大事な国の秘密、全部俺にぶちまけて。3時間前からずっとここに溜めこんでる精液、ぜーんぶ出して」
「は、ふ…ッ」
「なぁ、“悦”。…楽になりたいだろ?」
吐息ごと吹き込まれ、そのまま脳まで染み渡るその毒は、今の悦にとってはあまりにも甘美だった。
どうしてこの男が、傑が、自分のリラでの本当の名前を知っているのかなど、もうどうでもよかった。パチンと音を立てて口枷を止める金具が外され、濡れた鉄の枷が足元に落ちる。
「お前の上官の名は?」
「は…せ、り…ざき、…しょうしょ、…ぇす…ッ」
「何のためにゴルティガに潜り込んだ。同盟の締結は陰謀か?」
「ッ…る、てぃが、が、…皇国と、うらでてをひい…て、…じょ、ほう…が…っ」
「…ゴルティガが皇国と?」
それまで射抜くように鋭い瞳で悦を見据えていた傑は、そこで訝しげに眉を潜めた。
ほんの一瞬、考えるように黙り込んだ傑は、―――やがてその紅唇を愉快そうに吊りあげると、その笑みの意味が分からず戸惑う悦の頬を撫でながら小首を傾げて見せる。
「そうか。それで?」
「、ふぇ…っ?」
「リラはその情報をどの程度信用してる。送り込まれた間諜はお前1人か?」
「ひとり、じゃ…っにんず、は…しら、ない…っほ、ほんとに…ッ」
「だろうな。もし本当なら“大変”じゃあ済まされない」
そう言いながら目を細める傑の声は明らかに嘲弄の響きを孕んでいて、その声音は悦の中に残ったまともな意識をどうしようもなく不安にさせた。今まで受けていた拷問とは別物の、もっと生理的な恐怖が悦を襲う。
なんだ。
誰なんだ、この男は。
「リラにその情報を最初に流したのは誰だ。お前のお仲間か?」
「…ごる、ティガの…元、きぞくが…」
「権威を剥ぎ取られ地に落とされた誇りの仇討ちとして、って名目だろ?…こんな状況じゃとても信じられないけど、一笑に付すには重すぎるからお前がここにいる。…そうだな?」
「…は、ぃ…」
何かが変だ。どこかが少しだけ、明らかに。
「…悦。お前の上官の意見は、リラの上層部の総意と一致するか?」
「ぐ、んぶは…っ信ずるに足りる、と…でも、陛下は、…王は、みとめて、なくて、…っだから、だから、…どうめいは、まだ、」
「まだ同盟関係は修復可能だと?…確かに、今ならまだ取り返しがつくな」
ふっと真顔になってそう呟き、そして傑はにこりと笑った。
伸ばされた手が悦の頭に置かれ、まるで子供を褒めるようにそこを撫でられる。
「よく話してくれた。…お返しに、俺も1つだけ“イイこと”教えてやるよ」
―――…お前にだけ、特別だ。
低く掠れた声で囁かれた声は腰を痺れさせるほど甘くて、ますます悦の嫌な予感を増長させる。既に悦が何かに気付きかけているのを解っているのか、傑はそんな悦の表情を愉しげに見下ろしながら、左手の手袋を外した。
びちゃり、と濡れた黒革が石畳に落ちる。悦が見ている目の前で、手袋の下から現れた白く細い指が左目に宛がわれ、そして、
「…ぇ、…?」
そこに、さっきまでのくすんだ翡翠は無かった。
代わりに綺麗な顔の左目の位置に収まっていたのは、暗くて深い、光の届かない海の底のような、
「あい、いろ…?」
呟くように言った悦の言葉に、傑が嗤った。
リラの国民は瑠璃色。ゴルティガは翡翠。今まで、皇国が周囲の小国を呑み込み侵略の手を広げ、リラとゴルティガの長年の争いの中に割り込むまで、この大陸で瞳の色はその2種類だけだった。
呑み込まれそうに深い、加減によっては黒にも見えるほどに濃い、この色は、
この藍色の瞳は、皇国の国民の。
「なんで、…それ、その色、…!」
「お前だって薬で色変えてたじゃねぇか。それとも、カラーレンズがそんなに珍しいか?」
くすくすとからかうように嗤いながら、傑は指先に乗っていた澄んだ翡翠色の小さなレンズを、再び己の左目に嵌めこんだ。
瞳の色を変える為のカラーレンズなど珍しくもなんともない。悦が驚いているのはそんなことにでは無くて、そんな、どうでもいいことにでは無くて、
「お、前…まさか、リラをッ…ひぁ゛っ!?」
「へぇ、まだ動くだけの頭があンのか。…ちょっと手加減し過ぎたかな」
鎖を鳴らして身を乗り出した悦の中からバイブを一気に引き抜きながら、傑は感心したようにそう言って、壁際のレバーを倒した。
