白群の春



 風に乗った桜の花びらが降り積もる屋上は、正午を大分過ぎた時刻であるというのに、春の日和をたっぷりと含んで空気すらまどろんでいるように穏やかだった。

「…そろそろ桜も終わっちまうなァ」
「……」

 春先の太陽の光を一番近い場所で独占し、仄かに温められた屋上の床に両足を投げ出しながら、ブレザーの端に新入生であることを示す濃緑の校章バッチを着けた幽利は背中を預けたフェンス越しに校庭の桜の木を見る。
 ぼんやりとしたその声に、幽利の傍らでフェンスと床との段差に腰掛けて分厚い洋書を捲っていた鬼利はちらり、と双子の弟の視線の先を一瞥した。

「夏ンなったらドコで食べる?弁当。ココじゃァちょっと暑ィよなァ、やッぱ」
「まだ先だよ」
「うん」

 膝の上に乗った2つの弁当箱を包む布の端を指先で弄りながら、幽利は素っ気ない鬼利の言葉にもどこか嬉しそうに頷く。

 タンタンタンタン、

 風の音さえ聞こえそうな、校庭の喧騒さえ遠く霞む穏やかな空気が流れるそこへ、不意に階段を駆け上がる足音が響いた。
 足音は減速すること無く扉の向こうへと近づき、ノブの回った銀色の扉が吹き溜まった桜の花びらを押し退けるようにして開かれる。右襟の端にだけ濃緑の線が入ったシャツの前を第二ボタンまで開けた男子生徒―――鬼利と幽利の待ち人である悦の蜂蜜色の髪が、温い風にふわりと揺れた。

「ごめん、…遅くなった」
「お疲れサン」
「…パン、潰れるよ」

 息を切らしながら遅れたことを謝る悦を、鏡に映したように瓜二つの顔をした2人はそれぞれの表情で迎えた。本を閉じた鬼利の視線の先を辿った悦が、購買で買ったパンの袋を持つ手から慌てて力を抜く。

「うわ、もう15分過ぎてる…ごめん、ホント。先食ってて良かったのに」
「構わねェさ、どォせ俺等はあと2限で終わりさね」

 高校生が着けるには少し立派な腕の時計を見て申し訳なさそうに眉尻を下げる悦を笑って手招きながら、幽利は未だ緩く肩を上下させている悦の頬を伝う汗を見て軽く首を傾げた。

「やッぱ部活も高校ってなると忙しいのかィ?昼休みまで呼び出したァ」


 二人が悦と出会った中学校より前、小学校の頃から剣道をやっている悦は、地元で有名な私立校であるこの高校に剣道のスポーツ特待で入学している。八つもクラスがある中何の縁か幽利と同じクラスになったので、特進クラスの鬼利を交えた3人で一緒に昼食を食べる習慣が出来ていたのだが、今日は昼休み開始早々に悦が部活関連で体育館に呼び出され、2人はその悦の帰りを待っていたのだ。

「今年は経験者が多いから顧問が張り切ってンだよ。週末に新入りの腕試しの遠征するからその話だった」
「腕試し、ね…悦には必要無さそうだけど」

 幽利の足から持ち上げた弁当箱を本の代わりに膝に乗せながら、鬼利は幽利の前の床に胡坐をかいて座り、さっそくパンの袋を破っている悦を見て軽く目を細めた。悦の昼食が購買の品であるのはいつものことだが、常ならば放課後の部活に備えて幾つか買い込む筈が、今日はパン一つしか持っていない。

んー…確かにここでも年数は長い方だけど、中学レベルだしな」
「1年歳食っただけでそンな変わるもんかねェ?」
「練習のレベル、って事でしょ」
「あァ、そっか」
「そういうこと。半年ブランクある所為もあるだろーけど、やっぱしんどい」

 ぱく、とスクランブルエッグとハムを挟んだコッペパンに食い付きながら、悦は手の甲で額に薄く浮いた汗を拭った。既に新人戦での主力に上げられている剣道部員が階段を駆け上る程度で息を切らす筈も無いから、きっと集まりがあった体育館からここまで休むことなく全力で走って来たのだろう。