錆びついた音を立てて倒れたレバーに、悦の両手と右足を吊りあげていた鎖のストッパーが外れ、鎖によって辛うじて立っていた悦の体が石畳に叩きつけられる。
「っぅ…あ、…ッ」
「ホントならここで射殺ってのが定石なんだけどな。同業のよしみだ、殺しも壊しもしないでやるよ」
石畳の上で呻く悦の体を軽く蹴って仰向けに転がし、傑はゴルティガ国軍の灰色の軍服から銀色のコックリングを取り出した。咄嗟に抵抗しようとした悦の太ももを軍靴で踏みつけて固定すると、根元まで詰められていた棒を半ばまで引き出し、悦のモノの根元にそれをカチリと嵌めてしまう。
「な、でっ…ちゃ、と、しゃべった、…のに…!」
「捕虜になった間諜が、人並みに殺して貰えるなんて本気で思ってたのか?」
…馬鹿だな。耳元でそう囁いて、傑は悦の尿道に突き刺さっていた棒をゆっくりと引き抜いた。勿論ただ抜くだけではなく、狭い粘膜の中の悦が特に感じる場所をたっぷりと擦り、突いて、痺れるほどにそこを嬲ってから。
「あ、ぁ、あぁっ…あぁあッ…!」
棒が抜かれた途端、敏感な粘膜を撫でながら溜まっていた先走りがどっと溢れだすが、代わりに根元をリングでがっちりと戒められては射精など出来ない。
「はぁあッ…や、…離せ、はなせッ…!」
「暴れんなって。ほら、御開帳ー」
「ッぅ、う…!」
力の入らない足でじたばたともがいてみても、傑はそんな抵抗など無いもののように悦の足を持ち上げ、両足をそれぞれ大きく開かせたまま天井から下がる鎖に繋げてしまった。
腰が半分ほど浮き上がった体制では満足にもがくことも出来ず、悔しさに唇を噛みながら抵抗を止めた悦を見下ろしながら、傑はどこからか注射器と緑色の小瓶を取り出す。
「な、なに…っ」
「肌の上から使う催淫剤…つっても解ンねぇか。簡単に言えば媚薬かな。それの原液」
コルク栓をポンと引き抜いて、傑は説明しながら瓶の中に入っている半透明の液体を注射器で吸い上げた。よく見ると注射器には針がついていない。
その、薬液で満たされた針のない注射器を一度パチンと弾き、傑は見せつけるようにゆっくりと、その先端を先ほどまで棒に蹂躙されていた悦の尿道につぷりと埋めた。
「ひっぅうう…!」
「皮膚からでもキツい薬を粘膜吸収だ、さすがに狂うかもな」
ゆっくりと注射器のピストンを押し込み、冷たい薬液を尿道に注ぎ込みながら、傑はそう言ってくすくすと愉しげに笑う。
傑の言葉に背筋をぞくぞくと恐怖に震わせながら、熱く熟れた粘膜に染み込む薬液の冷たさに悦は眉を顰め、
「ッ!?ぁ、あつ、はぁあッ…あつ、いぃ…ッ!」
直後に狭い管の中を襲った、まるで溶岩でも流し込まれたような熱さに、不自由な体をのけ反らせた。
焼けつくような熱さだと思ったものの正体は疼痛を伴う強烈な痒みで、そのことに気付いた途端、めちゃくちゃに掻き毟りたくなるような耐えがたい痒みが悦の頭の中を支配する。
「あぁ!あぁあッ!いやッいやぁああっ、!」
重い鎖と枷に繋がれた腕を滅茶苦茶に動かして暴れるが、枷は少し悦の腕に傷をつけるだけで外れない。鎖を鳴らしながら痒みから逃れようと暴れる悦を横目に、傑は空になった注射器を引き抜くと瓶を引き寄せ、再びいっぱいまで薬液を吸い上げた。
「ああぁあッやだ、とって、これとってぇッ!」
「はいはい。次はコッチですよー、っと」
「ひゃぁあぁあッ!?」
バイブに拡張されて緩んだ奥にぬぷりと半ばまで注射器を差し込み、傑は適当な言葉で悦を宥めながら注射器のピストンを一気に押し込む。一瞬の冷たさの後に灼熱が走り、全身の産毛が総毛立つような疼きとも痒みともつかないものに、見開かれた悦の瞳から涙が零れた。
「あぁ゛あああッやぁああぁあッっ!た、すけっ…あーッあ゛ぁーッっ!」
「ははッ、すげぇな。漏らしっぱなし」
「はひッぃいぃッ…!さ、さわ、な…でぇえッ!ぁ、あッ、あッ!」
頭の中が真っ白になって目の前がちかちかと明滅する。薬だけで十分致死量なのに、その上どぷどぷと濁った先走りを零す尿道口を指先で悪戯に撫で擦られて、中途半端に痒みを癒される快感と、そのせいでずっと強くなってぶり返す疼きに、悦はがくがくと痙攣しながら泣きじゃくった。
こんなの、こんなの本当におかしくなるッ…!あぁ、痒い、痒い、痒いッ…掻いて、中、誰か、助けて、あぁあッ、そんな、そこじゃなくてもっと、もっと…ッ!
「最初は指だけで吐きそうな顔してた癖に。もう立派に性感帯だな、この穴も」
「ひっぎぃいいッ!」
「こーやって浅いとこだけ引っ掻かれるの、たまんねぇだろ?バイブで散々掻き回してやったもんなぁ?」
喘ぐようにぱくぱくと口を開けてひくつく奥のひだを爪先で引っ掻きながら、傑は焦点が飛んだ悦の瞳を覗き込んでくつくつと笑う。
「は、がッ…、っと…く、までぇ…ッぁあぁああーッ…!」
「ん?」
「ッ、と…おく、までぇ…ぃれ、てぇ…っ!あぐぅうっッ」
「奥、ねぇ…」
過呼吸を起こしそうなほどに忙しない息の合間で、叫ぶように哀願する悦の髪を優しくかき上げてやりながら、傑は小指の第一関節ほどの深さまでを指先でぐちゅぐちゅとかき混ぜる手は止めないまま、考えるように呟いた。
奥まで誘い込もうと健気に絡みつく粘膜をくすぐり、マッサージでもするように摘まんでくにくにと弄びながら、ぽろぽろと零れる涙を拭う。
「ッ…ぉ、ねが…ぃ、ます…な、でも…す、からぁあ…ッ!」
「…何でも?」
とにかくこの生き地獄から助けて欲しくて、悦はもうろくに悲鳴も上げられなくなった喉で必死に哀願の言葉を紡ぐ。傑がゴルティガの将校のふりをした皇国の間諜だとか、士官学校で刷り込まれた祖国と王への忠誠だとか、もうそんなものはどうでもよかった。
耐えがたい痒みにただ悶えさせられ、全ての自由を奪われたまま玩具のように弄ばれる。この地獄から抜け出せるのなら、殺されてもいい。
いや、いっそ殺して貰った方が楽になれるのに。
「はッ、はひゅっぅ…!」
体がバラバラになってしまいそうな疼きと快感に、本当にどうにかなってしまいそうだった。
これ以上はとても耐えられない。そう思うのに悪魔の指先は巧みに動いて、悦が本当に狂ってしまうギリギリのラインのところで刺激を与え続ける。
「何でも、するんだな?」
「ッ!します、なんでもっ…ひぁあぁああッ…な、でも…だから、だからぁっ…!」
「そうか」
くく、と喉で押し殺した笑いを漏らして、傑は狭められた尿道からたらたらと白濁を零す悦の尿道口をとんとんと突いていた手を止めると、軍服の懐から銀色の懐中時計を取り出した。
ぱくん、と開かれたそれは細い鎖で悦の揺れる右足首に巻きつけられ、冷たい鉄の感触にひくりと足が震える。
「それじゃ、あと3時間。このままイイ子にしてて貰うか」
「さ、ん…ッ!?」
「何でもするんだろ?」
絶句する悦に軽く首を傾げて見せながら、傑は怖いほどに綺麗なその顔に冷笑を浮かべた。
「ひぃッ!ッだ、ゃだっ、も、…あ゛ぁあーッ!」
ぐっと熟れきった中に何かが押し当てられ、大した抵抗もなくつるりと入り込んできた細長い異物が、痒みに襲われ掻いて欲しくてたまらなかった場所を撫でながら入り込む。
緩く歪曲したそれはさっきまでのバイブとは違って細く、表面もつるつるとしていて、痒みや疼きを煽るだけ煽って少しも静めてくれなかった。ただ、絡みつく粘膜が奥へ誘い込もうと蠢く度に、丁度前立腺の真上にある先端が滑らかな表面でぐりぐりとそこをつつく。
「ああはぁああッ…!ひゃらぁあぁ…ッっ」
「お前のだーい好きな前立腺だけを責めてくれる“お友達”だ、しっかり咥えこんどけよ?」
そう言って笑う意地悪な傑の声も、今の悦にはもう聞こえていなかった。
鎖に自由を奪われた体が時々思い出したようにひくん、と跳ね、焦点を飛ばして虚ろになった瑠璃色はガラス玉のように暗い天井を映している。半開きになった唇からは掠れた喘ぎ声と、飲み下す余裕のない唾液が零れるばかりで、意味のある言葉は出てこない。
「…これで3時間持ったら奇跡だな」
既に崩壊しかかった悦を見てそう苦笑し、傑は右手の革手袋を足元に脱ぎ捨てると、軍服のポケットからまるでカードのように薄い、小型軽量の通信機を取り出して通信を繋げた。