「…あ、ハンバーグ」

 暑そうにシャツの胸元をパタパタと上下させていた悦の瑠璃色の瞳が、幽利が開いた弁当箱の端に詰められた小さなハンバーグを見て意外そうに軽く見開かれた。そのまま自分へと向けられた視線に、鬼利は白飯を口に運びながら「偶にはね」と素っ気なく答える。

「鬼利は和食派かと思ってた。ホント何でも出来るな」
「切って混ぜて焼いただけだよ。包丁遣いなら悦の方が上手いと思うけど?」
「あァ、そういや凄かったよなァ、調理実習の時。皮剥きの…アレ、なんつッたっけか」
「ピーラー?」
「そォそォ。アレがねェからって全部包丁で綺麗に剥いちまッて。料理出来ンのは知ってたケド、あそこまでたァ思わなかった」
「皮剥きくらい慣れれば誰でも出来るって。最近料理してねぇから今の方が下手になってるし」

 真正面から褒められて照れているのだろう、困ったように眉を顰めながらふい、とそっぽを向いてしまった悦に、幽利は笑いながら箸で半分にしたハンバーグを弁当箱の蓋に乗せて悦の前に差し出した。

「食うかい?パンだけじゃァ味気ねェだろ」
「マジ?ありがと」
「…そう言えば、今日はそれだけ?」

 器用に野菜の煮物を箸で一口大に切りながら、鬼利は視線で悦の手の中のコッペパンを示した。視線につられたのか自分の手の中で半分ほどの大きさになったパンを見た悦が、一口には少し大きいハンバーグを口に放り込んだ指先をぺろりと舐めながら軽く頷く。

「遅かったから全然残って無かったんだよ。これがラスト」
「放課後まで持つの?」
「多分腹減るけど…しょうがねぇよ、食堂今閉まってるし。てかハンバーグ美味い。ごちそうさま」
「お粗末様」

 何気ない二人のやり取りに、横でその会話を聞いていた幽利は思わず残りのハンバーグを運ぶ手を止めて悦を見た。

「部活までそれだけじゃァ…力出ねェだろ」
「ん、今日は基礎練だからなんとかなる」
「基礎、つッたって今までとはレベルが…」
「大丈夫だって」

 まるで自分の事のように心配そうな顔で言う幽利に、悦は笑いながらひらりと手を振って見せるが、幽利は少しも納得していない表情でちら、と傍らの双子の兄を見る。

「……」
「……」


 鬼利は相変わらず伏し目がちに手元を見ていて、一瞬だって幽利の方に視線を向けることも、眼に見える何かしらのサインを送ることも無いのだが、悦はこれが二人にとっては意思疎通になっていることを知っていた。兄弟どころか親も居ない自分には二人の感覚は勿論、何を伝えあっているのかも解らないが、鬼利も幽利も無駄な隠しごとはしない性質だ。
 慣れない者なら不安になるのだろうが、既にこの二人の関係にも慣れている悦は特に何を思う事も無く、抜けるように青いフェンスの向こうの空に何気なく視線を向ける。

「悦、これ」
「へ?」

 幽利には平気だと強がってみたものの、こんなパン一個ではとてもじゃないが放課後まで持つわけが無い。六時間目から部活開始までの時間にコンビニに走るか、と流れる雲を見ながら考えていた悦は、不意に目の前に差し出された弁当箱に思わず素っ頓狂な声を上げた。

「これ、って」
「俺三時間目の合間に女の子からお菓子貰っちまって、あンま腹減ってねェんだ。残してもこの陽気じゃァ悪くなっちまうし、良かったら」
「…いやいやおかしいだろそれは」

 へらり、と笑いながらずいっと自分の弁当を差し出してくる幽利に、悦は思わず素で突っ込んだ。ケチのつけようがない人の良さから女子に人気のある幽利が、一体授業間の五分休みにどんな菓子を貰って食べたのかは知らないが、弁当箱の中身はほとんど丸ごと残っている。