「…鬼利か?俺だ。面白いネタが入った」
皇国の科学技術の粋を集めて造られた通信機を持ち代え、壁に背中を預けながら、傑は通信機の向こうの同士―――ゴルティガとリラを潰す為、虎視眈々とその機会を窺う皇国遠征軍指揮官の言葉に、その紅唇を吊り上げた。
「三文芝居の甲斐があったぜ。コードE-25、名義は何でもいい。全部隊に回せ」
軍服の懐から煙草とライターを取り出し、器用に片手で取り出したそれに火を点けて吸いつけながら、傑は石畳の上でか細く鳴いている捕虜をちらりと見下ろす。
「あぁ、それともう1つ。…地下の独房、1部屋開けとけ」
簡素なテーブルの上に乗った通信機が震え、電子音が持ち主を単調なリズムで呼ぶ。
片手にした鎖を面白くもなさそうに弄びながら、皇国国軍のものである濃緑の軍服に包まれた腕が通信機を持ち上げ、細く長い指がボタンを押しこんで通信を繋げた。
「……あぁ、解った」
通信機から流れてきた報告の概要だけを聞き取り、素っ気なく思えるほど淡々とした声で頷くと、切れた通信機をテーブルに投げだす。
「死んだってさ、お前の王様」
弄んでいた鎖を離し、テーブルに乗っていた電動式のマッサージ機を持ち上げてカチリとスイッチを入れながら、傑は何の感動も無く告げた。
ビィイィイ…とローターとは比べ物にならない振動で空気を震わせる電マの先端を、手すりのある簡素な椅子に座っている悦の胸元に押し当てながら、目隠しをされたその耳元に唇を寄せて、囁く。
「出来れば生け捕りにして、処刑をお前に見せてやりたかったんだけどな」
「っひぁ…ゃ、あぁ…ッ!」
びりびりと震える電マの先端が乳首に押し当てられ、ここ数日重点的に開発され神経がむき出しになったように敏感なそこを、容赦なく震わせる。
押しつぶすほど強く押し当てたり、皮膚だけをざわめかせるように撫でたりを繰り返しながら、傑は椅子の手すりにひっかけるようにして足を大きく開かされ、根元をコックリングに戒められて喘ぐ悦を見下ろして小さく笑った。
快感に震える足を椅子の手すりに乗せ、開いたままでいるように押さえているのは他でもない悦自身の手だった。その腕にも拘束具の類は1つとして無い。
いつでも傑の手から逃れられる状況にあるのに、悦は椅子の上で無抵抗に足を開いたまま、電マに尿道口を抉られる責め苦に甘い悲鳴を上げる。
「はぁひぃいいっ…!」
「…イキたいか?悦」
「っき、た…ぃきた、れすぅうう…ッ!」
耳元で囁かれる甘い声に、もう何日もまともな射精をさせて貰っていない悦はがくがくと頷いた。目隠しの布はぐっしょりと濡れていて、吸いきれなくなった涙が頬に伝うほどだ。
零れる涙を指先で拭いながら、その優しい仕草とは裏腹に傑はワントーン落ちた低い声を出して悦を責める。
「立場を弁えろよ。1人で好くなるつもりか?」
「っは、ぁ…あ、いっしょ、に…っッ」
「ん?」
「ぉれ、の…あな、で…ッごしゅ、ひゃま…と、っしょ…に、…きもちよく、させて…くらさ、ぁっ…!」
切れ切れに懇願しながら、膝を押さて足を開いていた悦の手がそろそろと内腿を這い、常時入れられているエネマグラのせいですっかり緩んだ入口を広げるように指先に力を込めた。
「とんだ淫乱だな。…おら、力抜け」
「はぁあッ…ひ、ぃあぁあぁあ…っ!」
軍服の前を寛げる衣擦れの音と、押し当てられた熱くてカタいモノに甘い息を吐いた途端、ずぶずぶと溶けた中を押し広げるようにして突き入れられた熱い楔に、悦は指先に触れた傑の軍服をきゅっと握りしめる。
質量に慣れる暇など与えられず、直後から本当にただの穴を扱うように好き勝手に動かれて、それでも苦痛など感じずに悦の体は快感だけを拾う。
「はッァ、ひ!ぁ、あっ、あぁ、あッ!」
「…そういえば、お前の軍」
されるがままに揺さぶられる悦の乳首を指先で弄びながら、傑は思い出したように言って悦の前髪を掴んで引き寄せた。
「ゴルティガ国軍は全面降伏への恩赦で、総帥の処刑で解放されるけど、」
「あぁッあ、ぅうんンんっ!」
「お前ンとこは最後まで抵抗したから、総帥以下将校全員が処刑されるらしいぜ。お前をこんなに我慢強い体にした先生も、みーんな。…よかったなぁ?」
「ひぁあッ!そ、そこッ…ゅる、しっあぁ…ッ!も、ィかせ、て…くらさ、ぃ…っ!」
「……」
額が触れ合うほどの距離で言っても、反応するどころか蕩け切った声で懇願を始めた悦に、傑は乱暴に掴んでいた髪から手を離すと軽く舌を打つ。
あの後。士官学校仕込みの根性のせいで3時間耐えきってしまった悦を、傑は本来自分が在籍している皇国軍へと連れて来た。
勿論捕虜や罪人としてではなく、ただの“玩具”として。
あれから1週間。任務成功の報酬の1つである長期休暇の暇つぶしとして、この独房に閉じ込めた悦で遊んでいるが、傑のやり方がよかったのか素質があったのか悦はすっかり従順になってしまい、傑に反抗することもほとんど無い。
この様子では壊れるのも時間の問題だ。少しやり過ぎたかと内心で思いながら、傑は深く突き上げるのと同時に悦の根元を戒めていたコックリングを外す。
「イけ、淫乱」
「あぁ゛あぁああッ…!」
「っ、ん…」
びくりと跳ねた悦のモノから数日ぶりの白濁が溢れ、絶頂に伴う激しい締めつけに傑も熱い欲を悦の中に吐きだした。
我慢し過ぎたせいか、びゅくりと1度吐きだしてからも悦の射精は止まらず、ぐったりと椅子に沈む腹の上にとろとろと勢いを無くした白濁が広がっていく。
「…締めつけだけは一級品だな」
「っぁ…あ、ぅ…ッ」
壊れたら薬漬けにでもして下の連中に回してやろうかと考えながら、自身を抜きかけた傑の軍服を、震える悦の手が弱々しく掴んだ。
「なんだよ」
「ぁ…あ、…」
「まだ足りないってか?淫乱なのも大概に、…ッ」
呆れながら傑が手を振り払おうとした瞬間、それまで縋るように端を掴んでいただけだった悦の手が強く軍服を握り締め、それをぐいっと引き寄せる。
いきなりのことに傑の藍色の瞳が軽く見開かれ、そしてその耳元で、耳朶をかすめるようにして寄せられた唇が、喘ぎ過ぎて掠れた声で囁いた。
「……くたばれ、外道」
掠れてはいるがさっきまでの弱々しさなど欠片も無い声は吐き捨てるようにそう言い、―――そして、ふっと傑の軍服を掴んでいた手から力が抜けた。
ゆっくりと顔を上げてみれば、ずれた目隠しから片方だけ覗いた瑠璃色は伏せられていて、意識を失って力の抜けた手がくたりと椅子の横から垂れている。
「…っ、…」
激しすぎる快感に気を失ったのか、悩ましげに眉を顰めたまま目を伏せる悦をしばらく見下ろしていた傑の喉が、耐えきれなかったように低い笑いを漏らした。
「…“外道”、ね」
くつくつと喉の奥で笑いを噛み殺しながら、傑は邪魔な目隠しを悦の目元から取り去ると、涙の痕が残る悦の頬を、まるで愛おしむような手つきで優しく撫でる。綺麗な瑠璃色を覆う薄い瞼の上、濡れたまつ毛に押し当てられた唇が、まるで睦言のように甘く掠れた声を紡いだ。
「ヤバいな、
…お前のこと、好き過ぎて殺しそうだ」
Fin.
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2周年記念パロディアンケート1位「軍隊」より、将校傑とその捕虜な悦。
長らくお待たせいたしました!そして長ったらしくてすみません!
いつもより3割増しで外道な傑と、いつもより3割増しで傑にめためたに苛められる悦を書くのがすっごい楽しかったです。
軍人っていいね!
※この話はフィクションであり、実際の戦争その他暴力的な行為を推奨するものではありません。