 いくら帰宅部で授業が終われば帰るとはいえ、授業はあと二時間分残っているのだ。悦よりも少しだが背の高い幽利がこれで放課後まで持つわけが無い、と幽利の手を押し返そうとするが、幽利は引き下がらなかった。


「お前ほとんど食ってねーじゃん。いいって、先に買っとかなかった俺が悪い」
「いや、売り切れンのくれェ解ってるのに代わりに買いもしねェでボケっとしてた俺が悪ィ」
「弁当組が解んねぇの普通だし、それ言うなら頼まなかった俺が馬鹿だろ」
「まァまァ、いいからいいから。食う時間無くなっちまう」
「だからお前が食えって」
「俺ァ腹いっぱいだから食えねェ」
「嘘吐け!俺の所為でお前が腹減らす方が俺は嫌だ」
「……」


 真正面から橙色の瞳を見据えて本音を言うと、悦に弁当を差し出す手を止めた幽利が困ったような悲しいような顔で口を噤んだ。なんだかこっちが物凄く悪い事をしたような気になるが、この表情に騙されて「そこまで言うなら…」と弁当を受け取ってしまったらそれこそ幽利の思う壺だ。

「…俺ァ、ほら、鬼利に分けて貰うから!」
「お前が鬼利の弁当に手ぇつけるわけねーだろ。てか鬼利ほぼ食い終わってンじゃねぇか!」
「……」
「あ、」

 悦がびしりと指差した鬼利の弁当箱の中身は既に半分以上が空になっている。騒ぐ悦と幽利とは別次元に居るように黙々と箸を動かしていた鬼利が、それを見てしまったという顔をした幽利をちらりと一瞥して、やれやれと軽く首を横に振った。

「あの…ホラ、俺ァ放課後買い食いでもすりゃァいいけど、悦は部活だろ?腹減って集中切れて怪我でもしたらコトだし…」
「基礎練くらいで怪我なんかしねぇよ、ここの練習楽だから」
「さっき自分でしんどいって言ってたじゃねェか」
「っそ、れはだから普段の練習で…ん?」

 そう言えばそうだった、と慌てて自分の発言を取り繕おうとした悦は、幽利の視線が自分では無くその頭上を向けられていることに気づいて言葉を止めた。見れば鬼利も幽利と同じ方角を見上げている。


「なんか煩ぇと思ったら…」


 何事だろうと周囲に視線を走らせた悦の鼓膜を、双子のどちらのものでも無い声が揺らした。
 あまりにも聞き慣れたその声に瑠璃色の瞳を軽く見開いて振り返った悦を、呑まれそうに深い藍色が屋上の扉の上から見下ろして眩しそうに細まる。

「何騒いでンだよ、新入生?」

 笑みを含んだ少し低くて妙に甘い、こんな太陽の下には似合わない艶のある声。
 襟に臙脂色の校章バッチを着けたブレザーとその下のシャツを、この学校の細かい校則を十は無視して気崩した二年生の男子生徒―――三人と同じ中学出身で一年先輩に当たる世環傑は、驚く悦と幽利、そして無表情の鬼利を見てからかうように軽く首を傾げて見せた。

「…お前こそ、そんな所で何してんだよ。傑」
「お昼寝」

 憮然とした表情の悦に事も無げに答え、屋上へと上がる階段と扉の天井に当たるスペースに腹ばいに寝そべっていたらしい傑は、その場で胡坐をかきながら軽く腕を伸ばす。

「で?弁当の獲りあいでもしてンの?」
「俺がパン買うの忘れたからって、幽利が自分の弁当くれるって言って聞かねーんだよ」
「俺ァ腹一杯だから食ってくれって言ってンのに、悦が要らねェって言って聞かねェんだ」
「……うん?」
「…部活の呼び出しの所為でパン一つしか買えなかった悦に幽利が自分の弁当をほぼ丸ごと上げようとして、悦がそれを断ろうと騒いでたんだよ」
「あぁ、成る程」

 相反する悦と幽利の主張に首を傾げていた傑は、綺麗に食べ終わった弁当箱を元通りに包み直しながらの鬼利の説明を聞いて、ようやく納得したように頷いた。

「…ってことは、もう昼休みか」
「いつからそこに?」
「三時間目の頭」
「え、じゃァそれから今までずッとそこで?」
「うん」
「うん、じゃねーだろ…」
「中学の時より酷くなってンじゃねェか?そのサボり癖」

 中学の頃から、傑の生活態度は校内で煙草こそ吹かさないものの真面目の正反対であったが、それは三人より一年早く校則の厳しいこの高校に入学してからも全く改善されていないらしい。心底呆れた、という表情を隠しもしない後輩に、だが傑はその態度や言葉遣いを全く気にした風も無く、かもな、と笑った。

「なぁ悦、それタマゴサンド?」
「え?…あぁ、うん」

 不意に声を掛けられて、悦は思い出したように片手にしていたパンを見た。切れ目の入ったコッペパンにスクランブルエッグとハムを詰め込んだだけのそれは、とても傑が呼んだような横文字の名前が似合うような姿はしていないが、挟んでいるから一応サンドにはなるのだろう。

「それ好きなんだよ。まだあった?」
「いや、これがラスト」
「じゃあさ、俺のこれとそのパン、交換しねぇ?」

 これ、と言いながら、傑は自分の傍らに置いていた学校指定の鞄から包みを取り出して軽く揺らして見せた。黒い布に包まれた長方形のそれは、どう見ても弁当箱の形をしている。

「交換って…もう二口分くらいしかねぇけど」
「寝起きだし、バイト前に飯食うからそのくらいが丁度いいんだよ」


 確かに傑は朝食もよく抜いて、悦には美味しさの解らないブラックのコーヒー一杯で済ませる事も少なくない。そのことを知っているだけに信憑性のある言葉に、本当にいいものかと悩む悦を横目にしながら、傑は薄っぺらい鞄と弁当箱の包みを片手にひょいと扉の上から飛び降りた。

「お前もそれが好きだって言うんなら、無理にとは言わねーけど」
「いや、別にそこまで好きってわけじゃ…」
「じゃあ交渉成立」
「あっ」

 残り少ないパンと傑の顔を見比べながらの悦の言葉が終わらない内に、傑はさっさとその手からパンを取り上げると、その代わりに自分の弁当箱を悦の膝の上に置いた。思わず手を伸ばしかけた悦の手を逆に掴んで、その手首に巻かれた時計を見る。

「ほら、急げよ。あと十分」

 悦と幽利の間、丁度鬼利も入れて四人で円を描くような位置に腰を下ろしながらの傑の言葉に、悦と幽利は顔を見合わせ、同時に自分の膝に乗った弁当箱へと手を伸ばした。










「…ごちそうさま」
「ごちそォさまでした」

 食べ始めと同じくほぼ同時に箸を置いた二人の言葉に、鬼利と傑は分厚い洋書とフェンスの向こうの風景へと向けていた視線を、それぞれ幽利と悦に戻した。

「ギリギリ間に合ったな」
「四分なら上出来だよ。…右、ついてる」
「あ。…ありがと、鬼利」
「今日って木曜だよな?次国語だっけ」
「いや、科学じゃねェかな?午後の時間割変わってッから」
「ダル…しかも実験だから移動じゃねーか」
「そォいやそうだっけか」
「……」
「……」

 それぞれの弁当箱を包み直しながらのんびりと話す二人を横目に、傑と鬼利は互いをちらりと一瞥し、そして傑は小さく笑い、鬼利は軽く溜息を吐く。

「…その割には随分余裕だね、二人とも」
「へ?」
「だってまだチャイム鳴ってねーし」
「東棟の端っこだぜ、科学室」
「急いだ方がいいんじゃない?」

 英語がびっしりと並んだページを捲る鬼利の言葉が終わるより早く、それまで暢気に結び目を作っていた悦と幽利はがばっと立ち上がった。昼休みの終わりから五時間目の授業開始までには五分間の余裕があるが、今居るこの屋上は西棟。南棟を挟んだ東棟の、それも端の端にある科学室まではかなりの距離がある。

「悪ィ、先戻るわ。…あ、弁当美味かった。ありがと、傑」
「はいよ」
「ごめん鬼利、俺も先に…」
「いいから早く行かないと遅刻するよ」

 傑に綺麗に空になった弁当箱を返し、自分と鬼利の分との弁当箱を持って、悦と幽利は慌ただしく屋上の扉を潜った。ゆっくりと閉まった扉越しにも聞こえる階段を勢いよく駆け下りて行く二人分の足音に、手の中でパンの袋を結びながら傑がくすくすと笑う。

「元気いーな、あいつ等」
「そこまで急ぐ程の授業じゃないと思うけどね」
「俺やお前とは違ぇんだよ」
「一緒にしないでくれる?」
「似たようなモンだろ」

 上目遣いだがその角度からの可愛げなど全く無い鬼利の視線を事も無げに受け止めて、傑は軽く首を竦めて見せた。大人でも竦む鬼利の眼光を真正面から何でもないような顔で易々と受け止めて見せるのは、今も昔もこの男だけだ。
 さぁ、と桜の花びらを散らしながら吹いた風に軽く目を細めた鬼利が、びっしりと英語が並んだ膝の上の洋書を閉じるのに合わせたように、傑の背後のスピーカーから昼休みの終わりを告げるチャイムが響く。

「…そう言えば、頼まれてたノート。出来たよ」
「サンキュ。放課後取りに行くわ」

 分厚い洋書を片手に立ち上がる鬼利を見上げながら、チャイムを聞いても立ち上がる気配すら無い傑はポケットから取り出した銀色の鍵をふわり、と放った。
 空中で掴んだそれは随分と古い型をしていたが、その仕様の割に昨日作ったもののように新しく、何のタグもついていない。

「保健室。二日後の五時から二時間半」

 説明を求めるように視線を向けた鬼利に、傑は後ろ手に手を突いて頭上に広がる真っ青な空を見上げながら謡うような調子で告げた。それは時間と場所のみの極めて簡素な説明だったが、鬼利にとってはそれで十分だったらしく、受け取った鍵をポケットに入れながら薄らと微笑む。

「さすがに抜け目ないね」
「そりゃどうも」
「この後は、帰るの?」
「んー…もうひと眠りしてから決める」
「そう」

 今の時間からもうひと眠りということは、この不真面目な二年生はこの後の五時間目と六時間目も丸々サボるつもりで居るのに違いないが、鬼利はそれについては何も言う事無くあっさりと頷いて扉のノブに手をかけた。

「…あー…」

 振り返ることなく屋上から出て行った鬼利の足音が階段を下っていくのを聞きながら、傑はどこか薄らと霞んだ春の青空を見上げて、眩しそうにその藍色の瞳を細める。

「…ねむ」


 見回りの教師が立ち寄れば言い逃れなど出来そうにも無い扉の目の前で、空を振り仰ぐようにしながら再び目を閉じた不真面目な生徒の脇を、吹き黙った桜の花びらが淡い音を立てて床の上を滑っていく。

 笑うような、嗜めるような音を立てて傑の傍らを通り過ぎた薄汚れた桃色の破片は、一際強く吹いた生ぬるい風に吹き飛ばされ、踊るようにフェンスに切り取られた青い空へと落ちて行った。



 Fin.



メイン4人高校生パロディ。
タイトルの「白群」は色の名前で、春の空の色をイメージしてみました。
オフライン本用に書いていましたが、ページ数の関係で入らなかったのでこちらでup。
高校生という肩書きがついていたのなんて、もう何年前か…


※現在サイト内にある学生パロディは全て、この作品の設定で書いております。

Anniversary